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103/120

103.詮索するなら(モブ視点)

「まあ、私のことを調べるのは、勝手ですけど……その代償は大きいですよ?」

「だ、代償……」

「ふふふ、中々いい顔をしますね……」


 ルミーネは、スライグにゆっくりと近づいてくる。

 そんな彼女に対して、彼は後退する。しかし、スライグの背には先程まで入っていた店があるため、すぐに下がれなくなってしまう。


「さて、まずは……」

「なっ……!」


 直後に、ルミーネの指先から光が放たれた。その光線は、スライグの頬を掠めながら、その後方の店の壁に穴を開ける。


「どうですか? すごいでしょう?」

「くっ……」


 スライグの頬から、ゆっくりと血が流れていく。それと同時に汗も流れてきた。命の危機を感じたからだ。

 しかし、彼にはどうすることもできなかった。非力な彼には、目の前の強大な魔法使いに対抗する力はないのだ。


「ふふふ、怖いですか?」

「はあ、はあ……」


 ルミーネは、スライグの目と鼻の先まで迫って来ていた。彼女は、ゆっくりと壁に手をつく。


「その程度の覚悟で、よく私を調べようなんて思いましたね?」

「……くっ」

「これに懲りたら、もう二度と私のことを詮索しないでくださいね……次は、容赦なんてしませんよ?」

「……え?」


 ルミーネの言葉の直後、スライグは自らの目の前の光景が変わっていくのを感じていた。

 ルミーネの姿は透けて、周りに人が戻って来ている。その変化に、スライグは悟った。今まで自分が見ていた景色は、真のものではなかったのだということを。


「ここは……」


 スライグは、改めて周囲の様子を確認した。

 昼間の大通りらしく、辺りは人に溢れている。後ろの店に開いてはずの穴もない。

 スライグは、幻影のようなものを見せられていたようだ。


「よく考えてみれば、これだけの人をどこかにやるなんて、できないか……」


 恐らく、ルミーネはこの人ごみに紛れて、スライグに魔法をかけたのだろう。彼女自身は、既にこの場所にいない可能性は高い。いつまでも留まっておく必要はないので、既に去っているはずだ。


「いや、仮にこの場に留まっていたとしても……僕には結局彼女に対抗できる手段はない」


 スライグは、改めて自分の非力さを実感していた。

 彼には、ルミーネに対抗する手段はない。護衛はいるが、彼らを無闇に危険に晒すことはできない。

 結局の所、自分が非力なのが駄目なのだ。それを実感しながら、スライグは天を仰ぐのだった。

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