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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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第30話 手紙を読むのも疲れます

 マインバーグ伯爵が王都へ()(かん)し、私の事を王宮に報告する為にロザミアを出発してから5日後の休日、私はミリアさんと一緒に昼食を食べている。

 ミラーナさんからの手紙に、きっと私の顔は(くも)っていたのだろう。

 ミリアさんが心配そうに聞いてきた。


「エリカちゃん、なんだか浮かない表情ね」


「…ミラーナさんからの手紙を読んでから少し…」


 どう言えば()いかなぁ?

 下手な事は言いたくないし…


「そっか、ミラーナさんが王都へ帰って1ヶ月だもん。やっぱり(さみ)しいんでしょ?」


 (ちゃ)うわいっ!!!!

 思わず叫びそうになったのを何とか(おさ)える。

 そりゃ、全く(さみ)しくないと言えば嘘になるよ?

 けど、今はむしろホッとしてるんだからな!


「ミラーナさんとの生活は驚きの連続でしたから。(さみ)しいと言えば(さみ)しいですけど、違う意味でそんな事を考える余裕が無いと言うか…」


「???」


 何を言ってるのか(わか)らないという表情のミリアさん。

 まぁ、ミラーナさんからの手紙で悩んでるからなぁ…

 何て言えば()いのか分からないんだよ…

 なんとなく会話が(はず)むでもなく、私とミリアさんの休日は終わった。





 ─────────────────





 その後も私の気持ちが晴れる事はなく、モヤモヤした気持ちのまま治療院の仕事を続けていた。

 2月も近づいた25日の休日、ミリアさんが大量の食材を持って治療院を(おとず)れた。

 困惑する私に、ミリアさんはニコニコ笑いながら言う。


「何があったか知らないけどさ、そんな時は美味(おい)しい物を沢山食べて忘れるのが一番よ♪ 私、エリカちゃんに料理下手を治して貰ってから、更に腕を(みが)いてたんだから♪」


 言いつつミリアさんは準備を続ける。

 そうだなぁ、今だけは不安な気持ちを忘れて楽しむか♪

 そう思った矢先、私(あて)に手紙が届いた。

 私とミリアさんは顔を見合せ、不安な気持ちで手紙を受け取り、リビングで読む事にした。






 手紙の差出人は、ミラーナさんとマインバーグ伯爵からだった。

 まずはミラーナさんの手紙から読む。

 私が手紙を読んでる間、ミリアさんにはキッチンで料理して貰っている。

 さすがに知られちゃマズい事が書かれているかも知れないからだ。


『マインバーグ伯爵から話は聞いたよ。エリカちゃんにとって運が()い事に、国王(父上)に報告する前にアタシに報告しに来てくれた。国王(父上)に報告した後だと、他の貴族連中にエリカちゃんの話が広まるのを阻止するのは難しかったかも知れないからね』


 それは良かった。

 伯爵には感謝だな♪


『アタシが不老不死になった事は、いずれ知られるから話したけど、エリカちゃんに(ほどこ)して貰った事は言ってないから安心してくれ』


 まぁ、これは仕方無いか…

 いくら隠してても、何年()っても見た目が全く変わらなければ()(しん)に思われ、いずれバレるのは間違い無い。

 なら、最初から話しても同じだからな。

 でも、誰に不老不死にして貰ったって言うつもりなんだろ?


『伯爵と相談した結果、エリカちゃんの為にも治療費の話は内緒にするよ。ただ、今回の噂と同様に、いつか知られるかも知れない事だけは覚悟しておいてくれ』


 との事だった。

 う~ん、こればっかりは仕方無いのかも知れないなぁ…

 とりあえず、すぐに騒ぎになる事だけは阻止できた様だから良しとするか。

 ミラーナさん、いろいろ考えてくれてるんだな♪

 ん?

 もう1枚あるな。


『~追伸~ マインバーグ伯爵が、王都(ヴィラン)に着いたばかりで疲れてるからとアタシの実力向上確認を拒否しようとしたけど、「戦争の相手が此方(こちら)の都合を考えてくれるか!」と一喝(いっかつ)したら、しぶしぶ応じたよ♪ 勿論、一瞬でアタシが伯爵を叩き伏せたけど♪ まだまだ修行が足りないな♪』


 …………………

 何をやっとるんぢゃ、ミラーナさんはぁああああっ!!!!

 そもそも伯爵が王都に着いたばかりって、キャサリン王女(妹さん)の成人披露パーティー初日やろがぁああああっ!!!!

 一気に疲れたぞ…

 気を取り直して伯爵からの手紙を読む。


『先日は突然の訪問、失礼いたした。エリカ殿には気を悪くしないで欲しいと心から願っている』


 手紙でも固いんだな…

 生真面目な人なんだろうな。

 ミラーナさんとは正反対ってトコか…


『まずは貴殿と親しいミラーナ王女に報告すべきと思い、陛下には申し訳無い事だが王女に対して報告をさせて貰った』


 本当に真面目な人なんだな。

 少しはミラーナさんも見習って欲しいモンだ。


『王女と話していて(きょう)(がく)したのが、貴殿の治療費が一律銀貨1枚と知った事だ』


 そうか、伯爵には言ってなかったな。


『王女と相談した結果、その事は陛下に話さない方が良いだろうという事になり、私達は黙っている事とする』


 うん、ミラーナさんの手紙にも、この事は書いてあったな。


『だが、いずれ王都中に知られるのは致し方無い事と、貴殿には心の(すみ)にでも(とど)めておいて欲しい』


 まぁ、仕方無いよねぇ…

 今すぐ騒ぎにならない事を感謝するか…


『では、また会える日を楽しみにしている。貴殿の心の平穏を心から願う』


 (りち)()な人だなぁ…

 マインバーグ伯爵とは、良い関係を(きず)けそうだ。

 …ん?

 こっちの手紙にも追伸か?

 もう1枚あるな。


『~追伸~ さすがに王都に到着したばかりで疲れているからと、王女の実力向上確認を拒否しようとしたのだが、王女の「戦争の相手が此方(こちら)の都合を考えてくれるか!」の一言(ひとこと)には感銘(かんめい)を受けた。そう言われて退()いては、武人としての名が(すた)る。ならばと思い王女と対戦したのだが、今回も()(すべ)無く叩き伏せられ、肋骨(ろっこつ)を3本折って王宮の魔法医に治して貰ってからパーティーに出席した。まだまだ私も修行が足りぬな』


 …………………

 何をやっとるんぢゃ、アンタはぁああああっ!!!!

 そこは断れよ!

 断るのが無理でも、せめてパーティーが終わってからにしろぉおおおおおおっ!!!!


 私は2人からの手紙に(精神的に)疲れ果て、折角のミリアさんの料理の味を楽しむ余裕も無く、ただ黙々(もくもく)と食べたのだった。


 ~追記~

 ミリアさんも私の心情は(さっ)してくれたらしく、気を悪くした様子は無かった。

 ミリアさん、ごめんなさい…

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