第47話 観光施設を造りましょう♪
ロザミア以外の街から治療に来る傷病人が現れ始めてしばらく経つと、ロザミアでも怪我人が増え始めた。
昼時の食堂街なんかは普段より多くの人で賑わっている。
私が食事に行くのは昼過ぎだから、人は少ない筈なのになぁ。
ミラーナさんはロザミアの領主だから、何か知ってるかも…
夕食の時にでも聞いてみるか。
「あぁ、その事ね」
やっぱり知ってるんだな。
「観光施設を建ててるんだよ。街の拡張工事をして、そこにホテルとか色々とね。エリカちゃんの生活圏は街の中心部近辺だけだから、知らなくて当然かもな」
確かに。
治療院、ギルド、食堂街、商店街。
全部街の中心部に集中してるな。
最近になって怪我人が増えたのは、その為の作業者が怪我したって事か。
それなら無理も無いな。
「どうしてまた、そんな事を?」
「これはエリカちゃんの影響があるかもな。他の街から治療に来るヤツが増えたけど、治療が終わったら殆どがすぐに帰っちまうだろ? だから観光施設を造って、少しでも長くロザミアに滞在させようってなったんだ」
それって、下世話な話…
「観光施設を造って長く滞在させれば、街に金を落とすからロザミアが潤うだろ? 嫌らしい言い方だけどな」
やっぱりか。
まぁ、観光でロザミアが発展する事を考えれば、あながち間違ってもいないしな。
と、そこまで考えた私の脳裏に1つの疑問が浮かぶ。
「ミラーナさん? 観光施設って言いますけど、ロザミアに観光出来るだけの場所って在りましたっけ?」
「へっ?」
考え込むミラーナさん。
さては、そこまで誰も考えてなかったか?
ロザミアは別名『ハンターの街』と呼ばれている。
ハンターにとっては住み易い街だ。
近くにはニュールンブリンクの大森林が在り、危険な森だけに魔物や獣の退治や討伐依頼も多い。
他の街へ行商に行く商人からの護衛依頼もある。
反面、観光には向いていない。
景観の良い山や湖が在るワケでもなく、海へ行くにも馬を走らせて1時間近く掛かる。
馬車なら3時間程だっけ。
ノルンって漁村が在って、ロザミアはそこから新鮮な魚介類を仕入れてたな。
ロザミア土産に魚介類を買って帰るのもアリかも知れないが、自身の街までの日数に依っては冬ならともかく夏だと腐る。
距離次第だが…
煮るなり焼くなり干すなりして加工すれば大丈夫だが、調理の幅が狭まるな。
そんな事を説明すると…
「あぁ~、ロザミアってそんなに観光に向いてないのか…」
と、テーブルに突っ伏してた。
誰か気付いてやれよ…
翌日、ミラーナさんは領主として観光事業に力を入れるべく、食堂街や商店街の代表達との会議を開くと言って出掛けて行った。
私は勿論、普段通りに治療院で診療に励む。
そんな中、ギルドマスターのマークさんが治療に訪れていた。
珍しいな。
と言うか、初めてじゃないか?
「マークさん、治療院に来るなんて初めてですよね?」
「あぁ、ちょっと腰をやっちまってな。軽いと思ってた荷物が意外に重かったんだ。で、グキッとな…」
よくあるパターンだなぁ…
「気を付けて下さいね? 思い込みで失敗するケースは多いですから。今後は重さを確認してから持ち上げて下さいね?」
「あぁ、気を付けるよ」
マークさんはミラーナさんの会議に出ないのかな?
ギルドマスターの立場からも、出席してそうだけど…
「まぁ、俺が出席しても良かったんだが、俺は元々別の街から来た人間だからな。ロザミアで生まれ育った詳しいヤツの方が良い意見が出ると思って、そいつ等に行かせたよ」
なるほどなぁ。
確かにその方が良い意見が出るかも知れないな。
ロザミアの良い処も悪い処も知ってるワケだし。
逆に私はロザミアに来て2年程だし、ロザミアを知らない者の意見としてなら役に立つかな?
そして夕食時、帰って来たミラーナさんに会議の様子を聞いてみた。
「それがさぁ… 皆考え込むばかりで意見らしい意見なんて出ないんだよ…」
ロザミアを知ってるだけに、逆に目新しい意見は出ないか…
「ナッシュのヤツなんて、娼婦館を造れば良いなんて言いやがるから殴り倒してやったよ」
ナッシュさん…
それ、アンタの願望だろ…
仕方無いなぁ…
前世(?)の知識を活かしてみるか。
「テーマパークを造ったら良いんじゃないですか?」
「てえまぱあく? 何だ、それ?」
あ、やっぱ解んないか。
私はアスレチック・パークなんかを参考に、テーマパークについて色々と話した。
さすがに電気の無いこの世界では、U◯JやTD◯みたいなのは無理だろうし。
テーマパークの説明を聞いたミラーナさんは、目を輝かせて言う。
「なるほど。それならロザミアにも観光客を呼べるかも知れないな♪」
私は商店街や食堂街にも協力して貰い、テーマパーク用のオリジナル商品や飲食物を開発する事も提案する。
ミラーナさんはノリノリで話を聞いてくれる。
更にはミラーナさん自身も意見を述べる。
様々な意見を出しては吟味し、メモに書き込んでいく。
「よし♪ これなら代表連中も納得するだろ♪ 明日の会議で提案してみるよ♪ エリカちゃん、サンキュー♡」
役に立てて良かったかな?
こんなところで前世の知識と言うか経験と言うかが活かせるとはな♪
テーマパークが完成したら試してみようっと♪
童心に戻って遊ぶってのも、たまには良いだろう。
毎日が同じ事の繰り返しだから、何か刺激があった方が楽しいしな♡
しかし、この時の私は自身の意見が妙な方向に解釈されているとは夢にも思っていなかった事を先に記しておく。




