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101/120

101.それぞれの役割

「エルーシャ、俺は一度あちらの国に戻ろうと思う」

「戻る? どうして?」

「暴動の中で、ルミーネが何をしたかを知っている者を探すのだ。その者達から話を聞けば、グーゼス殿下がどうなったのか、わかるかもしれない」

「なるほど……それなら、そっちはあなたに任せるわ」


 そこで、レイオスさんとエルーシャさんはそんな会話を交わした。

 グーゼス様が暴動の中でどうなったのか、それを改めて知るのは確かに重要なことだろう。


「ケルディス殿下、それで構いませんね?」

「ええ、よろしくお願いします。もしよろしければ、こちらの兵も派遣しましょうか?」

「そうですね……では、よろしくお願いします」

「わかりました」


 ケルディス様も、レイオスさんの案には賛成のようだ。

 とりあえず、そちらは彼に任せておけば問題ないだろう。レイオスさんは優秀な人である。情報は掴んでくれるはずだ。


「エルーシャ、お前はルルメアの方を任せる」

「ええ、それはもちろん任せて。ケルディス様、私もここに滞在しても構わないのでしょうか?」

「ええ、問題ありませんよ」


 エルーシャさんの言葉に、ケルディス様は頷いた。

 彼女がこちらに留まってくれるというのは、ありがたいことだ。レイオスさんと同じく、彼女も優秀な人である。心強い味方が、一人増えたといえるだろう。


「……そういえば、一つ聞いておきたかったのですが」

「はい、なんですか?」

「グーゼス様は、辻斬りとして活動していた訳ですよね……その時の被害者の数というのを、私は正確に把握していないのですが、教えてもらってもいいですか?」

「辻斬りの被害ですか? 被害にあったのは、五人です」

「その人達は、どれくらいの怪我を? 重傷だとか、軽傷だとか……」

「怪我としては、軽傷ですね」


 そこで、私は気になっていることを聞いておいた。

 グーゼス様の辻斬りの被害者。その正確な数と被害を私はあまり知らなかったのである。

 どうやら、グーゼス様の辻斬りは死者を出してはいないようだ。それは、少し気になる点である。


「……どうかしたんですか?」

「いえ……グーゼス様とルミーネは、結局命は奪っていないのだなと思いまして……」

「……ああ、確かにそれはそうですね」

「不幸中の幸い……とでもいうべきでしょうか?」

「そうかもしれませんね……」


 辻斬りの被害者にも、騎士達にも死者は出ていない。それは確かに、不幸中の幸いといえることかもしれない。

 だが、本当にそれだけなのだろうか。私は、そんなことを思うのだった。

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