13 血の涙
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マリーとリリーはその瞬間を見ていた。
ジョンの眼球が内側からグイッグイッと盛り上がりブチュッという音とともに針が左目から突き出てきたところを。
その瞬間吹き出す体液と血液。ジョンの顔は赤黒くなり、汗でぬれた髪を振り乱し、のけぞった。大声を上げたが、ガーゼが詰め込まれているのでくぐもった苦悶の声しか聞こえなかった。手を振り回し、左目に当てたがその手を針は突き刺した。
注射針を持って近づこうとしていたリリーは絶叫した。マリーもその凄惨な場面を見て、へなへなとその場にしゃがみこんだ。
叫び声を聞きつけ看護師 当直医が駆けつけてきた。その後からピーターも飛び込んできた。
目に入ったのは口いっぱいにガーゼを押し込められ左目から血を流しているジョンの姿と、大きな注射針を手にジョンのそばにたたずむリリーの姿だった。
「何をしているんだ!」ピーターはすぐにジョンの口からガーゼの束を抜き出す。「セキュリティーを!早く!」看護師数人が飛び出していく。
「目がああああ!!俺の目があああああ!!」
ジョンはこの世と思えないほどの声で絶叫した。のたうち回りながらベッドから転がり落ちた。点滴の針が抜け、カテーテルの管も抜けてバラバラと床に転がり落ちた。
ピーターは素早くに壁の箱から手袋を取り出し滅菌ガーゼでジョンの左目を押さえる
「緊急事態だ!患者の眼球に針が刺さってる!早く!急げ!」
暴れまわるジョンに安定剤の注射を素早く打つとジョンは崩れ落ちた。押さえていた左目から手を離すと眼球には深々と針が刺さっていた。ドロリと血と粘膜が流れ落ちる。
「いったいなんてことをしたんだ、やっぱりお前だったんだなリリー、くそ!ジョンを一人にするべきじゃなかった。すぐに警察に連絡してくれ」
「ち、違う、違うの! 話を聞いて!」蒼白になったリリーが叫び病室から出ようとしたが、すぐにセキュリティーに押さえられた。
「たったいま何人も目撃したんだぞ、その注射器で次は何をしようとしてたんだ!何が違うの。だ。話は警察でしてくれ」
リリーは「違うの!」と半狂乱になりながらセキュリティーに引きずられて病室を出ていった。座り込んで動けなくなっていたマリーもセキュリティーに腕を取られた。その瞬間ハッとマリーは我に返った。
「放してよ!私は関係ないわよ!ケイトの友達よ!ピーター何とか言って!」
「リリーと一緒にいたのはどういうことなのか、君も一緒に警察に行って事情徴収を受けるんだな。ピーターはジョンから目を反さずに急いで言った。
ジョンの左目を押さえていたガーゼの下が動き、針がずるりと這い出てきた。
「うわ、なんだ!おい!急げ!緊急のオペが必要だ。早く!」数人がかりでストレッチャーにぐったりとしたジョンを乗せかかるとさらに大きな絶叫を上げはじめた。
医師と看護師が見守る中、今度は右目の眼球がぐっと膨れ上がり、またもや、ぐちゅっと眼球を突き破り針の先端がズルズルっとゆっくりとでてきた。
「うわあああああ!俺の目がまた!あああああ」
ジョンはあまりの激痛に病室のリノリウムの床を狂ったように転がり続けた。
両の目から血を滴らせながら、声を限りに絶叫しているはずだった。
だが声は全く出ていなかった。口を大きく開き、声のない絶叫をあげ続けていた。
涙が出ているはずの目から大量に血があふれ出す。
ジョンは暗闇の世界に落ちていきながらも光を探した。なんとか目を開けようとした。
しかしその願いはもう2度と叶うことはなかった。




