表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/120

118.一番の罰

 私は、研究所の方に戻ろうとしていた。

 すると、その道中に見知った人達を見つける。ルミーネや騎士団の面々だ。

 ルミーネは、少し気まずそうな表情をしている。それは、そうだろう。彼女にとって、現状は四面楚歌も同然だ。


「ルミーネ……」

「ふふ、聖女様。これで、グーゼス様は全て倒れました。後は、私を煮るなり焼くなり好きにしてもらって構いませんよ」


 私に対して、ルミーネは弱々しい声でそう言っていた。

 彼女の事情は、なんとなくわかっている。

 恐らく、ルミーネは自分を消滅させようとして失敗したのだ。その結果、あの研究所の中で倒れていたのだろう。

 そんな彼女が、何を望んでいるか。それも、なんとなくわかっている。きっと、彼女は私に頼むのだろう。自分を殺してくれと。


「ルミーネ、私はあなたを殺さないよ」

「……そうですよね。あなたなら、そういうと思っていましたよ。お優しいあなたに、私を殺せるはずがありませんよね」

「そうじゃない。あなたには、生きていてもらわなければならないんだよ」

「……どうして?」


 私は、ルミーネを殺すつもりはない。だが、それは優しいからではない。厳しいからこそ、私は彼女を殺さないのだ。

 そもそも、彼女を消し去る力が私にあるかは定かではない。しかし、仮にあったとしても実効することはないのだ。


「あなたは、数々の罪を犯した。その罪を償わなければならない」

「罪を償う……それなら、猶更私を消してくれませんか?」

「そんなことをしても、あなたは満足するだけ……罰にならない」

「なるほど、そういうことですか……」


 私の言葉に対して、ルミーネは笑っていた。

 それは、悲しい笑みだ。それだけ、彼女は消え去りたいのだろう。

 ならば、猶更彼女の命を奪う訳にはいかない。生きて、彼女にはしっかりと罪を償ってもらわなければならないだろう。


「ドルギアさん、それでいいですよね?」

「ああ、もちろんだ。このお嬢ちゃんの事情はわかったからな……そもそも、お嬢ちゃんがしたことを総合しても、別に死罪とはいえないはずだしな……おっと、よく考えてみれば、俺より年上なのか」

「ドルギアさん、失礼ですよ?」

「そ、そうか……」


 ドルギアさんも、それで納得してくれた。

 この場における最高責任者である彼がそう言うなら大丈夫だ。


「ルミーネ、あなたは生きて罪を償って……そして、見ていて欲しい。私のことを……」

「……それは、どういう意味ですか?」

「わかっているんでしょう?」

「……」


 私は、ルミーネにゆっくりと語りかけた。

 その願いが、彼女の心に届いてくれることを信じながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ