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副業恋愛  作者: サリー
2/9

過労死疑惑と自分

この物語は、フィクションでございます。

ドジっこ発言からの多少暗い話しになります。

続きをどうぞ。


My name is dojiko.

周りには見向きもせずに急いで自分の席に戻って、座り机に突っ伏した。

「千賀〜、あれはドンマイとしか言えない....。」

席にもどるやいなや、夢子に言われる。きっとあのドジっ子宣言が放送されたのだろう。

緊急事態ということとで、会議室にあった大型テレビが各グループ席に移動されているからね....。


「うん、31歳になったら全国に向けて自らドジっ子宣言するとか、小学生の頃の私が知ったら未来に絶望するレベルです。」

テレビの占いで最下位だったのは、少なからず合っていたようだ。


「まぁ、あのシーンはうちの広報から録画では使用しないようにテレビ局に忠告がいくと思うから、

繰り返し利用されることは無いと思うよ。そう思おう。それに関東ローカルだけが千賀を追ってたみたいだから大丈夫でしょう」

「だといいけど、一応マスクと謎の伊達メガネつけておいて良かったわ......」


気を取り直して....、直せないけど、過労死事件のことについて夢子に尋ねる。

「過労死疑惑って、どこの部署の誰のことなの?」

夢子が首をひねりながら、答える。

「経理の宮川さんだって」

「えっ、あのいつも笑顔で対応してくれていた、宮川さん?」

過労とか言う前に、宮川さんが死んでしまったことにショックを受けた。

そんなに仲がいいわけでは無かったが、経理のことがわからないときは良く質問していた人だ。

自分の身近な人が死ぬといのは、誰でもショックだろう。家族ならなおさら。


「午後から会社に奥様がいらっしゃるらしいよ」

どこから入った情報かわからないが、夢子が教えてくれる。

奥様、旦那が亡くなったばっかりなのに....辛いだろう。会社なんて敵地に乗り込むようなものじゃない。

「そんなに意識していなかったけど、この会社って意外とブラック企業だったんだね。

まぁ残業も多少はあるけど、月100時間がデフォルトみたいな会社ではないと思ってた」

「それが、ほんとかどうかわからないけど、宮川さんの残業を会社も把握できていなかったみたい。

最近は企業の残業問題でうちも時間外労働が厳しく制限してたのは千賀も知っているよね。

一応、PC起動やネットワークダウンシステムで残業させないような管理していたんだけど、

家に仕事を持ち帰ってやっていたみたい。同僚には、異様に仕事のスピードが早いって言われて、頼られてたみたいよ」


人からのお願いは頑張って引き受けちゃう、自己犠牲がすぎる方だったのだろう....。

わからないでもないな、一度できると思われると色々なひとからのプレッシャーで断ることもできないし、

もう自分ではコントロールできないくらいどうしようもなかったのだろう。

自分が泥沼に足を踏み入れていることは、中々気がつかない。

泥沼に完全に埋まって、息ができなくなり死ぬ寸前で自分が沼にいたことに気がつくのだろう。


「宮川さんは子供いたの?」

「うーん、多分いないと思うよ。奥様だけが今日来社するみたいだから」


「みんなー、集まってくれ」

上司がグループ全員に声をかける。何か会社から一時命令がくだるのだろう。

上司の席に全員が集まる。

「もう、知っているやつもいると思うが、経理の宮川さんに対して過労死の疑いがでている。

今日、宮川さんの奥様と警察が来社して、聞き取り調査を行うらしい。みんなもできるだけ協力してくれ。

あと、君たちも時間外労働をしている場合は必ず、俺に相談してくれ。誰かが仕事を持ち帰っていたら

それも報告してくれ。

あと、会社の玄関、SNS等でマスコミがコンタクトをとってくるかもしれないが、今のところは対応しないように。わかってるよな、池山!」


「はい、わかっています。」

わかっておりますとも!ドジっ子発言は、わたくしの不徳のいたすところでござりました。

誠に申し訳ござりませぬ..ぬぬ顔で上司を見る。

「では、各自十分に気を付けるように、解散」


「あれはね、しょうがない、がんばれ千賀。あと10年は言われるけど頑張れ」

夢子のフォローになっていないフォローで少し救われる。

「今日は、飲みにでも行ってドジっ子事件忘れたかったけど、早く帰って家にいるしかないようだね」

「そうね。また落ち着いたら一緒に飲みに行こう」


事件が起きたとしても、日常の業務は止まらないから、忙しいのは変わらない。

結局、早く帰るはずが、30分程度残業してしまった…。


「夢子、私はそろそろ帰るけど、どうする?」

自分が、また失態をおかしそうで、しっかりものの夢子となるべく外に出たい私は夢子を誘う。


「うーん、そうね。後10分くらいで一段落着きそうだから、待っててくれる?」

「うん、じゃぁトイレに行ってくるね!」

トイレの廊下を歩く、今日はみんな早く帰ったみたいで社内はシーンとしている。


トイレに向かう途中、総務会議室から宮川さんの奥さんが警察(?)と伴って出てくるのが見えた。

後ろにはうちの社長と人事部長、法務部長が続く。

私は何となく隠れて、様子をうかがった。


会議室の入り口で社長が立ち止まる。

「この度は、誠に申し訳ありませんでした。私どもの管理不十分、また監督不行き届きにて、持病を悪化させることになってしまい…」

社長が宮川さん奥さんに対して、謝罪の気持ちを告げる。


「いえ、良いのです。彼が会社でどんな働き方をして、皆様からどう思われていたのかよく分かりました。

彼が死んでしまったのは夢ではなく、現実...なのですね」

そう言って、宮川さんの奥さんがハンカチで目元をぬぐった。

宮川さんって持病持ちだったんだ....


会議室の扉は閉められ、社長と奥様たちが全員でエレベーターフロアへ向かう。

彼らが見えなくなってから、私も隠れていた壁を離れてトイレへ向かう。


奥さんの気持ちを思うとやるせない。自分の旦那が自分が知らない時間に辛い思いをして、

死んでしまって、話し合うこともできない。

どこにも怒りや悲しみをぶつけることができないし、どうやっても、彼は帰ってこない。

拷問だな。


隠れて様子を伺っていたので怪しまれないように急いで、夢子が待つフロアへ戻る。

「あ、お帰り、遅かったじゃん」

夢子が迎えてくれる。さっきの出来事を話そうと思ったけど、

隠れてみた話だし、個人情報だからと自重した。


「うん、どう夢子?帰れそう?」

「うん、帰ろうか。どうしよか、帰りも裏口からでようか?」

「裏口から出ようよ、あとマスクあるよー。顔だしNGよ!もう私ある意味有名人だし」

そう言って、私は今日の昼間に購入した使い捨てマスクを夢子に渡す。

「ありがとう」


私もマスクと、伊達眼鏡を装着して裏口へ向かう。

裏口まで行く途中にある2階の窓から裏口の様子を確認する。

「マスコミさん、だいぶ減ったね。」

適当な感想を私がいう。

「まぁ、ワイドショーニュースも終わってる時間だし、別のニュースもあるからそんなに人員避けないんじゃない?」

夢子が階段を下りながらマスコミ分析してくれる。

「そうか。」


二人とも無言で裏口まで向かう。今日の出来事を思い出してそれぞれ考え事をしていたと思う。

「うんじゃ、開けるよ」


私は裏口のドアに手をかけて開く。

と同時に残っているマスコミが話かけてくる。

「会社としての対応はどうなると思いますか?」


それはまだわからない。マスコミの方が私たちより、私たちの会社に詳しのではないだろうか。

私たちは、無視を貫き通して駅前まで早足で向かう。

二人の会話はどこで誰に聞かれているかわからないから、無口で。


「じゃぁ、また明日ね」

「明日」

私は、ホームに到着している電車に駆け込んだ。

電車の中で、携帯電話をチェックする。

生きてきてこれまで貰ったことのない量のメッセージと着信が貯まっていた。

とりあえず、家族と友達と思っている人たちに返信したけど、

ここから情報が漏れても怖いので当たり障りのない話でごまかした。

みんな、生放送で見ていなかったのか、私のドジっ子発言事件のことには言及していない。

あぁ良かった。


携帯を片手に、つり革にもたれながら電車の窓に映る自分を見た。

ふぅぃー、朝の気持ちとは別の意味で気が滅入る。

自分のことだけを考えてれば良い歳ではなくなったのだなと再認識して、再び携帯に目を落とした。


『ついにあの有名出版でも、過労死事件か!?』という記事が目に入る。

あること無いこと書かれている記事は、読む気にもなれず携帯はバックにしまった。

明日は、会社行くの大変なのかぁ、考えるだけで億劫になり、

本日何回目かのため息を小さくついた。

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