112.彼女の意図
「……ルミーネ、一つ聞いてもいい?」
「あら? なんですか? 別に聞いても構いませんけど、答えるかどうかは別問題ですよ?」
「あなたは、人の命を奪う気はないの?」
「……どういうことでしょうか?」
私の質問に、ルミーネは眉をひそめた。
それは、質問の意図が理解できていない。という感じではない。
彼女は、少し驚いたような表情をしているのだ。それは、私の質問がわかっている故の表情だろう。
「……やっぱり、そういうことなの?」
「……何を言っているのでしょうか? 私には、理解できませんね」
「いいえ、あなたは理解している。だから、そんな表情をしているんじゃないの?」
「……」
ルミーネは、黙ってしまった。それは、私の質問が図星だったからだろう。
やはり、彼女は意図を持って命を奪うことを避けているようだ。
そこには、何かしらの理由があるだろう。彼女がただ残虐非道なだけであるならば、それを避けるはずはない。
「どういうことなの? あなたの目的は、一体何?」
「何度も言いますけど、それを私が答えるはずがないでしょう?」
「……」
ルミーネの返答に、私は考える。彼女の目的、それは一体なんなのだろうか。
今、この段階になって、私は新たな情報を得ている。私達が来るまでに、彼女の身には何かがあった。そして、命を奪うことを避けている。
この二つの情報から、彼女の目的を導き出したい。それはきっと、この場において何よりも重要なことだ。
「さて、無駄話は終わりにしましょうか……そろそろ、忌々しいあなたを消し去らなければなりません」
「……え?」
「あら? どうかしましたか?」
そこで、私はあることに気づいた。
遠くの方から、音が聞こえてきたのだ。
それは、いつか聞いたような音である。そうこの足音は、以前私を追ってきた彼が響かせていたものだ。
「……まさか」
その直後、ルミーネは自らの後方に目を向けた。
同時に、私もその方向を見てみると、部屋の戸を突き破り中に入って来るグーゼス様達が目に入る。
「ルルメア! 見つけたぞ!」
「ここで、復讐を果たしてやる!」
グーゼス様達の視線は、全て私の方を向いていた。
私に復讐を果たす。それが、彼らの原動力なのだろう。
そんな彼らに対して、騎士達は構えた。ただ、グーゼス様の数が多い。いくら騎士達でも、あれは抑え込めないだろう。
「……どうして、彼らがここに?」
そんな騒動の中、私はルミーネが驚いているのを見つけた。
どうやら、これは彼女にとっても予想外の出来事だったようだ。




