Avsnitt 13 少しは親密になれたか
ことわざに勝って兜の云々ってのがある。
お試しデートで高評価を得たからと言って、すぐに恋人同士になれるなんて、思ってはいけないと頭では理解してる。
でも、鏡に映る自分の顔がね、緩んでるのがよく分かるし、母さんにも言われた。
エメリからは。
「次も期待してるね」
そう言われたら頑張るしかないわけで。
「リクエストある?」
「神社仏閣って言うの? いろいろ見て回りたいな」
日光東照宮はもちろんのこと、京都奈良の寺も見物したいそうだ。
東照宮は中学一年で、中学三年の時に修学旅行で京都と奈良は行ってる。別に面白くもなく見たであろう、寺なんかは記憶にまともに残ってない。
金閣寺や法隆寺の五重塔とか清水寺くらいは記憶にも残るけど。
むしろ旅館で男子生徒による夜這いの方が。教師の目を盗んでとか。
「もう少し手近なところで鶴岡八幡宮は? あと高徳寺なら大仏もあるし」
他には江島神社とか。江の島なら近くに観光スポットも多い。鎌倉湘南辺りなら誰でも楽しめそうだし。
ついでに寺も多いからエメリも存分に楽しめそうだ。
「全部見てみたいなあ」
「時間とお金に限界があるから」
「そうだね」
高校生じゃ遠出は難しく金銭面でもゆとりがない。
夏休みに行ける範囲で行ってみようってなった。
「バイトしようかな」
「私も」
「でも学校の許可必要なんだよね」
「大丈夫でしょ。日本文化に触れるための資金だよ」
そう。遊びじゃなく神社仏閣巡りとかだと、勉強って言う名目が立つ。
単なる小遣い稼ぎやバイクの免許を取るとか、そんなんじゃない。教養のためになら教師の印象も良さそうだし。
そう言えば、浅草とかあの辺って外国人の定番スポット。
「浅草は? 行ったことある?」
「Pappa,Mammaと一緒に行ってる」
「やっぱあれか。外国人が真っ先に行く場所なんだ」
「有名だからね」
登校時にそんな話をしてたら、途中から混ざるクラスの女子が、興味津々なのか「ついに付き合ったのか」とか言い出すし。
「草柳なんだ」
「あの自信過剰よりはいいけど」
「もっといいの居そう」
「早まったらダメだよ」
ひでえ言い分だ。
確かにお世辞にもイケメンとは言えない。身長もエメリの方が高い。隣に並んで歩くと釣り合い取れてない、そう見えるんだろう。
見た目が派手なエメリだし。地味な俺とは大違いなわけで。
「Det är vad som finns på insidan som räknas」
「えっと。どういうこと?」
「何よりも中身が大事ってことだよ」
外見ばっかり取り繕ってる日本人男性は、外国人から見ても魅力は無い。以前も聞かされた。
男女同権が根付いたスウェーデンでは、男らしさ、女らしさ、なんて基準ではない部分で人を見るそうで。ましてや見た目なんてのは二の次でしかないと。
互いが互いを尊重し合えないと上手く行かないでしょって。
「スウェーデンではね、男性も料理が得意。家事は平等。育児も平等」
なんでも女性に押し付けて、男性は仕事だからで逃れたりしない。女性の社会進出も多い国だからこそ、男女差なく互いに何でもやるのだそうだ。
その価値観を共有できないなら、いくら見た目が良くても不要だってさ。
「あー、でもー、それ分かるかも」
「だよね。今どき女は家事育児が当たり前、とか言われると引く」
「やっぱ同じようにって思うよね」
日本人男性より女性の方が、海外の価値観に慣れてきてるんだろうな。男性は今も古臭い考えが蔓延してる。社会がそうさせないのもあるんだろうけど。
育児休暇もろくに取れない日本だって言うし。これじゃあ男女同権なんて無理。
昼休み、いつも通り食堂に行きエメリの前に腰掛ける。
「草柳って」
「エメリが認めてるんだよね」
「不思議、って思わなくもないけど」
また出た。よほど納得行かないんだろうなあ。エメリみたいな美人なら、男子なんてより取り見取りじゃないのかって。そう思うから、よりによって俺、とか。
いいけどさ。エメリがある程度は認めてくれた。その事実があれば充分。
「もっと精神的な強さは欲しいけどね」
ああ、それはあるか。
「やっぱ軟弱って見えるよね」
「安心した」
「手放しで受け入れてるわけじゃないんだ」
「Jag har stora förväntningar på framtiden」
将来に大いに期待してる、だそうだ。
今は頼りない存在でも、努力次第で変われるのが人。ならば先々も駄目ってことはないはずだとも。
「それもそうだけど」
「人それぞれだし」
「大化けするかもってことなんだ」
エメリは微笑んで他の女子は俺を見てる。見なくていい。
「まあ頑張ってみれば」
「捨てられないようにね」
「違う人種だから見え方も違うのかな」
一応、形だけは応援する感じだけど、これ、まだ納得してないよね。
もうどうでもいいけどさ。こっちも君らは選ばないし、付き合いたいと思わないし。
口に出す気はもちろん無いけど、エメリと比較したら地味だよ。思慮の深さも段違いだし。無神経に心を抉る発言するんだから、デリカシーも無いでしょ。所詮は見た目でしか判断できないんだろう、そう思えば腹も立たないか。
日本に男女同権が根付くのは当分無理だな。女性もまた男性を理解する気が無いんだもん。
放課後は部活で各々部室に。
「あとでね」
一緒に帰るのは決定事項。早く終わった方が待つ。
部室に行きサックスの練習をするんだけど、やっぱひとり黙々と。
音は出るようになった。良い音とは言い難いけど。ただ、他の部員に迷惑そうだから、距離を取って壁際で壁に向かって練習する。
譜面を見て曲の練習以前の問題。運指に慣れる必要があるし。
「つまらない」
ぼそっと漏れ出た言葉に先輩から声が掛かった。
「楽しくないの?」
女子の先輩だ。ソプラノサックスを担当してる。
「あ、いえ」
「全然できない人が入部すること無いから仕方ないんだけどね」
「楽器できないわけじゃないんです」
サックスが初めてであって、トランペットなら多少マシだと言っておく。
「なんで?」
「先生が」
ぐるっと部室内を見回して「少し教えてあげようか?」と。
ひとり壁に向かっての練習じゃ、確かに楽しいわけがない。基礎も基礎の部分だから誰か指導しないと、なかなか上達しないだろうってことみたい。
「まずね、姿勢が悪いと思う」
左の親指で楽器を支えてないか、その確認や横に構えて頭が下がってないか、なんかを細かく指導されると。
「あ、指動かしやすいです」
「でしょ」
「音も出しやすい感じですね」
「意外と大事だから」
こうして少し指導されて、さっきまでより演奏しやすくなった。やっぱ初歩的な部分は指摘されないと分かんないから。
今日はそれで馴染むまでやってみてと。また次回も必要に応じて教えてくれるそうだ。
「先輩、ソプラノサックスですよね」
「構え方は違うけど、アルトもやってたから」
ある程度コツは掴んでるから、基本的なことくらいは教えられるとか。
吹奏楽部って放置なのかと思ったけど、さすがにでき無さすぎたみたい。見るに見かねての部分が大きいんだろう。
「あ、そう言えば君のクラスって、外国人が居るんだって?」
「居ますよ。スウェーデン出身だそうです」
「いいなあ。あたしも外国人と友だちになりたいんだよね」
紹介してくれとか言われた。部が違うから接点が無いんだとかで。
帰りは一緒だから、その時に紹介するってことに。
男子は遠慮気味なのに女子は積極的だ。
部活が終わると「じゃあ、紹介して」となり、校門前まで向かう際中いろいろ質問された。
「いつも一緒に帰ってるの?」
「家が隣同士なので」
「マジ? なんか恵まれてるね」
恵まれてるって見えるんだ。




