エピローグ
ギルドのドアを開けると、そこにはクサカが立っていた。
「先輩!遅いですよ。もう、みんな例の場所にいっちゃいましたよ。」
相変わらず生意気な口を利く。新人のくせに。
「俺は怪我人だからいいんだよ。別に皆と一緒にやる必要もねーし…。」
「…先輩。そんなんだからコミュ障治らないんですよ。おまけに重度のシスコンらしいじゃないですか。ギルドマスターに聞きましたけど、なんでも使役する雪の精霊は、ことごとくお姉さんに似ていたとか…。マジ、ドン引きです。」
「あのオヤジ、そんなことまでお前に喋ってるのか?!ふざけんなよ…。」
「だれがオヤジだ。」
部屋の奥からギルドマスターがぼさぼさ頭を掻きながら、のっそりと出てきた。
「あ…。」
場の空気が、軽く凍り付く。
「…まあ白豹を討伐した我がギルドの出世株だ。今日だけは見逃してやるさ。…それよりお前ら、そろそろ山頂へ向かえ。雪送り、始めるぞ。」
…雪送りとは、冬の間に使役した雪の精霊を空に返す、魔導士たちの儀式の事だ。
丁度今日は、雲一つない晴天。
雪送りにぴったりの日だ。
クサカと2人急いで山頂に向かえば、雪の精霊たちがもうすでに、1人、2人と空に浮き上がっている所だった。
いつもはうるさいクサカも自分の精霊を手放すときは、神妙な顔をして唇を震わせている。
俺は大きく息を吸ってから、手のひらを舞う9人のユキ達にそっと息を吹きかけた。
ふわり
ふわり
ふわり
たんぽぽの綿毛のように、穏やかに。
ユキ達が空へ登っていく。
それを祝福するように穏やかな風が通り過ぎ、桜の花びらが空を彩る。
―春がやってきたのだ。




