1.覚醒
激しい頭痛とともに、謎の地下シェルター『アーク』で記憶を失った状態で目覚めた男、Jason。
彼は、生存者コミュニティのEmmaやDavidと出会い、ここが核の炎と放射能に汚染された過酷な極寒の地上( wasteland)から隔離された、人類最後の砦であることを知る。
しかし、余韻に浸る間もなく、シェルターのインフラを揺るがす空気ろ過装置の致命的な故障と、凶悪な山賊の襲撃が同時に発生。
Jasonは、身体に染み付いた圧倒的な戦闘本能を覚醒させ、ショットガンとナイフを手にこの危機へ立ち向かう。
激しい頭痛と、耳の奥で鳴り響く耳鳴り。
それが、俺の意識の帰還を告げる合図だった。
重い瞼を開けると、視界に飛び込んできたのはコンクリート剥き出しの天井と、鈍く明滅する赤い非常灯だ。
体を起こそうとした瞬間、全身の筋肉が悲鳴をあげた。
「おい、無理に動くな。まだ麻酔が完全に切れてない」
聞き覚えのない女の声。視線を向けると、白いコートを着た女――胸のネームプレートには『Emma』とあった――が医療器具を片手にこちらを見ていた。
小綺麗だが、その目には生き馬の目を抜くようなサバイバーの光がある。
「ここはどこだ。俺の銃は?」
俺は嗄れた声で言い放ち、ベッドから足を下ろした。
頭痛を無視し、無意識に腰の後ろを探る。
愛用のナイフも、勝手知ったる自動拳銃もない。最悪の気分だ。
「ここは『アーク』。地下シェルターよ。あなた、地上の汚染区域で倒れていたの。
運が良かったわね、Davidたちの偵察隊があなたを見つけなきゃ、今頃は放射能でドロドロの死体か、歩く死人の仲間入りだった」
部屋の奥から、体格のいい男が歩み寄ってきた。
彼がDavid――このシェルターのリーダーらしい。
その顔には、数々の修羅場をくぐり抜けてきた男特有の深い皺が刻まれていた。
「歓迎するぞ、タフガイ。だが、ここじゃタダ飯は食わせない。
生き残りたきゃ、働いてもらう」
Davidの言葉が終わるか終わらないかのうちに、シェルター全体にけたたましいサイレンが鳴り響いた。
赤光が激しく回転し、天井から埃がパラパラと落ちてくる。
『警告。第3セクターの空気ろ過装置に異常発生。
除染システム、圧力低下。
地上ハッチに接近する未確認の武装集団あり』
AIの無機質な音声が危機を告げる。
Lukeと呼ばれる神経質そうな科学者が、モニターにかじりつきながら悲鳴をあげた。
「おい、嘘だろ! 換気システムがイカれたら数時間で全員窒息だ!
それにこの熱源の数は……山賊どもめ、また襲撃に来やがった!」
Emmaがすぐさま俺に1丁のショットガンと、フィルターのついたガスマスクを放り投げてきた。
「動けるんでしょ、Jason?
地上の外気は極寒の放射能 wasteland よ。
マスクなしじゃ3分ももたないわ。Davidと一緒に防衛線を張って!」
「Jason? 俺に言っているのか」
Emmaが顎で俺の首元を示す。
そこには所々色の褪せたドッグタグがさがっていて、”Jason”と刻印が施されていた。
どうやらそれが俺の名前らしい。
俺は受け取ったショットガンのボルトをガシャリと引き、体に引き寄せた。
ずっしりとした金属の重みが、ようやく俺に生の実感を取り戻させる。
ニヤリと口元を歪め、俺はEmmaとDavidを見た。
「外はマイナス何度か知らないが、あいつらの死体で少しは暖かくなるだろ。
Emma、俺の背後を任せたぞ。
David、案内しろ。挨拶代わりに、あの泥棒猫どもに鉛の弾をくれてやる」
ガスマスクを顔に叩きつけ、俺は地下の暗闇へと歩き出した。
記憶は失くしたままだが、体の動かし方は覚えている。
トリガーを引く指の感覚も、敵の骨を砕く感触も。
ようこそ、地獄の地下シェルターへ。ここからが、俺の新しい仕事の時間だ。
steamで販売されている「project zomboid」とそのMODを元にして執筆した小説です。
ゾンビパニックや核汚染後の終末世界の創作物が好きな人に気に入っていただければ幸いです。




