14 病院からの電話
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「すごく上手にできたね、おばあちゃんありがとう。ママにすぐに持っていくね」トムは頬を染めて人形を手に「ママ!」と叫んで走っていった。
ケイトはベッドルームでジョンのバッジを見つめていた。成績トップに送る小さな金色のバッジをジョンはそれはそれは大事にしていた。それを家を出る時に持ってきたのだ。小さな復讐の気持ちを込めて。探しまくっているジョンのことを考えるだけで痛快だった。
そして、サラの家に謝りに来た時に、悪かったと思ってる反省していると言いながらも「それはともかく、会社のバッジを持って行かなかった?どこを探してもないんだ」と、そのバッジのことをはじめに聞いたのだ。トムの事よりも先に。許せない。
「あきれてものが言えないわ。私やトムが元気かと聞く方が先じゃない?」
「しっかりした君が一緒なんだトムは元気に決まっているし、お母さんも一緒だし、聞くまでもないと思たんだよ。ところで本当に知らないか?すごく大事なものなんだ」
そうでしょうね、あなたにとって家族よりもこんなもののほうが大事なのよね。とケイトはつぶやいた。ハリウッドヒルズからでも放り投げてやるわと思いながら。
その時、ベッドルームの電話が鳴り始めた。
トーランス病院からだった。
「ケイト!大変だ、ああ何から説明していいかわからない!ジョンの体中に針が埋まっていて手術して摘出したんだ、それから、今度は目だ!」
ケイトも何度かあったことのあるピーターからだった。いつも落ち着いている彼がものすごく取り乱している。息切れしながら早口で半分聞き取れなかった。
「ねえ、ピーターもう1回言ってくれる?何を言っているのかよくわからないのよ。体中から針がってどういうこと?落ち着いて」
「今日、最初の手術で体内の針を50本摘出した、すぐに連絡が行ったはずだ。」
「50本?針? ああ、携帯は消してあったから」
ジョンから連絡が入るのが嫌で今日は電源さえ入れていなかった。
「原因もなにもかもわからない。自分で入れたと他の医者は言っていたが、どうしてもそう思えなかったんだ。そして、さっきリリーがジョンの枕元に立っていて、ジョンの左目に針が刺さっていた」
ケイトは驚きのあまり息をのんだ。
「そんな、おかしいわ。理屈に合わない。2人は愛し合っているのかと……」
「さあ、なにがあったかわからない。ただ、体に針を仕込んだのもリリーとしか、考えられない。警察に引き渡したところだ」
「ちょっと待って、全然話が見えないわ。リリーがジョンの体の中に針を刺したの?どうやって?」
「どうやったかだって?全くわからない。わからないんだ。だけど、また今夜やってきて、ジョンを殺そうとしていたんだと思う。大きな注射器を持ってジョンのそばに立っていたのを何人も見た。あろうことか左目を刺して、右目は……ああくそ!どういうことかわからない。たった今両目から針が出てきた。失明は免れない!それに、マリーも一緒だった」
何もかも信じられずに衝撃的だったが、ピーターが付け足すように言った一言がケイトには一番ショックだった。
「え?どうしてマリーが?なにをしていたの?それにジョンの体から針が50本出てきて、リリーがやった?それから、たった今両目から針が出てきた?なによそれ。からかってるの?」
「こんな冗談誰が言うんだ!くそ!もういい、緊急手術がもう始まってるはずだ。とにかく俺は伝えたからな、もう行かなくては」
(ブッ)…… 突然電話が切れた。
いったい、ピーターは何を言ってたの?
ケイトは言われたことの半分もわからず、サラの古い受話器を見つめていた。