表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/237

第173話 ルディアさんへ料理教室を提案した私は、最終的に吹っ飛びました

 まだまだロザミアに(えい)(じゅう)するか迷ってるルディアさんに、私は魚料理教室を開いてはどうかと提案してみた。

 ロザミアはノルン(漁村)が近い事もあって、魚を食べる機会が多い。

 なんだかんだで私も寿司を作ってるしな…

 漁村出身なら魚料理には(くわ)しいだろうし、(なお)()つ遠く離れた国の魚料理なら、ロザミアやノルンで知られていない料理が()るかも知れないしな♪

 そんな料理が()るなら、私も知りたいし♪


「魚料理の教室ねぇ… それは(かま)わないけど、ロザミア(この街)の料理と(たい)して変わらないんじゃないかしら…?」


 言われてみれば、魚の調理法って基本的に『()る』か『焼く』のが(おも)だよなぁ…

 寿司は魚を(ナマ)で使うから、調()()()とは少し違うかもだし…

 いやいや、魚に()っては(あぶ)ったり酢で(しめ)たり()けにする事もあるからな。

 それに、シャリは上手(うま)く作らないと魚の味を()かせないどころか、台無しにしてしまう。

 私が考え込んでいると、ルディアさんが聞いてくる。


「ねぇ… ロザミアって、塩は簡単に手に入るの?」


「へっ? まぁ、普通に買えますけど? …って、ムルディア(こう)(こく)では簡単に手に入らないんですか?」


 ルディアさんはフルフルと首を振る。


「ムルディア公国は暑いから、誰もが大量に汗を()くでしょ? 汗で塩分が流れて不足しがちだから、国を()げて塩の生産に取り組んでるの。だから塩は売ってるんじゃなくて、定期的に国から支給されてるのよ」


「国から支給? て事は…」


 ルディアさんは(だま)って(うなず)く。


「基本的には無料(タダ)で手に入るって事ね。勿論、使い過ぎて足りなくなったら買い足す必要はあるけど… 小銀貨1枚で1(キロ)だから、無料(タダ)同然よね」


「なんですか、それ! (すご)()い国じゃないですか!」


「私達エルフは森に住んでるから、塩が作れないんですよねぇ… だから、近くの人間の街まで買いに行くしかないんですよねぇ…」


 いつの間に来たのか、アリアさんが話に加わる。

 ロザミアは漁村(ノルン)が近いから、そこで作られた塩を売りに来る商人から簡単に買えるんだが…

 住んでる場所で、塩の(にゅう)(しゅ)(なん)()って変わるんだなぁ…

 私の()た時代の地球は何でも簡単に手に入ったから、そんな事は考えた事も無かったけど…


私の国を褒めて(そう言って)くれるのは(うれ)しいけど、安く手に入るのは塩だけなのよね… この街の商店を見て思ったんだけど、食材にせよ(ぶっ)(ぴん)にせよ、ムルディア公国の半額ぐらいで売ってるのには驚いたわ…」


 塩以外は高いんかい!

 そんなんじゃ、ルディアさんみたいな漁村(レナル)に住んでる人はともかく、内地に住んでる人の生活は大変だろ。

 (りょう)(せい)()次第だが、魚介類(ぎょかいるい)は基本的に食べられる。

 肉や野菜なんかは買う必要があるけど、それでも全ての食材を買う必要のある内地の人よりはマシだろう。


「それに、税率も他の国と比べてマシとは言うものの、収入の4割だもんねぇ… ロザミア(この街)の税率が0.5割だって聞いた時は、3回ぐらい聞き返したわよ…」


 まぁ、領主がミラーナさんだからなぁ…

 ミラーナさんが領主になるまでの税率も、王族の(ちょっ)(かつ)()って事で(ゆう)(ぐう)されてて2割だったらしいけど…

 ミラーナさんが領主に()(にん)した時に、税率を0.5割に下げたらしいな。

 オマケにハンター登録してる者は、税を免除されてるし…

 もっとも、税を払いたくないからって(だれ)(かれ)(かま)わずハンターになられちゃ困るってんで、ハンター登録する為の最低限の基準を(もう)けたらしいけど…


「ミラーナさんがイルモア王国(この国)の第1王女って事は話しましたよね? ミラーナさんがロザミアの領主になった時に、税制を大きく変更したらしいんですよ。自身はハンターになり、領主(てい)は解体して土地は売却。その場所が、この治療院だったりするんですけどね…」


 目を丸くするルディアさん。

 うん、気持ちは(わか)るぞ。

 普通に考えて、ミラーナさんの行動を理解するのは不可能に近いからな。


「余計なお世話だっ!」


 すぱぁあああああああんっ!!!!


 べちゃぁあああああっ!!!!


 ミラーナさんのハリセンで、私はまたもや壁まで吹っ飛ばされる。

 い… いつの間に帰ってたんだ…


「油断したわね、エリカちゃん…」


「まだ思った事を口に出す(クセ)、治らないみたいだねぇ…」


 ミリアさんとモーリィさんが、苦笑しながらリビングに入ってくる。


「なになに? ()()エリカちゃんがハリセンの()(じき)になったの?」


 少し遅れてライザさんもリビングに入ってくる。


「…その()()ですよ… とりあえず、身体(からだ)が半分ぐらいめり込んでるんで、引っ張り出して(もら)えませんかねぇ…?」


 私が言うと、ミラーナさんと(ぼう)(ぜん)としているルディアさん以外の4人が私の足を引っ張って…


「って、ちょっと待っ…」


 べたぁあああああああんっ!!!!


「「「「あ………」」」」


()()()()()()引っ張ったら、こうなるでしょうがぁっ!」


 足だけ引っ張られて壁から()がされた私は、顔面から床に落っこちたのだった。





 ─────────────────





「なるほど、料理教室か… ()いんじゃないかな? ()()の話を聞いた限りじゃ、ロザミア(ここ)に住んだ方が良さそうだしな」


 私の提案を聞いたミラーナさんが賛成すると、ミリアさん、モーリィさん、ライザさんの3人もコクリと(うなず)く。


「でも… エリカちゃんにも言ったけど、教室を開く(ほど)の料理じゃないと思うんだけど…」


「それじゃあ、実際に作ってみたらどうですか? それを私達で試食して、教えるのに(てき)した料理と(てき)さない料理を(せん)(べつ)しましょう。で、(てき)した料理だけを教えるって事でどうですか?」


 不安そうなルディアさんだったが、私の意見に納得したのか商店街へと向かって行った。

 しばらくして帰ってきたルディアさんは、何種類かの魚と野菜をキッチンへと運び込む。


「じゃあ、まずは定番の魚料理から作るわね? 簡単だから、一度見れば覚えられるわ」


 言って料理を始めるルディアさん。


 ……………………………………………


 ルディアさんは醤油(シェッティ)と水を1(たい)1で張った鍋を火に掛け、沸騰(ふっとう)したところで大量の塩を()かしてから魚をブチ込んだ。

 あ~… 暑い国だからなぁ…

 やっぱ、そうなるか…

 塩分不足を(おぎな)う為の調理法なんだろうが、それは(こく)(しょ)()()で大量の汗を()き、塩分が不足しがちなムルディア公国での話。

 暑い日でも気温が35℃に(とど)かない日が(ほとん)どのイルモア王国では、ルディアさんの料理は塩分の()(じょう)(せっ)(しゅ)になるのは間違い無い。

 塩分の取り過ぎは高血圧や腎臓病、心臓病、脳卒中などの(えん)(いん)になる。

 逆に、大量の汗を()いても水の様な塩分を含まない飲料だけを摂取(せっしゅ)してばかりの場合、身体(からだ)の塩分が不足する事でも様々な悪影響を(およ)ぼす。

 塩分は取り過ぎても取らなさ過ぎてもダメなのだ。

 ま、なんでも程々(ほどほど)が一番って事だな。

 それはともかく、完成したルディアさんの料理を見てみると…

 塩と醤油(シェッティ)で煮込んだ魚を中心にして、(まわ)りにを色とりどりの野菜が(かこ)んでいる物で、見た目は()()しそうに出来上がっている。

 もっとも、その野菜も全てが大量の(しお)を溶かしたスープで()でられているのだが…

 どう考えても()()()()()だけだろ…

 いや、(しお)(から)いだけかも知れない…

 絶対に料理教室で教えてはダメな調理法だろうな…

 ルディアさんの料理を楽しみにしていたミラーナさん達だったが、(ひと)(くち)食べただけで、あまりの(しお)(から)さに(もん)(ぜつ)したのだった。


 ちなみにルディアさんの調理を見ていた私だけは、ルディアさんの料理を食べずに被害を(まぬが)れていた。

 もっとも、ルディアさんの料理を食べた5人は、私が想像を(ぜっ)する(ほど)(しお)(から)い事を()(そく)しておきながら(だま)っていた事に(げき)()

 全員から全力のハリセン・チョップを食らわされ、中央広場を飛び越えギルドまで吹っ飛ばされたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ