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3話

思いつきで書いてます


株木樹里 14歳。


中学二年生。



それが今の私だ。


幼少期の私は、子供の本分である「よく食べ、よく遊び、よく学ぶ」ということを徹底した結果、まだ母には敵わないが、同年代の女子よりは一回りくらい大きくたくましい少女へと成長を遂げた。


昆虫だった前世と違って、幼少期から自由に動き回れることは素晴らしかった。


自分の筋肉質で日焼けした腕や、他の女子より少しばかり成長の早い胸をペタペタ触りながらそんなことをしみじみと考えていたら、後ろから声がかかった。


「な〜にしてるの?樹里ちゃん!」


「ああ、優子か。いや。人間っていいなということをしみじみ噛み締めていたところだよ。」


「日本むかし話?」




ひょっこりと現れたのは優子。



相変わらず歌と睡眠を愛する彼女は、それはもう美しい娘へと成長した。


ぱっちりと開いた吸い込まれるような瞳に、私とは対照的な白く透き通る肌。

それに歌を愛する彼女だけに、鈴の音を鳴らしたような綺麗な声。


クラスの男子からは「歌う眠り姫」という異名を貰い受けたそうな。


そのまんまじゃないか・・・。




「おっす樹里!」


そしてもう1人、綾だ。

小学校の頃から視力が落ち始めた彼女は眼鏡を着用している。


「いや〜今日の弘光ひろみつもヤバかったね!鼻血出そうだったよ。」


弘光というのは理科の先生である戸田弘光先生のことである。


「綾ちゃん・・・先生を名前で呼び捨てって・・・。」


ドン引きした様子で彼女に冷めた視線を向ける優子。

大丈夫。私も同じ気持ちだ。


「本人の前では読んでないからセーフセーフ!!」


彼女は崇拝する男性こそ変わったものの、芯の部分はブレないようだ。




私は未だにこの2人とつるんでいる。

前世では他の生き物とほとんど交流しなかった私にできた初めての友達だ。

大事にしなければ。



そうこうしているうちに始業のチャイムが鳴る。


次は確か・・・数学の授業だ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「えーっとじゃあ今日は6月の10日だから出席番号10番!株木!解いてみろ。」


「はい。3x−4yです。」


「よし!ちゃんと復習してるな。お前らも株木みたいに今日やったところはしっかりと振り返れよー。受験で泣きたくなければな!」



数学の先生から出された問題を難なくクリアする。


人間の脳を得てから、新しい知識を得るというのが楽しくて仕方がなかった。


勉学に関してはクラスで一番の自信がある。



「すごいなぁ〜樹里ちゃん。」


歌う眠り姫、優子が目をしぱしぱさせながら小声で話しかける。


優子よ。頰に教科書の跡がついてるぞ。



「優子。また寝てたのか。」


「えへへ〜。5時間目は仕方ないよ〜。お腹も膨れて程よく体を動かした後なんだから眠くなるのは自然の摂理なわけでね〜?」


眠そうに目をこすりながら答える優子。


「というわけでいつものお願いしようかなぁ〜。」


「はぁ、しょうがないなぁ。」


5時間目に眠くなるのが自然の摂理か。



よかろう。大自然の力を思い知らせてやる。



私は人差し指を親指で押さえつけ、ギリギリと力を入れると、そのままの状態で手を優子の額の前に持っていく。


ベチンッ!!


「あうっ!」


私の太くしなやかな指から繰り出される強力無比なデコピンが優子の額を射抜いた。


「うぅ・・・ありがとー!目が覚めたよ!」


眉間をさすりながらニコニコと礼を言う優子。ノリノリでやっててなんだが大丈夫なんだろうかこれ。


「痛くないのか?」


「痛くなきゃ意味ないよー。」


彼女はおでこを赤く腫らしたまま5時間目の数学の授業を受けた。



「眠り姫には被虐趣味がある」という噂が流れ、一部の男子を大歓喜させたのはまた別のお話。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






放課後


夕暮れに染まる教室の中、私は部活動で賑わうグラウンドを眺めていた。



100メートル走のタイムを競い合う陸上部員。


激しくもみ合いボールを追いかけるサッカー部員。


ひたすら走り込む野球部位。




元カブトムシの女としてのさがだろうか。


男同士が激しく競い合う姿を見ると何だか心が昂ぶる(腐ってないよ!)。



「まぁ別に私を巡って争っているわけではないんだがなぁ。」



誰もいない教室で1人呟く。


前世で見たオス同士の決闘は、今になって思うとそれは見事なものであった。


当時の私にはその良し悪しを見定める価値観がなかったので特に何も感じなかったが。


ああ、この学校には私を昂らせる強い男はいないものか・・・。



そんな世紀末の女帝みたいなことを考えていたその時、


パァン!


教室のドアが大きな音とともに開かれた。




「樹里ちゃん!探したよ!!」



入ってきたのは1人の男子生徒だった。


逆立った黒い髪と凛々しい切れ目。

そしてなかなかに引き締まったいい身体つきをしている。


「おお!君は・・・前・・・前川くん!久しぶりだなぁ!!」


「惜しい!惜しいよ樹里ちゃん!前村だ!!」




肩で息をしながら答える彼は前村くん。


幼稚園時代に私に告白して来たのだが、私の出した「同級生すべてに相撲で勝つ」という条件を達成できずに散っていった男子である。


小学校は別々になってしまったのと、中学ではこれまで接触がなかったのでかなり久々に話した。


当時はナヨナヨして頼りなかった印象だった。


だが今の彼は、引き締まっていながらも全身しなやかで逞しい筋肉に覆われている。


闘う男の身体だ。



「樹里ちゃん!あの時の約束覚えてる?」


「約束・・・?はて、なんだったかな。」


目を爛々と輝かせて問う彼に対して、とぼけた答えを返す私。


本当は覚えているが、この純粋そうな目を見ると少し意地悪をしてみたくなった。



「同い年の男全員に相撲で勝ったら付き合ってくれるって話しただろ!?忘れちゃった?」


「ああ、思い出した思い出した。だいぶ前にしたなぁ。そんな約束。で、それがどうしたんだ前村くん。」


身振り手振りでで当時のことを思い出すよう促す前村くん。

なんだか楽しいやつだなこの男は。


「勝ったよ!この学校の男子全員に!!見ず知らずの相手に相撲してくれって言うたびにちょっとおかしいんじゃないかみたいな目で見られたけど、なんとか耐え忍んで勝ったよ!」


「ほほう・・・。あのもやしみたいだった前村くんがどうりで。」


今の前村くんはアスリート顔負けの肉体を手に入れている。


「中学一緒になってすぐ声をかけようとしたけど我慢したんだ!!あの時の約束を果たしてから会おうと思って!」


「それはそれは、殊勝なことだな。それで?」


身体だけではなく、心まで強く成長した前村くんに軽く感動しながら続きを促す。


男女間の営みを前に言葉を交わすことなど、前世では考えられなかった。


この前村くんとの駆け引きも私にとってはたまらなく楽しい。



ニマニマしながら焦らし続ける私にしびれを切らし、とうとう前村くんが核心に触れた。


彼は一度大きく呼吸をすると、思い切りよく一息で言い放った。




「僕と付き合ってください!!」





顔を真っ赤にし、こちらに深く頭を下げる前村くん。


それを見た私は笑みを一層深くすると、立ち上がった。




「ありがとう前村くん。君の気持ちはとても嬉しい。」



私は彼を見下ろしながらそう答える。



(あれ?この流れ、ダメなパターンじゃないか!?)


私の放った「告白を断る時のテンプレ文」のようなセリフを聞いて青ざめる前川くん。


だが違う。私が言いたいことはおそらく彼も予想していない。





「前村くん。じゃあ最後に私と勝負しようか。私に勝ったら君と付き合うし子供だって産んでやろう。」





前川は驚愕ののち、ひどく赤面した。


思いつきで書きました

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