第183話 ランジェス大公、王都へ帰還♪ お土産は刑罰用のハリセンです♡
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ユニークも、間も無く55000に達します♪
読んで下さり、ありがとうございます♡
私達が話すミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんの話に、ライザさんとルディアさんは笑い転げていた。
ランジェス大公は腹を抱えて肩を震わせているだけだが…
前の戦争での3人が激突して失神した話。
戦争の時と同じ感覚で魔物と戦い、大木に激突して骨折したミラーナさんとモーリィさんの話。
肉食中心の食事が祟り、便秘からの腹痛を起こしたミラーナさんの話。
思い出すのもツラい〝料理下手時代〟のミリアさんの話。
同じく思い出したくもない、モーリィさんが駆る馬から〝私が何度も振り落とされた〟話。
〝私を乗せてると思って馬を走らせろ〟と言ったのに、馬を竿立ちにさせたり全力で疾走させたモーリィさんの話。
等々…
ロープでグルグル巻きにした上、猿轡を咬ませた3人は、失態をバラされて怒ってるかと思いきや…
かつての失態を思い出し、真っ赤になっていた。
「いやいや… ミラーナが王都に居た時からは考えられんドジっぷりじゃな♪ ミリア殿とモーリィ殿も、なかなかのドジじゃなぁ♪」
涙を拭いながら言うランジェス大公。
「あの~… そろそろロープを解いても良いんじゃないでしょうか? 3人共、抵抗する気力も無くなってるみたいですし…」
アリアさんが苦笑しながら言う。
見れば、3人は白眼を剥いて完全に脱力していた。
口から魂が出てる様に見えるのは気の所為だろうか?
私がコクリと頷くと、アリアさんは3人のロープを解く。
ロープを解かれた3人は、自ら猿轡を外し…
すぱぱぱぁあああああんっ!!!!
ずどべちょぉおおおおっ!!!!
私をハリセンで吹っ飛ばし、壁にめり込ませたのだった。
「あの~… 3人共、完全に脱力してたんじゃないんですか…?」
私は何とか気力を振り絞り質問する。
「そんなワケないだろ? アタシが2人に目で合図して、脱力してるフリをしてただけだよ」
「そ~ゆ~事♪ エリカちゃん、油断したわね?」
「パーティー組んでんだから、これぐらいの事は当然出来るんだからね?」
アイコンタクトか…
まさか出来るとは思ってなかったわ…
確かに油断だったな…
その後、意識が朦朧としていた私はルディアさん、アリアさん、ライザさんに壁から引き剥がされ、更にアリアさんから回復魔法を掛けて貰ったのだった。
ちゃっかり銀貨1枚を治療費として払わされたよ。
アリアさん、ホントに逞しくなったなぁ…
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私はランジェス大公に依頼された刑罰用のハリセンをリビングで披露している。
…何をやってんだ、私は…
とりあえず罪の軽重で使うハリセンの威力を分けてみた。
軽い犯罪用の物は、そこそこの力でビンタされる程度の痛み。
中程度の犯罪用の物は、力一杯ゲンコツで殴られる程度の痛み。
重い犯罪用の物は、それこそ一発でのたうち回る痛み。
また、それぞれを使用者が一目で判る様に、握り部分を軽犯罪用は青、中犯罪用は黄、重犯罪用は赤で色付けしておいた。
「フム… これなら軽犯罪者に間違って重犯罪者用のハリセンを使う事はありませんな。ちなみにですが、どの程度のダメージが身体に残りますかな?」
それが最も重要だろう。
下手にダメージが残って、更正した後の生活に支障が出ては意味がないからな。
しかし…
「ご安心下さい♡ これらのハリセンは、身体には全くダメージが残りません。勿論、吹っ飛ぶ事もありません。飽くまでも痛みを感じるだけです♡ しかも、誰がどんな力で叩いても同じ痛みを感じる特別仕様です♡」
「ほぅ、それは素晴らしい♪ つまり力加減をしなくても良いという事ですな? 棒叩きでは、力加減を間違って何人か死なせてますからなぁ♪」
死んでるんかいっ!
いやまぁ、あり得ない話ではないんだが…
特に重犯罪者では叩く回数も多いだろうしなぁ…
それにしても、楽しそうに言わないで欲しいんだけど…
「まぁ、このハリセンなら死ぬ事はありませんけどね。痛いだけですから♡ 後は、それぞれの罪の重さに応じて叩く回数を決めるだけですね♪」
ランジェス大公は満足気に頷く。
するとミラーナさんが重犯罪用のハリセンを手に取る。
「よくもまぁ、こんなモノを作るよなぁ… 魔法を使ったんだろうけど、感心するよ」
そう言って軽く掌をハリセンでペシンッと叩くと…
「んぎょわぁああああっ!!!!」
叫び声を上げつつ、床をのたうち回った。
おいおい…
誰がどんな力で叩いても同じ痛みを感じるって言っただろ…
しかも、重犯罪用のハリセンだし…
「ミラーナ… お主、エリカ殿の話を聞いてなかったのか…?」
ジト目でミラーナさんを見るランジェス大公。
「まぁ、ミラーナさんですからねぇ…」
私は勿論、全員が苦笑していたのだった。
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なんだかんだでムルディア公国外交使節団が王都に到着する頃になり、ランジェス大公もヴィランに帰らなくてはいけない頃合いになった。
朝食の後、全員で街の外へと向かう。
ミリアさん、モーリィさん、ルディアさんも見送りに付いて来てくれた。
ライザさんはドラゴン姿に戻り、ボート型の箱を背負って伏せる。
「…なんだか前のより大きくなってない? それに、ドアと屋根も付いてるけど…」
「ええ、ちょっと改良しておきました♡ 大型化し、ドア・屋根・窓を付け、内部にはソファーとテーブルを設置してあります♡ 乗る人には『快適な空の旅を♪』って感じですね♡ 残念ながら、ライザさんは乗れませんけど…」
言うが早いか、さっそくミラーナさんは乗り込んで感嘆の声を上げている。
おいおい…
続いてランジェス大公が乗り込んだところで、私はライザさんに王都まで真っ直ぐに行き、真っ直ぐロザミアに帰る魔法を掛ける。
「これで問題無く往復できますね♪ 勿論、引き留められた場合は滞在可能ですから安心して下さい♪ それじゃアリアさん、王都を楽しんで下さいね♡」
私は満面の笑顔でボート型の箱に乗り込むアリアさんに声を掛ける。
「ほ… 本当に私、大丈夫なんでしょうか…? なんだか凄く不安なんですけど…」
うん、気持ちは解るぞ?
キャサリン&ロザンヌ様達に加え、王妃様からお風呂攻撃を食らわされる可能性は極めて高いからなぁ…
その時は…
……………………………
耐えて下さい…
「…『耐えて下さい』じゃありませんよ…」
ブツブツ言いながら、アリアさんは私が教えた〝気圧シールド〟と〝防寒魔法〟を展開。
それを確認したライザさんはフワリと浮き上がり…
「じゃ、行ってきま~す♪」
ビュゴッ
いきなり全速力で王都に向かって飛び立ったのだった。
遠ざかるライザさんの方角から、悲痛な叫び声が聞こえた様な気がしたが…
「ねぇ、今のって…?」
「叫び声… だよねぇ…?」
顔を見合せ、青褪めるミリアさんとモーリィさん。
「エリカちゃん… あれ、無事なのかしら…?」
心配そうに聞いてくるルディアさん。
「屋根を付けておいて正解でしたねぇ… そうでなかったら、全員振り落とされてたんじゃないですかね?」
「「「そ~ゆ~問題じゃないと思うけど…」」」
ハモって突っ込む3人だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ライザが飛び立った直後、アリアはソファーから投げ出されていた。
進行方向を向いていたランジェス大公とミラーナは、ソファーの背凭れに身体が押し付けられる程度だったが…
吹っ飛んできたアリアに押し潰される格好になっていた。
「きゃぁあああああっ!!!!」
「どわぁああああああっ!!!!」
「うおぉおおおおっ!!!!」
三者三様に叫び声を上げるが、ライザの耳には届かなかった。
そして、およそ4時間後…
王都ヴィランに入る正門前には、青い顔をして肩で息をする3人の男女と顔面を地面にめり込ませて失神する少女、そしてそれを唖然とした顔で眺める衛兵達の姿があった。




