突撃ラブハート
八丈島に辿り着いたボク達は、上空から敵の威容を改めて再確認していた。
島の中心にある火山に陣取る工場型バリアント、コンジュラー。
その大きさは聞いていたし、遠くから映像で確認もした。
だが、実際に見るとなると印象がだいぶ変わってくる。
「本当、下手なビルより大きいな……」
「やっちゃん、それはうちに効く」
そんな馬鹿を言っている間に通信が入る。
作戦を主導するエトワール側によってプランの再確認が行われる。
『正直言って、メイデンの火力をもってしても完全な破壊は厳しいものがあるわ。 まず機能を停止させる必要があるの』
『ハイ恵先生! どうすりゃ機能止まんの? コンセント抜くとか?』
『……どうしましょう千聖、灯里がいつになく鋭いわ』
『合ってんなら説明続けりゃいいんじゃねーの?』
息の合ったやりとりに苦笑している間に、共有されたデータがバイザーに映し出される。
つまりはコンジュラーにエネルギーを供給しているパイプのような器官を破壊する事で生産機能を止め、出てこなくなった所で新たなエネルギー供給器官を形成する前に火力を集中させ、使い物にならなくさせれば良いのだ。
昔はこれの完全破壊に核弾頭を用いた国すらあったが、今ではメイデンの手によってこういった無力化を施してから重機での解体が出来る。
これも今と昔の技術力の差を如実に表していた。
「了解しました。 それじゃあまずは……」
「お掃除、ですね」
更地と化した地上から睨みを利かせている大型砲撃種バリアント、ウィザード。
コンジュラーのすぐ側で群がるバリアントにバリアを貼る大型指揮種バリアント、ビショップ。
それらを取り囲むようにして陣取る数々の小型・中型バリアントの群れ。
『ビショップはこっちに任せて、ウィザードをお願い!』
「了解です!」
正直言ってビショップには嫌な思い出があるので助かるし、こちらと違ってエトワール組なら火力も十分だ。
島中心部に向かうエトワール組から注意を逸らすため、先んじてウィザードをはじめとする砲撃種の射程へと飛び込んで行く。
「ひえぇぇぇ! めっちゃ撃ってきますよ!?」
「そりゃ、道中でバリアント蹴散らしながら進んできたからね……迎撃準備くらい済んでるよ」
「理屈じゃないのアタシ達!」
ふざけた会話の応酬をしながらも恐れずに──美樹と玲花はそうも行かないらしいが──降下していく。
シールドがあるから当たっても死にはしないし、そもそも即席の防空網らしく穴も多いからそうそう当たるものではないのだが。
何度目かのメイガスの高速弾を避けたタイミングでウィザードの対空砲火が止む、抵抗を諦めたのではない。
「ウィザードの砲口よく見て! 大きいの来るよ!」
蛇のように節の分かれた太く長い身体が発光し、それを以って砲身とすれば、放たれるのは極太のエネルギー光。
いわゆるごんぶとレーザーと呼ばれるそれは大気を裂き、目標であったボクが回避した事で天へと昇っていく。
「…………いやいやいやいや!? アレに飛び込んでくの!?」
「? そうだよ?」
「死ぬ! 死にます! お祖父様、この若さで貴方の元に向かう玲花をお許しください……」
「当たらなきゃ大丈夫だって」
実際、シールドが切れている状態で当たればタダでは済まないしシールドで防いでも消耗は激しいだろう。
だが、こうして予備動作が見えている内は怖くもない。
というよりウィザードの本領は長射程を活かした不意打ちにあるのだが。
「他のバリアントと足並みを揃えたのかな……?」
されなかった事を訝しんでも仕方がない。
さらに前へ出て、後ろの2人へ砲撃が行かないように引き付けていく。
「ホントにやっちゃんしか狙わない……」
「あの時解析した通りとはいえ、どうしてそうなるのかわからないんですよね……」
そういえばそんな話もあったか。
言われてみれば気味の悪いくらいにこちらしか狙わないが、かえって好都合。
角度を変え2人が砲火に曝されないようにしながら地上に陣取る砲撃種の群れを射程圏に収める。
「それじゃ、ボクはこのあたりで数を減らしてから突入するから!」
「わかりました、その隙にって事ですね!」
宣言通り、砲撃の雨あられを避けながらもウォーロックから射撃し、その数を減らしていく。
実際の負担は変わらないはずだが、その光景に気が楽になったらしく美樹と玲花が反対側から攻め入っていった。
「フェブラリーの底力、見せてやろうよ!」
「任されました!」
トリスメギストスによる電撃で痺れ、ガトリングの連射で堕とされる。
まるで切り取られるかのようにその数を減らされていくというのに、まるで美樹や玲花を向こうともしない。
その執着っぷりに恐ろしさを覚えながらも、ウィザードのレーザーを大きく避ければ砲口目掛けライフルによる反撃を加えていく。
「まるで洗脳でもされてるみたいな……」
言いかけて、それが意味のない事だと断じる、
ウォーロックの数も減ってきて、メイガスも美樹達によって片手で数えられるほどになった。
これを頃合いとして突撃していく。
「エネルギー残量、大丈夫!?」
「切れないようにはする!」
高速弾とすれ違うように地上へと降り立てば、まずその勢いでメイガスの頭上にブレードを突き立てる。
首や胴体を降ろし、こちらに狙いをつけようとするのを確認すればまた上昇していき、狙いを外していく。
そうしている隙を見逃す美樹達ではない。
こちらを追い上を向こうとした横っ面を撃ち抜かれ続けメイガスが爆散する。
それと共にウィザードにトリスメギストスの情報ユニットが打ち込まれ、データが3人に共有される。
ウィザードはその不可解な状態に恐れを抱いたかのように、射角の合わない対空砲火を撒き散らす。
「うわぁッ!?」
「STGやってんじゃないんですよ!」
当たりはしないのだが、がむしゃらに連射されるそれは近寄らせない事に関しては効果があったらしい。
とはいえ長引いても厄介だ、想定外ではあるがカバーに回る。
ウィザードの懐に潜り込むようにして節状の身体、一つ一つに大量に設けられた砲門を撃ち抜き、物理的に死角を作り出していく。
本当はそのまま節の隙間を狙い射撃する事で堕とす事も出来るはずなのだが。
「ごめん、今のでエネルギー足りなくなった!」
「ううん、カバーありがと! 後はこっちで!」
死角に潜り込んだ美樹が、両腕の重ガトリングを改めて構える。
そうして節の隙間を狙い撃ち込んでいけば、ウィザードは全身から煙をあげていく。
最後の抵抗らしく、その巨体で圧し潰そうとしてくるが、しかし。
「分かってれば避けるのは簡単ですよ!」
「いや、狙われてんのも避けるのもアタシだけどね?」
残党とでも言うべき規模にまで減ったウォーロックをスナイパーライフルで片付けながら玲花が自慢気に叫ぶ。
事実思考データがこちらに流れている以上、不意打ちが効かないというのは大きすぎるメリットだ。
結局何も反撃出来ないままウィザードはエネルギー光を放ちながら爆散。
大規模な群れの半分は片付いた形になる。
どうせ地上近くだから、という事で降り立てば
「向こうは大丈夫かな……」
「天下のエトワール様でしょ、心配しなくてもアタシ達より上手くやるって」
「……でも、なんか不安ですね……八子さんのエネルギーが回復し次第応援行きます?」
「そうだね、どうせコンジュラーのほうには行かないとだし」
撃破した事で一息つくが、直ぐに方針を定める。
エネルギーが回復するまで待機し、また次の戦場へ向かうのだった。
エースバーンに酷い目に遭わされたので初投稿です。
八丈島決戦、次はエトワール側の戦場になります。




