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週末カレー

「それでは、担当の方と話をして来ますので、トールさんは蕎麦を食べて待っていてください。」

「お、おう。」

鉄砲をぶっ放しておいて、ふわっと笑うユリに少し恐怖しながら、俺は蕎麦屋に戻った。


2077年では普通のことなのだろうか?

非番の警官が拳銃を持っていること、

警告も無しに撃つこと、

なにより、ユリが当然のことをしたという雰囲気なのが何よりも気になった。


暫くして、またユリが戻ってきた。


「まったく、いい迷惑でしたね〜」

「まったく。ところで拳銃はいつも持ち歩いているのか?」

「ええ、警官ですから。」


何を当たり前のことを聞くのだ?という雰囲気に俺はこれ以上の質問が出来なかった。



その後は当たり障りのない会話にとどめて、難民収容所に送ってもらった。そして俺は難民収容所で行われる授業を真面目に受けることにした。日本人だから大丈夫だと思っていたが、ユリと行動して俺が非常識だということが判明したからだ。


俺は警官が発砲することなど、滅多に無いことだと思い込んでいたが、2077年では普通のことらしい。特に犯人が拳銃を持っていれば、警官は撃ち殺しても特に問題は無いそうだ。凶悪犯が増えて、いちいち警告してから発砲していたのでは、間に合わない事例が多くそういうことになったとのこと。


時代が変わったんだなあという意識が強くなる。


そういう2077年を生き抜くための常識を身につけるべく俺は様々な授業を受けた。面白かったのがプログラミングの授業だった。もちろん難民収容所でやる授業なので本格的なものではないが、2077年ではプログラミングは、コンピュータと会話するだけで出来るのだ。AIと音声認識が進んだことにより、昔のテキストによるプログラミングは不要となったとのこと。


授業では皆、好きなプログラミングを始めた。


俺は将棋ゲームを、会話によって作成してみた。なんだか動きが遅い。講師に聞いてみたが

これくらいが普通だとのこと。

なんだか納得のいかない俺はプログラムのテキストの方も確認してみた。結局会話で自動生成はしているものの、テキストはC言語のようだった。これなら俺の得意分野だ。一通り目を通してみると、描画に一部無駄な部分がある。そこを直してみるとスムーズに動くようになった。


そんなふうに難民収容所の中で暮らしていると、夕ご飯がカレーになった。なんでも曜日の感覚を失わないように、難民収容所では毎週土曜日がカレーの日と決まっているとのこと。


食堂でカレーを食べながらテレビを見ていると、急に画面が切り替わった。レポーターが緊張しながら話をしている。なんでも新宿駅に自動車が30台同時に突っ込んだというのだ。


東京駅で盗み聞きした会話を思い出した。確か、前夜祭が新宿駅だと言っていなかったか……この自動車テロが前夜祭だとすれば、後夜祭は……


そこにユリが現れた。肩で息をしている。そして俺に拳銃を向けながらユリは言う。

「トールさん。貴方を逮捕します。」

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