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111 ショッピングセンター襲撃、黒きファラオの呪いクマ その2

 モノリスアヤメは全館照明が落ち、非常灯だけがついている。

 治癒クマーこと、翔一は排気ダクトを通って、三階の雑貨店に身を潜めた。

「ここで作戦会議クマ」

 情報を集めたチビクマたちが集まってくる。

「よし、色々とわかったぞ」

 うなずく黒い子熊のぬいぐるみ。

 宿精、ダーク翔一も適当な椅子に座る。

「一階がスーパーや食品関係。二階がファッションと雑貨、三階はレストランと映画館とお母ちゃんのいる多目的会場……小さなお店はそこかしこにある」

 治癒クマーはモールの案内が書かれたパンフを見る。

 チビクマの一匹が持ってきたのだ。

「どうでもいいけど、なんでこんなところで作戦立てるんだ」

 子熊のぬいぐるみが椅子の上で短い脚を胡坐にする。

「僕たちの作戦会議を聞いて、一般の人を不安にさせたくないクマ。悪い情報もあるだろうから」

「まあ、そういう考えもあるか」

「ところで、状況を教えてほしいクマ」

「そうだな、まず敵は入り口を全部ロックした。シャッター降ろしてる。シャッターついているのは一階だけだがな」

「ハッキングされたのかな……」

「兵隊は百人はいるぞ。黒覆面にあのバラマキ銃だ。あれが当たれば人は簡単に死ぬんだろう?」

「うん」

 彼がいっているのはSMGやアサルトライフルのことである。

「入口ごとに五人は兵士がいる。そして、巡回している兵士。一階から三階までつながる吹き抜けがあるだろう、そこに、超能力者っぽい奴らがいた。たぶん、五人」

「多いね」

「警備兵はほとんど降伏している。というか、銃を持ってないのは何も抵抗していない。銃を持っている奴らが二階のジムで頑張っているが苦しいな。閉じ込められている。三階はお前の結界のおかげで監視しているだけだ」

 どうやら、翔一が出た後、二度ほど電撃が発せられて敵が倒れている。それと、グレネードが投げ返されたのも大きかったのか、投擲攻撃もない。

 このような理由で敵は積極的に出ていないようだ。

「人質はどうだろう」

「一階の各扉の前に十人程集められている。救援が突撃してきたら、人質が邪魔で戦えない」

「それでも、人質はもっといるよね。ショッピングモール全体で千人は客がいたと思う」

「一階にいたのは逃げたんじゃないか。かなりの数の客が駐車場にいるぞ」

「ということは、二階と三階の客ばかりなんだね。今いるのは」

「当然、扉の前に配置しても客は多すぎる。こことここ、ここもだ。この辺りに人質が集められて座っている」

 モフ指で示す。

 人質の集団は中央吹き抜けの周り、主に二階に配置されているようだ。

 三百人程度はいる。

「人質は敵の超能力者の女が精神的に何かやっておとなしくさせられているようだ」

「何者だろう。でも、逆に騒ぎ立ててテロリストを怒らせるよりはよかったかも」

「かもな」

 腕を組むぬいぐるみ。

「僕たちが集めた情報はハイテク装備で警察もいずれ把握すると思うよ。でも、細かなことまではわからない」

「ふーん、そんなものなんだな。科学というのも魔法に近い」

「そうだ、僕たちも科学装備があったよ」

 翔一は未来のデータパッドを取り出す。

「ああ、あいつか」

 画面を触ると、AIが出る。

「翔一さんこんにちわ」

「リリーちゃん、今困ったことになっているんだ」

「ええ、わかります。いつも、困った時しか呼んでくれないから」

「嫌味いわれているぞ」

「あ、駄熊ね」

「なんでその名前を知っている」

「浮いてる人形がいっていたわ」

「とりあえず、その名前は忘れろ」

「いいから、今テロリストに閉じ込められているんだ。助けてほしいクマ。状況を説明しようか?」

「大丈夫、電波を拾って、状況は大体つかめたわ」

 未来のサイボーグがくれたスマホのようなものである。翔一のスマホよりはるかに性能が高い。

「外と連絡取れる?」

「やってみるけど……中継器はないわね。私の発信も届かないわ」

「敵はどうなんだろう、ここまで大がかりなら外と連絡とってるかも」

「ええ、電波拾ったわ。でも暗号化されていて、すぐには解読できない」

「どう、解除できる?」

「うーん、私はハッキングに特化してないから、それ相応のアプリがいるわね」

「ネットにつながっていないから難しいか。どちらにしても、敵の通信機を奪取するか他の手を考えないと」

「おい、外で動きがあるぞ」

 スタッフルームの小さな窓から外を見ていたダーク翔一が手招きする。

 見ると、駐車場が見えた。

 物々しい車両が次々と駆けつけているようだ。

「警察と自衛隊が駆けつけているね。あ、ヒーローたちもいる」

「パトカーの無線をハッキングして、繋げることは可能だけど?」

 一瞬考える。

「うーん、それはやめておこう。僕たちがここにいることがテロリストにばれるかも。敵は用意周到だから、ハッカーの支援があるよ」

 この辺りはヒーローだった時に受けたレクチャーを思い出したのだ。

「その可能性はあるわ」

「どうする。単独で動き回るのか」

「そうする他ないかも。外の味方と上手に連携取るとか難しいと思うクマ」

「監視装置は乗っ取られているだろうな」

「カメラを消すと敵に警戒されるから、なるべくつぶさずに行くよ。どうしても見つかりそうなのは、精霊で止める」

「それがいいだろうな」

「あ、妨害電波を出し始めたわ」

 リリーが画面の中でキョロキョロする。

「じゃあ、無線の類や遠隔操作は難しくなるね」

「警察がきたから誰かが連絡を取るのを恐れたのね」

「でも、敵も連携が取りにくくなったよ。たぶん」

 ひもを通してタッチパネルを首にかける。

「ウフフ。クマさんの目になってあげる」

 AIは翔一とお供できて嬉しそうだ。

「そうだ。機械精霊を大量召還して敵の武器無効化したらどうだ。一気にけりが付くぞ」

 ダーク翔一が腕を組む。

「広いし、敵の数も多いからかなりの大魔術になるクマ」

「やる価値はあるだろう」

「嫌な予感がするクマ。占ってみる」

「また、それか」

 スタッフルームの机の上で、ざらざらと宝石をぶちまけた。

「うーん、大魔術的なのはやめたほうがいいと思うクマ。敵にかなりの術者がいるのかも」

「なら、どうするよ。例えば、警察もきたことだし、何もせずにぬたーと待つとか」

「ダメそうな案だけど、一応占ってみるね」

 ざらっと占う。

「……最悪クマ。魔が天空を支配する」

「なら、ちょっとずつ人質を出すとか。どこかの出口を解放して」

 同じく占う。

「うん、そんなに悪くないクマ」

「どういうことなんだ、敵は立てこもりが目的なわけないよな。綻びがあっても平気ってのはどうなんだ」

「人質を使って政府に要求クマとか」

「……渡辺という人が政府に要求したみたいね。掴まっている囚人の開放をしろってリストを送り付けた。ニュースで速報していたの」

 リリーはジャマ―が入る前に、そのような情報を得ていたようだ。

「どこか違和感あるクマ。政府に要求するのなら、一人も逃がしたくないだろう。数が多い方がインパクトあるのに」

「一階の一般人も多すぎるからわざと逃がしたような。必要分いたらよかったのか」

 ダーク翔一の指摘。

「うーん、どういうこと」

「ここで思案していても敵の目的はわからんだろ」

「そうだね。二階も心配クマ。見に行くよ」


 治癒クマーは廊下をそっと覗く。

 数人の兵士が歩いて行くのが見えた。

「今のうちクマ」

 天井や壁を伝いながら、するすると二階に向かう。監視カメラを確認しながら、邪魔になりそうなものには、小さな闇精霊をカメラの真前に置く。

 子熊が通り過ぎたら、精霊はすぐに引っ込めるのだ。

「一瞬画面が暗くなっただけで、故障もハッキングもしない。たぶん、気が付かれないと思うクマ」

「考えたな。俺ほどではないが、さすがだな。よし、その作業は俺に任せろ」

 精霊界に戻った宿精がうなずく。

「よろしく、クマ」


 二階のジムエリアは偶然拠点になった場所だった。

 入り口の通路が狭く、出入りは一か所。そして、あとは非常口しかない。

 通行人にじろじろ見られないような工夫なのだろう。

 通路に入れば、ガラス張りで中が見える、開放的な場所で運動したいが、無関係な人の視線は避けたいという矛盾した利用客の気持ちが、ここの防御を強くしたといえる。

 通路入り口に頑丈な金属性のエクササイズ機器が積まれ、小口径の銃弾で破壊できるものではない。

 数人の警備兵が頑張っており、守りは固いが、巡回の兵士が立てこもっているだけなので、風前の灯火ともいえた。

 二十人くらいのテロ兵士が遮蔽物を作って囲んでいる。

 尚、ガラス張りの空間には誰もおらず、避難した客たちは狭い控室などに閉じこもっている。

 治癒クマーはエリアを仕切るガラス扉の陰からそっと覗く。

 ガチャ、ガチャ。

 全身金属の装甲を張り付けたような男がゆっくり歩いてくる。

 皮膚もメタリックで、人種何もわからないが、日本人ではないようだ。

(関西で暴れている機械人間?)

 機械人間は人体にありえない金属部品が融着している。そして、それが普通に機能するのだ。

 科学でもサイバーでもなく純粋なオカルトだった。

 そして、彼らはどこかからやってきた異世界の人間である。

 非人間的な思考を持ち、どのような残虐行為も平気。過去、色々と交渉が試されたが、答えは暴力だけだった。今は全面戦争となっている。

 そして、その機械人間が目の前にいる。

 彼が特に異常なのは頭部で、頭蓋が半分ない。脳が半分ない状態で歩いているのだ。そこも薄い金属でおおわれている。

「降伏せよ。グレイに従え」

 感情なくしゃべる。

(グレイと同盟している機械人間? 悪は大同団結しているクマ)

 警備兵は銃を向けているが、無言。

「降伏せねば、どうなるか教えてやるぞ」

 メキョっと腹が割れて、丸い筒が出てくる。

 筒には細い銃口がいくつも見える。どうやらミニガンのような武器だ。

「なんだあれ」

 黒いぬいぐるみが出てくる

「機械人間クマ」

「どうするんだ」

「助ける」

 ミニガンが回転を始める。

 精霊界から『念焔剣』を鞘ごと取り出して身構えた。

「白虎一剣、迅雷!」

 銃弾が発射される直前、怪物の前を影が横切る。

 一閃するオーラの炎。

 ガン!

 ミニガンが切り飛ばされ、床に転がる。

 発射できない銃弾がだらだらとまき散らされた。

 男は何が起きたのかわからないというような顔で、キョロキョロする。

「闇精霊!」

 同時にエリアが闇に包まれる。

 男は即座に視界をサーモに切り替える。が、遅すぎた。

「白虎逆流剣!」

 ズバ!

 男の胸をオーラの炎が焼き斬り、メタリックな内臓がまき散らされる。

 両手から銃口が飛び出して火を噴き、床を打つ。

 次の瞬間には首が飛び、天井に当たって跳ね返って床に転がった。

 そして、闇精霊は消える。

 翔一はすぐに元の位置に戻って、姿を隠した。

「何があった!」「メタリックガーディアンがやられたぞ」「誰にやられた、見えなかったぞ」「何か声が聞こえた」「祭主様に報告しろ」

「引くぞ!」

 黒覆面たちは小声で話し合うと、速やかに撤退した。




2021/10/6 微修正

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