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116.有効な作戦

「ルミーネ、協力してくれるんだよね?」

「ええ、そのつもりですよ。もう全部ばれてしまいましたからね……」

「それなら、私が囮になってグーゼス様を引き付けるから、彼を自爆させられる?」

「構いませんよ」


 私は、自らを囮にする作戦を思いついた。

 グーゼス様の狙いは、私である。私を追いかけて来るという習性は、今まで何度も体験したものだ。

 つまり、私が逃げれば、彼らは追いかけて来る。そうやって人気のない所まで、彼を引き付けて、爆発させれば、被害は出ないだろう。


「ですが、危険ですよ。あんなものを一人で引き付けるなんて……」

「わかっている。でも、私以外そんなことはできないから」

「……私が裏切るとか、そういうことは考えないのですか?」

「あなたは、私を身を挺して庇ってくれた。あれは、信用するのに充分なことだったよ」

「自己犠牲の精神、それに人を信用するその目……血は争えないということでしょうか」

「え?」


 ルミーネは、私に向かって笑みを浮かべていた。

 その笑みは、何かを懐かしむようなものだ。どうして、そんな表情を浮かべているのか、私にはわからない。

 もしかしたら、彼女は悠久の時の中で、私の祖先とでも出会っていたのだろうか。いや、それとももっと深い繋がりが、私と彼女との間にあるのだろうか。

 色々と考えたが、私はその思考を切り捨てた。今大切なのは、目の前のことを解決することだ。


「皆さん! 今までの会話は聞いていましたよね? 私が、グーゼス様を引き付けます!」

「聞いていたのと納得しているかというのは、話が別なのだけれどね……」

「だが、それがこの場において最も有効な手であるというのも、また事実だ」

「お嬢ちゃん! 大丈夫なんだろうな?」

「ええ、問題ありません」


 私の呼びかけに、エルーシャさん達は口々に答えてくれた。

 私に危険が及ぶことを皆心配しているのだろう。だが、このままではグーゼス様を抑えきれないことも、皆わかっているのだ。だから、私の作戦に乗ってくれるのだろう。


「それでは、行きます!」

「全員、こいつらから離れろ!」


 ドルギアさんの怒号に合わせて、騎士達はグーゼス様から離れていった。

 そんな彼らに目もくれず、グーゼス様はこちらに目を向ける。やはり、その狙いは私のようだ。

 それを確認してから、私は走り出す。まずは、彼らを人気のない場所まで連れて行くことが先決だ。


「まずは、研究所から出て行こうかな……」


 とりあえず、この研究所からは出た方がいいだろう。ここで自爆されたら、皆生き埋めになる可能性がある。それは、避けなければならない。

 幸いにも、ここは無人島だ。人気のない場所は、いくらでもある。そう思いながら、私は走るのだった。

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