表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/237

第193話 サミュエルさんを再教育するプリシラさんは悪魔。サミュエルさんの技術を魔法で無にした私は…?

 ()()()のサミュエルさんは若返った事で別人の()()となり、孫のサミュエル・クーパー・Jr.()を名乗っている。

 サミュエルさん自身は、()()()には孫を一人前の()()()にする為、自身の()(しょう)であるプリシラさんに(あず)けて工房を(ゆず)り、引退したと言う(てい)で…

 そして最近のサミュエルさんは、毎日の様に治療院を(おとず)れている。


「今日()打ち身と()(ぼく)ですね。プリシラさん、手加減しないんですか?」


 サミュエルさんは、治療を受けながら大きく()め息を()く。


()(しょう)は手加減なんかせん(しない)よ… 失敗したら殴って痛みを(あた)える。殴られて痛い思いをしたくなければ、失敗しない様にすれば()いって考えじゃからのぅ…」


 昭和かよ…

 いや、昭和でも戦前とか戦中の考えだろうな。

 戦後もしばらくはそんな時代があったかも知れないけど…

 現代の日本でそんな事してたら、間違いなく傷害罪で(うった)えられると思うぞ?

 ここは異世界だから、昭和も日本も無いけど…


「職人の世界って、それが普通なんですか? 私からしたら、ちょっと考えられないんですけど…」


 (となり)で別の人──()()木に激突して腕と肋骨3本を骨折したモーリィさん──を治療しながらアリアさんが聞いてくる。


「職人の種類にも()るかのぅ… 自身の腕しか(たよ)れん仕事なんかでは普通かも知れんが… (たと)えば、ハンターや冒険者なんかは下手したら命を落とす職業じゃろ? 当然、教える方も厳しくせんといかんじゃろうな」


 私は(うなず)き、アリアさんも納得する。


「そんな(いのち)()けの連中に、下手な()()()が作った防具なんかを使わせられん。防具が(こわ)れて怪我をするのは使用者の責任じゃが、半分は製作者にも責任がある。じゃから、()()()を目指す(もん)には、より厳しく指導する必要があるってのが()(しょう)の考えなんじゃよ…」


 言って(うな)()れるサミュエルさん。

 プリシラさんの考えは(わか)るが、ちょっと厳し過ぎやしないか?

 (ほとん)ど毎日治療に(おとず)れるって、どれだけドツき倒してるんだよ…?


「職人の世界って厳しいんですねぇ… それにしてもサミュエルさん、プリシラさんの影響ですか? なんだか(しゃべ)(かた)が似てる様な…?」


「そうじゃな… 毎日()(しょう)と話しとったら、どうしてものぅ…」


 かつて弟子(でし)だったからな…

 ()()()(しょう)と似た様な話し方になるのは自然な事だろう。

 本当は(じい)さんだからってのが一番大きいんだろうけど…

 なので、(じい)さんっぽい(しゃべ)(かた)は、()(しょう)であるプリシラさんの方言の影響が大きいって事にしている。

 ちなみにサミュエルさんが若返り、再度プリシラさんから(きた)え直されてるってのは内緒。

 プリシラさん以外では、私とマークさんしか知らない。

 〝(うで)()きの鍛冶師(かじし)〟として知られているサミュエルさんが、プリシラさん(いわ)く〝修行(なか)ばで逃げ出した中途半端な()()()〟で、()(しょう)から再教育されてるなんて言えないとの事。

 サミュエルさんにもプライドってのがあるからだが、プリシラさんに言わせると…


つこうとった(使ってた)武器や防具が、実は修行(なか)ばでケツまくった(逃げ出した)クソったれがこさえた(作った)中途半端なモンじゃったなんぞ、知られとう(たく)ない』んだとか…

 それでも…


『クソでも、そこそこの腕は持っとるけぇね。()(きょう)で修行してからウチの()()になる為、(あと)を追ってロザミアに来た事にしたんよ』そうだ。


「修行してから来たのに、まだプリシラさんに殴られ(怒られ)てるんですね…? 職人の世界って、厳し過ぎるぐらい厳しいんですねぇ…」


 感心するアリアさんを、指でツンツン()つくモーリィさん。


「アリアちゃ~ん… 話すのは後にして、早く治してよぉ~… 痛いんだからぁ~…」


 泣くんだったら注意して動けよ…

 木に激突して骨折するの、これで3回目だろ…

 アリアさんは、苦笑しながらモーリィさんの治療を再開するのだった。





 ────────────────





「ふ~ん… あの(じい)さんの孫、そんなに厳しくされてんのか… まぁ、プリシラを追い掛けて来てまで()()入りしたんなら、それぐらいは覚悟の上なんだろうけどさ…」


 夕食を食べながらミラーナさんが言う。

 そ~ゆ~設定なだけなんだけどね。

 言えんけど…


「ミラーナさん、サミュエルさんのお(じい)さんの事、知ってるんですか?」


「あぁ、アタシの剣をメンテナンスして貰った事が何回かね。ロザミアでは(うで)()きの()()()として知られてるよ。まぁ、さすがにプリシラよりは(おと)るけどな」


 アリアさんの質問に、ミラーナさんが答える。

 私は吹き出しそうになるのを(こら)え、何とか口の中の食べ物を飲み込む。

 何も考えてないミラーナさんとライザさんは気付かなかった様だが、他の5人(アンドレ様を含む)は私に違和感を覚えたらしい。

 風呂を済ませて寝ようかと言う時に、私の部屋を(たず)ねてきた。


「エリカさん… ちょっと聞きたい事があるんですけど、部屋に入って()いですか?」


 5人を代表(?)してアリアさんが言う。

 私は無言で(うなず)き、5人を部屋に(まね)き入れる。

 私は椅子に座り、5人にはベッドに腰掛けて貰う。


「で、聞きたい事って何ですか? まぁ、何となくですけど、プリシラさんかサミュエルさんの事だと思いますけど…?」


 5人は(たが)いに顔を見合せてからコクリと(うなず)く。


「ミラーナさんがサミュエルさんの事を話された時、エリカさんの様子が変だったので… もしかしたらと思うんですけど、エリカさんが何かしたのかなと…」


 アリアさん、観察眼(かんさつがん)(するど)いな…

 まぁ、それは私が魔法医として厳しく(きた)えたからかも知れないが…

 私は軽く()め息を()いて話し始める。


「今から話す事は、()(ごん)()(よう)に願います。一応、ギルドマスターのマークさんは知ってますけどね…」


 私が言うと、5人は(いぶか)しげな表情をしつつも(うなず)く。


「まず、最初に言っておきます。ややこしいかも知れませんが、()()サミュエルさんは()()()サミュエルさんと同一人物です」


 5人は何がなんだか(わか)らない様子。


「私がサミュエルさんを魔法で若返らせたんですよ。サミュエルさん、元々はプリシラさんの()()だったそうなんですけど、修行の厳しさに逃げ出したらしいんですよね」


 私の話に聞き()る5人。


「プリシラさん(いわ)く、一人前の()()()になるには最低でも20年は修行しないとダメらしいんですけど… サミュエルさん、半分の10年程度で逃げ出したってことで、プリシラさんから再教育を(ほどこ)されてるんです」


 (しゃ)(こう)()()(ぐう)みたいな()になる5人。

 私は構わず続ける。


「さすがにロザミアで(うで)()きの()()()として知られてるサミュエルさんが、()(しょう)のプリシラさんからドツき倒され(再教育を受け)ているとは言えませんからねぇ… だから魔法で若返らせた上で、サミュエルさんの孫って事にしたワケですよ…」


 私の説明(?)を聞いた5人は、(しゃ)(こう)()()(ぐう)みたいな()から(いっ)(てん)(はに)()みたいな表情になっていた。

 うん、気持ちは(わか)るぞ?

 ミリアさんもモーリィさんも、登録上ではCランクハンターだが、実力はAランクを超えてるから、サミュエルさんに武器や防具のメンテナンスを頼んだ事もあるだろうしな。


「あの職人(かた)()のお(じい)さんがねぇ…」


「若い頃は好青年って感じだったんだねぇ…」


「私、少し前に包丁を()いで(もら)ったんだけど、凄く切れ味が良くなってたわよ? それでもプリシラさんからすれば中途半端なのね…?」


「まぁ、ドワーフの技術からすれば、人間の技術は()(せつ)なんだろうね… だから修行期間が20年なのかも知れないけど…」


「お(じい)さんを青年に… やっぱりエリカさんは凄いです…♡」


 アリアさん… あんただけ感想の種類(?)が違うんでないかい?

 まぁ、いつもの事だけど…


「だけどエリカちゃん。サミュエルさんに再教育って言っても、以前の様に厳しくするのはどうかと思うんだけど…?」


 アンドレ様が疑問を(てい)する。


「プリシラさんの言い(ぶん)(わか)るけど、サミュエルさんもロザミアで長く()()()として活躍してたんだろ? 経験も積んでるんだし、良くない点を直してあげるだけでも良くないかな?」


 アンドレ様の意見はもっともだけど…


「それなんですけど、プリシラさんが言うには…」


 5人は(かた)()()んで、私の次の言葉を待つ。

 私は少し()を置き…


「修行(なか)ばでケツまくった(逃げ出した)クソったれは、えらい(苦しい)目に会わさにゃイケン(ダメ)じゃけぇ(だから)もっぺん(もう一度)ハナ(最初)から鍛え直す… だ、そうです」


「「「「「悪魔ね…」じゃん…」だわ…」ですね…」だな…」


 5人が口々(くちぐち)に言う。


「ちなみにですけど、サミュエルさんが今までに身に付けた技術… ロザミアに来てからの技術限定ですけど、こっそり私の魔法で(ゼロ)にしておきました♪ なのでプリシラさんの(おも)(わく)通り、修行(なか)ばからやり直しですね♡」


「「「「「悪魔より(ひど)い…」」」」」


 5人全員の意見が一致した。

 何故だ…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ