第244話 ホプキンス総合診療所完成♪ 早速修理です…(泣)
程無くして〝ホプキンス総合診療所〟が完成。
玄関脇には診療項目が書かれた看板が鎮座していた。
そこに書かれているのは通常の診療料金と時間外の追加料金。
簡単に言えば、診療時間内(朝の部:9時~13時と夜の部:16時~20時)は銀貨1枚。診療時間外(朝の部と夜の部の診療時間前や後に加え、休診日である5の付く日)は2割増し(小銀貨2枚追加)が書かれている。
そして診療内容。
・各種内科
・各種外科
・眼科
・歯科
・耳鼻咽喉科
に加え…
・産科
・婦人科
である。
更に…
・伝染性病理診断科
ってのも追加で増設しておいた。
まぁ、これは伝染病が蔓延した場合に備えての予防的な意味合いでの設置だ。
私が異世界に転生して6年近く経つが、今に至るもコレラや麻疹・風疹、インフルエンザや結核とった病状は確認していない。
勿論、ペストや天然痘なんかもだ。
異世界にそれらの病気は無いのかも知れないし、たまたま蔓延してなかっただけかも知れないが、用心しておく事に問題は無いだろう。
なんかフラグを立てた気がしないでもないが、その時はその時だ。
────────────────
フラグ、立ってたよ…
と言っても、水痘(水疱瘡)なんだけどね…
成人で初感染すると小児のときよりも重症化しやすく、水痘肺炎を合併する事も多くなるのだが、幸い(?)な事に罹患して診療所を訪れたのは全て2歳前後~12歳前後の小児や児童。
まぁ、親(主に母親)が付き添っているので、ついでにウイルスを貰っていないかを眼に力を込めて診ておく。
すると、やはりと言うか当然と言うか、2割程度の親は子供からウイルスを貰い、潜伏期間にあった。
水痘ウイルスの感染経路は接触感染、飛沫感染、空気感染なので、もう片方の親(主に父親)は当然の事ながら、兄弟姉妹が居ればウイルスを貰ってる可能性が高い。
更に言えば、潜伏期間中に友人と接触する機会があった場合、その友人達にも感染している可能性が無いとは言えないのだ。
私は診察・治療した患者と付き添いの親に対し、家族や他人に感染させている可能性を伝え、出来るだけ早く診療所を訪れて診察を受ける様に促した。
1回の診療費の安さも手伝って、1週間程は診療所がてんてこ舞いになる程に忙しかったのだが…
少なくともロザミアではパンデミックが発生する事もなく、最初の患者が訪れてから1ヶ月も経たずに水痘騒ぎは収まったのだった。
ロザミアではね…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「何年振りですか、この病気の蔓延は?」
イルモア王国の国王アインベルグは、宰相である腹違いの兄、サルバドール・フォン・ランジェス大公に聞く。
「ううむ… 私の記憶では10年以上前にイルモアで流行った筈じゃな… とは言っても、当時の魔法医達が全員で取り組んでも終息まで1年以上掛かったのぅ… じゃが…」
アインベルグは頷く。
そして…
「えぇ… ですが、今ならばエリカ殿もアリア殿も居ります。2人共にヴィランへ招聘するのは難しいでしょうが、どちらか片方でも来て貰えれば…」
と、エリカに協力を要請する方向でアインベルグは腹違いの兄であるランジェス大公に申し出る。
が、ランジェス大公は表情を曇らせながら言う。
「確かに、そうするのが一番確実ではある。報告では、ロザミアでは既に今回の〝流行り病〟はエリカ殿やアリア殿の活躍で終息しているとの事。王命で呼べば、すぐにでも馳せ参じてくれるとは思うが…」
「思うが…… 何です? 何か気になる事でも?」
言葉を濁すランジェス大公に、アインベルグは身を乗り出して聞く。
「うむ… エリカ殿の事だから、病人や怪我人を治療する事に対して私情は挟まないとは思う。ヴィランで〝流行り病〟が蔓延しているの聞けば、大急ぎで来てくれると思うが… 途中の街や宿場町でも病が流行っていないとも限らん。その場合…」
「確かに… エリカ殿の事ですからな。それぞれの街や宿場町で治療活動を行う事は考えられます。その場合、状況次第ではヴィランに来るのが遅れ、その間にヴィランでの〝流行り病〟が…」
ランジェス大公は、苦い表情で頷く。
しかし…
「確かに、普通の魔法医なら、そうであろうな。だが、あのエリカ殿だぞ? どの街でも1日か2日、宿場町なら半日もあれば大丈夫だと思わんか?」
「それは確かに… しかし、遅くなれば遅くなるだけ病がヴィラン中に広がるのではありませんか? かと言って、途中の街や宿場町を見捨てて来てくれとも言えません…」
2人はその後も議論を重ねたが…
エリカがヴィランに来る時、ライザに乗ってくる事で途中の街や宿場町をすっ飛ばして飛んで来る事を完全に忘れていたのだった。
────────────────
「…てなワケで、父上とサルバドール伯父さんから、急いでエリカちゃんかアリアちゃんに王都に来て〝流行り病〟を治して欲しいって要請が早馬で届いたんだけど… どうする?」
と、ミラーナさんが王都から届いた手紙をテーブルに置いて私に見せる。
新しくなったホプキンス総合診療所のダイニング・ルームには、私だけでなく他のメンバーも集まっている。
当然、私以外のメンバーも手紙を見る。
「ロザミアでの流行り病は治まりましたけど、ヴィランではまだまだ大変みたいですね…? 少しでも早く行って、何とかしないといけないんじゃ…?」
アリアさんは真剣な表情で言う。
本気でヴィランの状況を憂いてるみたいだな。
「確かにな… アリアちゃんが言う様に、ロザミアでの〝流行り病〟は治まったが… ヴィランでは魔法医達が四苦八苦してるらしい。なにしろ、この〝流行り病〟が流行したのは、今から10年以上も前の話だからな… アタシも罹ったから朧気に記憶してるけど、全身に発疹が出てさ… 痒くて仕方無かったんだよな… 母上から、『掻いたら全身に痕が残るから我慢しなさい』って言われて、必死で痒みを堪えたっけなぁ…」
うん、それは間違い無い。
水疱を手で引っ掻くなどして化膿すると傷跡になる事があるのは、現代(私の居た前世)では普通の知識だ。
この世界では、そこまでの知識は無いみたいだけどな。
知らんけど…
「王妃陛下の仰った事は間違いではありませんね。恐らくですが、過去の事例から学ばれたんでしょう。とにかく、手紙の内容から察するに、ヴィランで水痘症… 所謂〝水疱瘡〟が蔓延してるのは明らかですね。私が行って、速やかに終息させるのが最善でしょうね」
と、私が言うと、ミラーナさん、アリアさん、ミリアさん、ルディアさん、ライザさんは、当然の様に頷いたのだが…
「えぇ~…っ? 国王陛下からの要請ってのは解るけどさぁ~… 通常の診療とは違うんだから、割り増し料金とか要求しても良いんじゃないの~?」
「そうそう。今回の要請って、言ってみれば〝国からの要請に対応する〟って感じじゃん? なら、ライザちゃんが言う様に割り増し料金を請求しても良いと思うんだけどなぁ~」
すぱぱぁああああああんっ!!!!
ずどどべちょぉおおおおおっ!!!!
私とアリアさんが阿吽の呼吸で放ったハリセン・チョップで、アホな事を言うライザさんとモーリィさんは、仲良くダイニング・ルームの床にめり込んだのだった。
完成して1ヶ月も経ってなかったのに、早くも修理を依頼する事になっちゃったよ…




