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120.平和な日常

 私は、トゥーリンの定食屋で働いていた。

 いつも通り、この店のお昼時は戦場だ。お客さんがとても多く、私もてんやわんやしていた。

 それでも、なんとかお昼時を乗り切った後、私達は常連さんと話し合っていた。それも、いつも通りの光景である。


「それじゃあ、お嬢ちゃんは暫定ナルキアス商会の夫人という訳か」

「えっと……そうなるんですかね?」

「ええ……まあ、その解釈は間違っていないと思います」


 今日集まった常連さんは、私にとってもなじみ深い人達ばかりだ。スライグさんにセレリアさん、ドルギアさんにマルギアスさん、それにケルディス様まで来ている。


「まさか、帰って来て早々そんなことになっているとは俺も思っていなかったな……」

「ええ、私も驚いたわ。でも、無事に終わって、二人もそういう関係になって、良いこと尽くしということよね?」

「まあ、そうだな」


 ナーゼスさんとトゥーリンさんは、戻って来た私を温かく迎えてくれた。

 この店で再び働けるようになったことは、私にとっても幸いなことだ。やっと平和が取り戻せた。改めて、私はそれを実感する。


「なんだか恥ずかしいですね……」

「そうですね……」


 私とスライグさんは目を合わせて、笑い合った。

 皆に祝ってもらえるのは、とても嬉しいことである。ただ、やはり恥ずかしさがあるのだ。

 しかし、秘密にするのも駄目だと思った。こういうことは、きちんと報告しておいた方が、何かといいと思ったのである。


「おお、早速二人の世界に入っているぜ」

「ドルギア、茶化すものではありませんよ」

「おっさん、デリカシーというものがないのかよ?」

「ドルギアさん、もう少し考えて発言した方がいいですよ?」

「なんで、総叩きなんだ……?」


 私達の様子をからかったドルギアさんは、その場にいる皆から批判されていた。

 だが、彼の言っていることはわかる。確かに、今私達は二人の世界に入っていたかもしれない。

 皆の前で、そんなことをするべきではないだろう。失礼な気がするし、何より恥ずかしいからだ。


「ふふ、皆さん騒がしいですね……」

「ええ、そうですね……」


 そんなことを考えながらも、私は早速スライグさんと目を合わせていた。

 何故だろうか。自然と彼の方に、目線がいってしまうのだ。目が合うということは、彼もそうなのだろう。

 こうして、私達は平和な日常を送れるようになった。聖女をやめるまでも、やめてからも色々とあったが、このような日常を取り戻せて本当に良かった。心からそう思う。

 私は、これからもこの国で生きていく。スライグさんとともに、平和な日々を送っていくのだ。

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