第48話 進まぬ工事を進めます! …最後は酷い目に会いました…
ロザミアの拡張工事が始まってから、少しではあるが工事関係者の来院が増えた。
まぁ、今のところは大きな怪我も無く、順調に進んでるみたいだけど…
そんな事を考えながら、その日の診療を終えた。
「エリカちゃん。次の休診日って、何か予定あるかい?」
夕食の用意をしながらミラーナさんが聞いてくる。
「いえ、ミリアさんやモーリィさんと食事とかショッピングでもしようかな~って、考えてるだけですね」
なんだろ?
ミラーナさんはニッと笑って言う。
「なら、今やってる拡張工事の責任者を紹介したいんだ。予定、空けといてくれるかい?」
そういう事か。
「分かりました。私も顔合わせぐらいは必要かなって思ってましたから」
責任者もだけど、工事関係者に怪我に対する注意もしておきたいからな。
「決まりだな。さ、出来たから食べよう♪」
勿論、幻覚は見えたよ?
休診日になり、私はミラーナさんと共に工事責任者の所へ行く。
大勢の人が忙しそうに動き回っている。
「お~い! こんな所へ子供が来たら危ないぞ~!」
少し大きめの小屋から一際大きな男性が声を掛ける。
「大丈夫だ~! この子が前に言ってた魔法医だ~!」
「なんだって!?」
男性は驚いて走って来る。
まぁ、驚くよなぁ…
「こんな小さな子供が魔法医!?」
「そうだよ? 噂ぐらいは聞いた事があるだろ?」
男性は考え込む。
しかし…
近くで見ると、更に大きく見える。
2mはあるんじゃないか?
「…作業員から何度か聞いた覚えはありますが… 冗談だと思ってたんですよ。皆で結託して俺をからかってるんだとばかり…」
暇人の集まりかよ…
「初めまして、エリカ・ホプキンスと言います。宜しくお願いしますね♪」
言って私は握手を求める。
「あ… あぁ、こちらこそ宜しく」
男性は握手の求めに応じ、私の手を握る。
…握手と言うより、私の手が包み込まれてるだけだな…
「名前ぐらい名乗れよ、オッサン!」
男性の腕を肘でつつきながら言うミラーナさん。
オッサンって…
まぁ、それなりの歳なんだろうけど…
「こりゃ失礼。俺が工事責任者のグランツ・バドウェルだ。で、ミラーナさん… 俺はまだ37歳なんだ、オッサンは止めて下さいよ」
「アタシより20も上なら充分オッサンだろ? 見た目もオッサンじゃないか。せめて顎髭と口髭が無けりゃ、もう少し若く見られるんだよ」
それは言えてる。
マークさんだって、口髭のせいで10歳ぐらい老けて見られるしな。
「髭が無いと威厳が無くなるんですよ。自分で言うのもなんだが、童顔な方なんで…」
髭が無いとイケメンなのか?
でも… 2m程の身長で童顔って、ちょっと不気味かも知れんな…
「オッサンのツラなんて、どうでも良いよ。挨拶が済んだんだから、小屋で何か飲みながら話そう」
相変わらずマイペースだなぁ…
「じゃ、グランツさん。私達も行きましょう」
「あ… あぁ… ええと… エリカちゃんって呼んで良いのかな?」
「はい、皆そう呼んでくれてますから♪」
小屋に入るとミラーナさんは早くも椅子に座り、事務員の女性にお茶を淹れて貰っていた。
私はミラーナさんの隣に、グランツさんはテーブルを挟んで向かい側に座る。
「で、工事の進捗状況に問題は無いんだね?」
「拡張工事の方は問題ありませんね。ただ、てえまぱあくとやらがサッパリで…」
この世界にテーマパークは何処にも無いのかな?
「それは解る。アタシも考えたんだけど、何をどうやって造れば良いのか…」
いや、アンタにゃ説明しただろ。
「この間、説明しましたよね? ミラーナさん、ノリノリで聞いてたじゃないですか。メモだって取ってたし」
「………忘れてた」
をいっ!
「なら、エリカちゃんに説明して貰いましょう。てえまぱあくってのは何なんだい?」
私はミラーナさんに説明したのと同じ様に、アスレチック・パークなんかを例に挙げて説明する。
勿論、ミラーナさんが書いていたメモも見せる。
「なるほど… 楽しく遊べて競争も出来る。それは面白そうだ。丸太とロープだけでも様々な物が造れるな。これだけでも観光客を呼べるかも知れんですな」
「じゃあ、こっちは任せて大丈夫だな。エリカちゃんを連れて来て正解だったよ♪」
丸投げかい。
「エリカちゃんからは何かあるかい?」
人に振るのは上手いな…
「工事は工事のプロに任せた方が良いとして、私は魔法医なので治療のプロとして意見しますね」
「何でも言ってくれ。なにしろ工事現場にゃ、怪我は付き物だからな」
子供だからと軽く見ないで聞いてくれるのは有難い。
「工事現場で働く人も、怪我して当然なんて思わないで欲しいです。下手したら死ぬ事だって考えられますからね。それと、造って頂く施設に関しては…」
私は延々と安全対策について話した。
特に小さな子供も遊ぶ事を考えると、建設する施設の種類や高さ次第では転落防止ネットなんかの設置は必須だろうしな。
安全なテーマパークの完成を祈ろう。
グランツさんとの話が思ったより早く終わったので、治療院に戻って国王一家に手紙を書く事にした。
ロザミアにテーマパークを造ってるって知ったら、どう思うだろうな?
もしかしたらロザミアに来たがるかも♪
ミラーナさんも久し振りに手紙を書くと言って、一緒に帰宅する。
それぞれが思い思いの手紙を書き、定期馬車の発着場へ出しに行く。
すると、私宛に手紙が届いていた。
差出人はキャサリン様、ロザンヌ様、フェルナンド様の連名だ。
ロザミアに戻った時に出した手紙の返信だな。
治療院に戻り、ミラーナさんと読む事にした。
ちょっと早めの夕食を食べ、手紙を読む私の横からミラーナさんが覗き込む。
連名になってたが、書いてるのはキャサリン様だ。
『エリカちゃんの手紙、楽しく拝見しました。楽しかった日々を思い出します』
私も楽しかった… かな?
『王都に帰って来た魔法医達の話を聞き、改めてエリカちゃんの凄さを実感してます』
あの魔法医達には悪い事したなぁ…
『ロザンヌもフェルナンドもエリカちゃんが帰った事で意気消沈していますが、私も同様です』
そんなに寂しがってくれてるのか…
『私達3人共、エリカちゃんと一緒に入ったお風呂が最高に良い思い出です♡』
書くなっ!!!!
何故か知らんが、ミラーナさんの目が輝いてるやろがっ!!!!
『是非また王都へ遊びに来て下さいね♡ また一緒にお風呂に入りたいです♡』
一緒に風呂は嫌ぢゃぁあああああっ!!!!
『その時は、また私達が全身隈無く洗って差し上げますね♡ では、次の手紙を楽しみにしています』
余計な事を書きやがって…
さっき手紙を出した事、早くも後悔してるぞ…
「エリカちゃん。キャサリン達と一緒に入ったって言ってたけど、あいつ等そんなに楽しんだのかい? わざわざ手紙に書く程だから、かなり楽しかったのは間違いなさそうだけど」
うっ…
「そんなに楽しいんなら、是非アタシも楽しみたいモンだよなぁ♪」
…まさか…
やっぱ、そうなる運命なのか?
「それじゃあ、今日はアタシと一緒に入ろう♡」
ぅえっ!?
やっぱり、そうなるのか!?
「たまには2人で入るのも楽しいだろ? キャサリン達みたいに全身隈無く洗ってやるからな♡」
私はミラーナさんにバスルームへと引き摺られて行く。
や~め~ろ~っ!!!!
へるぷみぃいいいいいいいっ!!!!
って、誰も居ないけど!!!!
そうして私は、ミラーナさんが満足するまで全身を洗われたのだった(泣)




