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異世界は孤独な精霊と共に  作者: 九那
プロローグ
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プロローグ

今、目の前にいる女性は誰なのだろう。

美しい。

それ以外の言葉が出てこなっかった。世界中を探し回ってもこの女性を上回る人は見つからないだろう。それほどに彼女は美しくまた神秘的である。

ずっと見惚れていると彼女はゆっくりと目を開いた。彼女は俺を認識したのかニッコリと微笑んだ。それだけで鼓動が早まり緊張し始めた。

彼女は本当に美しかった。それはもう人知を超えた美しさである。そんな彼女は人には思えなくなってしまった。神秘的な彼女の裏に得体のしれない恐怖がある。本能で理解した。彼女が人でないこと。また、自分の力では何もできない相手だということを。

広い草原の中、微笑む彼女と恐怖で冷や汗が止まらない自分。たった二人だけの空間。

どうしてこうなった。

□□□

八神やがみ奏太かなたは異常な高校生だった。人の顔色を窺うのが得意で友達や先生に人気があった。それだけなら普通ですんだ。しかし、それどけではない。彼は動物の顔色さえ読み取れてしまった。動物の顔の微妙な変化に気づける不思議な目をしている。

そんな彼はその日もいつも通りに過ごしていた。いつもの時間に家を出て、学校に向かう。退屈にしか思えない授業を受ける。そして何も変わらない家に帰るはずだった。

このあたりでは見たことのない黒い闇のような猫がいた。その猫はついて来いと言うように歩き出した。なんとかそれだけは読み取れたがそれ以外の感情がないようだった。

その猫について路地裏を進むと少し広い空き地のような所に出た。辺りを見渡しても特に変わったところは見受けられなかった。

「いったいなんなんだ」

そうつぶやいた瞬間足元に光が発し広がってゆく。金縛りにあったように体わ動かず、光は規則的に何かを書き出した。それは想像上でしかありえない意味をなした魔法陣だった。なぜそんなことが理解できたのかは分からないがただそういうものだと認識していた。

そしてその光が何かをなそうと輝き始めた。先ほどの光では比べ物にならない辺りを白で埋め尽くした。それと同時に俺の意識はフィードアウトしていった。最後に見たのはあの猫の申し訳なさそうな表情だった。

□□□

目を覚ますとそこは草原だった。寝るのに気持ちよくてそのまま寝てしまいそうだったがここがどこか分からないため我慢をする。第一ここが安全かわからないから無理矢理体を起こす。

だんだんと意識がはっきりとする。理由は分からないがあの魔法陣らしきものによってどこかにとばされたらしい。普通なら夢だとか思うかもしれないがそうは思えなかった。いや、そう思わされているのかもしれない。まぁ考えていたって答えは出ないだろうし時間の無駄。ならまずは行動するしかない。

ふと空を見ると一通の手紙がヒラヒラと落ちてきた。違和感しかないが手がかりがない現状見るしかないだろう。手にとって確認すると八神奏太殿へと書いてあった。俺あてだったため遠慮せずに封を開けた。

『八神奏太殿へ

急にこんなこんなことになってすまんかった。儂は俗に言う神と言われる存在じゃ。今回世界樹が強制的にお主を転移させてしまった。こちらもなんとかしようとも世界への干渉を制限されているためこの形になってしまった・・・』

中身にはこんなことが長々と書かれていた。要約すると世界の危機に世界樹と言われるこの世界の源たるものが強制転移を行い俺が呼ばれたらしい。このようなことは何度かあったらしく世界そのものが行う自己防衛的措置らしい。しかも呼び出すこと自体が目的で俺が何をしようが問題ないそうだ。

他にも色々と書かれていたがそれは必要の時にしよう。今大事なのはここが俺のいた世界ではなく異世界と言うことだ。

早速だが手紙に書かれていた事を実践しよう。それは定番のステータス確認だ。手紙にはある程度の加護などが与えられてるらしい。所謂チートだ。一般人のステータスも書いてあったので見比べれば分かり易いだろう。

=====

名前:一般人(性別)

年齢:20~30歳

種族:人族

レベル:15

職業:剣士など

HP:100〜300

MP:50~200(魔法使い300以上)

筋力:50(20)

防御力:50(25)

素早さ:50(35)

魔力:20(50)

精神力:20(50)

運:30

スキル

剣技(片手剣など)火魔法etc.

称号

冒険者etc.

加護

持っているのは稀

=====

=====

名前:カナタ•エイゴット(男)

年齢:18歳

種族:人族

レベル:1

職業:召喚術師

HP:50

MP:1000

筋力:15

防御力:15

素早さ:60

魔力:70

精神力:100

運:30

スキル

召喚術 鑑定 他種族の声 他力本願

称号

異世界人 世界樹の呼び出し人

加護

主神の加護弱 獣神の加護中 世界樹の加護

=====

結構偏っていた。良く分からないのばかりだし。鑑定でわからないだろうか。そう思っていると出てきた。


召喚術

魔法陣を使い魔物、精霊などを呼び出し契約で使役させる。しかし使役させるためにはそれ相応のものを示さなければならない。一度呼び出したものは基本的にいつでも呼び出せる。魔法陣は使役出来る可能性が高い物が頭に浮かぶ。しかし高いだけで必ずではない。時に桁違いに可能性が低い凶暴なものが出ることも。


鑑定

あらゆるものの本質を見ることができる。


他種族の声

全てのものと話しをすることができる。それが例え魔物だったとしても。


他力本願

召喚術で使役したもののステータスを一部共有する。


異世界人

異世界の人間。

レベルアップ時能力上昇が1.5倍。


世界樹の呼び出し人

世界樹によって呼び出された人間。

レベルアップ時能力上昇が1.5倍。


主神の加護弱

主神に気に入られたものに与えられる最も能力の低い加護。

スキルを覚えやすくなる。


獣神の加護中

獣神に気に入られたものに与えられる中間の加護。

他種族に気に入られやすくなる。


世界樹の加護

世界樹に気に入られたものに与えられる加護。

土の魔法に補正。


ステータス自体は極端だったが思いのほかチートスキルがあった。だが、スキルは本人の資質が現れるらしいからチート(ズル)ではないかもしれんがそれでもいいのがあった。特に他力本願はありがたい。この偏ったステータスをすぐにチートなみに出来るだろう。

魔物などが普通にいる世界のため戦闘能力は必須だろう。しかし俺は攻撃スキルはないしステータスは魔法使いよりのためゴリ押しも無理だ。ならどうするか。それは召喚術を使うことだ。

職業が召喚術師なのだから戦闘も召喚術を使うのだろう。他力本願もあるのだからやって損はない。

早速召喚術を使おうと意識してみる。するとすぐに魔法陣が脳裏に浮かび上がった。魔法陣の書き方も感覚的に理解していた。体内にある魔力を指先に集中させる。そのまま浮かんできた魔法陣をなぞるように書き出す。数分かかり直径1mほどの魔法陣が書き上がった。すると詠唱が浮かんできた。

『我が呼び声に応え姿を表したまえ、召喚サモン

そう言うと魔法陣が輝き始める。魔法陣の辺りが光で見えなくなる。その光が鎮まっていく。その中にはそれはそれは美しい女性であった。

そして冒頭に戻る。

この女性は魔物なのだろうか。それとも精霊なのだろうか。それともそれ以外のなにかだろうか。分かることは召喚術で呼ばれたことから人間ではないことのみ。

どうすればいいのか迷っていると彼女の口が開いた。

「初めまして、マスター。私は知識の精霊です」

「ち、知識の精霊?」

まさかの精霊だった。しかも火や水とは違い概念が良く分からない。知識の魔法などあるのだろうか。精霊とは一つの属性に関わる概念的なものだと思っていた。しかし知識の魔法など理解できない。もしかするとこの世界の精霊は全てこんなものなのだろうか。

「はい。私は知識を司る精霊でございます。なのでこの世界で私の知らないものは殆どありません」

「なら俺のことも知ってるのか?」

「いいえ、私が知っているのは世界事情や世界の理のみです。流石に個人的なものは把握してません。というよりできません」

「できない?」

「はい。流石に一人一人の情報は世界自体にブロックされてしまいます。ですので私が知れるのは貴族などの多くの人に知られやすい家柄程度ですね」

流石に個人情報は知れないらしい。まぁそれでも魔物などがいる世界だ、魔物の情報が簡単に手に入るのはありがたい。

「そうか。なら早速で悪いが契約をしたい。何を示せば良いだろうか」

「別に何もないですよ」

「何もない?」

え、何?何かを示す資格すらないのか?

そう不安がっていると、

「強いて言うなら私を呼び出すこと、でしょうか」

「あっそう言う事。なら早速契約を」

しようと言おうとした。だがそれはできなかった。俺がいい終える前に彼女が俺の頬に手を沿え顔を近づけた。それに気づいた時にはもう遅かった。そのまま唇に柔らかい感触がした。脳が瞬間的にフリーズする。

ハッとして彼女を見るとニコニコと笑みを浮かべていた。

「これで契約完了です。よろしくお願いしますね、マスター」

まさかの契約方法だ。

「これが正しいやり方なのか?」

こんなんが正しいやり方は嫌だ。彼女のような女性ならまだしも男や魔物などにはしたくない。

「まさか。これは契約方法の中でも上位のモノです。他の方法もありますがこれが一番喜んで貰えそうでしたので」

「あっそう・・・」

良かったこれが普通じゃなくて。

「それでは早速ですが私に名前をつけてください」

「え、名前?」

「はい。私は概念としてはずっと昔からいたのですが人格はついさっき出来たものでして、ある意味0歳なんです」

そう言う事もあるのか。しかし名前か。お世話にもネーミングセンスがいいとは言えないがどうするか・・・。そうだあれがいい。

「それじゃあ、お前の名前はガーベラ、ガーベラなんてどうかな」

「ガーベラ・・・。どんな意味何ですか?」

「神秘的な美しさて言う意味かな」

まぁ正確には花の名前でその花言葉なんだけどね。

「神秘的な美しさだなんて・・・。ガーベラ、はい。気に入りました。それでは改めましてよろしくお願いします」

「あぁよろしく」

これが孤独な精霊ガーベラとの出会いであった。

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