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111/120

111.避けていること

「どうやら、何かあったようだね……あなた自身の身に」

「……」

「答えないということは、図星ということかな?」

「忌々しい聖女様ですね……まったく」


 私の言葉に対して、ルミーネはその表情を歪めた。

 そういう反応をするということは、やはり私の予測はあっているようだ。

 恐らく、周りの惨状は彼女の血なのだろう。辺りにグーゼス様の姿は見えないし、そう考える方が自然だ。

 魔法によって、その傷を回復して休んでいた。彼女が眠っていたのは、そういうことなのではないだろうか。


「騎士の皆さん、少しどいてもらえませんか?」

「そんな要求を呑むと思っているんですか?」

「……あなた達が束になった所で、私には敵いませんよ。無駄な血を流したくなかったら、聖女様に任せるべきだと思いますけど」

「例え敵わなくても、あなたを弱らせるくらいはできます」

「捨て身の覚悟ですか? 素晴らしいですね……ですが、それは無駄死にというのですよ?」


 ルミーネは、マルギアスさんとそのようなやり取りを交わした。

 彼女は、私と戦うことを望んでいるらしい。それは、こちらも望む所だ。私も、最初から彼女と決着をつけるつもりでここに来た。

 彼女から来てくれるなら、ありがたい話だ。マルギアスさんはああ言っているが、できることなら私もこれ以上犠牲は出したくない。


「マルギアスさん、騎士の皆さん、どうか下がっていてください。彼女との決着は私がつけます」

「ルルメアさん……」

「犠牲はできれば出したくありません。彼女が私と戦いたいというなら、それでいいでしょう」

「し、しかし……」

「私は勝ちますから、安心してください」


 私は、マルギアスさんに堂々と宣言した。

 当然のことながら、負けるつもりはない。私は彼女に打ち勝ち、戦いを終わらせるつもりだ。

 ただ、同時に私は気になっていた。彼女に一体何があったのかということが。


「聖女様、そう言ってもらえると助かります。私も、無駄に命を散らしたくはありませんからね……」

「……」


 ルミーネの言葉が、私は少し引っかかった。

 無駄に命を散らす必要はない。その言葉で、とあることを思い出したのである。

 そういえば、彼女は命を奪っていないのだ。辻斬り事件の時も、騎士達の戦いの時も、負傷者は出たが死者は出ていない。それが、少し気になったのである。

 もしかしたら、彼女は命を奪うことだけは避けているのだろうか。そんな考えが、私の中に過ってきた。

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