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第165話 肉体的、精神的… 連絡役は、全員お疲れの様子です…

 時は少し戻り、ライザが死んだ様に眠る前の事。

 与えられた自室に戻ったライザは(ひと)(ごと)(つぶや)いていた。


「2回お風呂に入ったのは()いとして、とにかく疲れた… 明日の朝食を食べたら、すぐにロザミアに戻っ…」


 そこまで言って、肝心(かんじん)な事を思い出す。


「ダメだ… 国王陛下から手紙の返事を(もら)ってないや… 手紙を読んで、ニュールンブルクの大森林の事は理解して貰えただろうけど… なんだかんだで返事を聞きそびれたからなぁ…」


 そんな事を考えている(うち)(ねむ)()を感じてきたが、考えも(まと)まらないのに眠るワケにはいかないと(けん)(めい)(すい)()と戦っていたライザだったが…


「ふにゃあぁ…」


 ()んでいても眠ってしまうライザが(すい)()に勝てる(はず)もなく、あっさり眠ってしまうのだった。





 ─────────────────





 ライザは困惑していた。

 朝も早い(うち)から強引に起こされ、朝食も食べずに浴室に連れて行かれ…

 王妃、キャサリン、ロザンヌの3人から全身を洗われている事に…


(なんで朝早くからお風呂…? なんでボクは(みんな)から洗われてるの…?)


 状況が(まった)く理解できず、ボケ~ッとしながら全身を好き放題に洗われながらボンヤリと考えるライザ。

 ようやく解放されたのは、本来の朝食時間から1時間余りが過ぎた頃だった。


(さく)()はバタバタしておった(ゆえ)、手紙の返事を伝えられなくて申し訳なかったな、ライザ殿。手紙の内容からニュールンブリンクの大森林でのワイルド・ウルフの魔獣暴走(スタンピード)が起こる可能性についての状況は(わか)った。王都(ヴィラン)からも討伐(とうばつ)(たい)を派遣する事は(やぶさ)かではない。(さっ)(きゅう)に対処しよう。貴殿はロザミアに戻り、ミラーナとエリカ殿に伝えて貰いたい。ミラーナには落ち着いて対処し、()()()()()()()()()。エリカ殿には()()()()()()()()()()()、ミラーナの監視を(おこた)らない(むね)を伝えて貰いたい。()の… アインベルグ・フェルゼンの名に()いて、()()()()()()()()()は食い止めてくれ…!」


 国王の()(じゅう)に満ちた表情に、ライザは心の中で(つぶや)く。


(ミラーナさん… あんた、ある意味では実の親からも全く信用されてないんだね…)


 ビミョーな雰囲気の朝食を終えたライザは、逃げる様にヴィランからロザミアに帰ったのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「大変でしたねぇ… まさか初対面のライザさんがお風呂の被害(?)に()うなんて、予想してませんでした…」


 私は帰ってくるなりグッタリとソファーに(もた)れるライザさんに声を掛ける。


「ボクも思ってなかったよ… てかエリカちゃん、王都滞在中は毎日だったの…? よく()えられたね…」


「最初は何も無かったんですけどねぇ… 王都で大勢の傷病人を治療して、疲れた私に食事を食べさせてくれたりしたまでは良かったんですけど… 更にお風呂の世話までしてくれたのが始まりなんですよ… それで他人(ひと)を洗う楽しさ? ってのに目覚めちゃったみたいで…」


 ライザさんは、話を聞いてげんなりとした様子。

 うん、気持ちは(わか)るよ…


「私は被害(?)に()ってませんけど、お2人の様子を見ると、かなり疲れるみたいですねぇ…」


 アリアさんの言葉に、私とライザさんは何度も(うなず)く。


「正直に言わせて貰うと、アリアさんにも経験して欲しいぐらいなんですけどねぇ…」


「だよねぇ… 何の抵抗もできずに好き放題に洗われるって、精神的にキツいんだよねぇ…」


 アリアさんはジリジリと(あと)退(ずさ)りしながら苦笑を浮かべ…


「いや… 私は先日(この前)、エリカさんに洗われたじゃないですか!? ホラ、ライザさんに(おさ)え付けられて…」


 あぁ、少し前にそんな事もあったっけ。


「でも、精神的な疲労と言うか、ダメージは(たい)して受けてませんよねぇ?」


「やっぱり王妃様や王女様達に洗われないとねぇ… あのツラさは理解できないよねぇ?」


 私とライザさんは顔を見合せ、大きな()(いき)()く。

 と、ここで私は思い出した。


「そう言えばアリアさん… 王妃様達が治療院に泊まった時も、お風呂攻撃(?)を(のが)れてましたね…」


「えっ!? 王妃様達、ロザミアに来たの? 治療院(ここ)に泊まったの?」


 あぁ、ライザさんは知らないんだったな。

 まだライザさんがロザミアに来る前だったし。


「ライザさん、ロザミアにテーマパークが()るのは知ってますよね? そのテーマパークを体験したくて来られたんですよ。その時、治療院(ここ)に宿泊されたんです」


「それで、あのお風呂攻撃(?)から(のが)れられたの? …でも、王妃様や王女様達の目的がエリカちゃんだったら大丈夫かな…?」


「それに、あの時点ではお互いに初対面でしたからね。私も出会ったばかりの頃は被害(?)に()わなかったし… さっきも言いましたけど、王都で大勢の傷病人を治療して疲れた私を… って、私が原因って事やんかぁあああああっ!!!!」


 私は頭を(かか)えて悶絶(もんぜつ)する。


「エ… エリカさん!? 落ち着いて… 落ち着いて下さいっ!」


「アリアちゃん、ボクに(まか)せて!」


 ずばぁああああああああんっ!!!!


 べしゃぁあああああっ!


 ライザさんのハリセン・チョップが脳天を直撃し、私は顔面から床に叩き付けられる。

 こ… こいつ、全力でハリセンを叩き込みやがった…

 意識は失わなかったものの、かなりのダメージを食らった私をアリアさんが起こしてソファーに横たえる。


「エ… エリカさん、大丈夫ですか!? ライザさん、ちょっと(ちから)の入れ過ぎです! エリカさんの前歯が3本折れて、()(がい)(こつ)にヒビが(はい)ってるじゃないですか!」


 マジかい…

 何の変哲(へんてつ)も無い普通のハリセンで()蓋骨(がいこつ)にヒビを入れるとは、さすがドラゴンのパワー…

 てか、アリアさん、(たくま)しくなったなぁ…

 ちょっと前までは、こんな状況だとアタフタしてたのに…

 アリアさんは冷静に折れた私の前歯を再生し、()蓋骨(がいこつ)のヒビを修復する。

 だけど、まだ少し観察力が甘いかな…?


「ア… アリアさん… この場合… 衝撃の(くわ)わった場所… だけじゃダメ… 頭頂部から(すい)(ちょく)の… 首… (けい)(つい)にも… 衝撃… 多分… (けい)(つい)(つい)(かん)(ばん)… ヘルニア… 手足… (しび)れて…」


 私は何とか言葉を(つむ)ぎ、アリアさんに(けい)(つい)(つい)(かん)(ばん)ヘルニアの治療を(うなが)す。

 ちなみに(けい)(つい)(つい)(かん)(ばん)ヘルニアで(げん)()(しょう)(がい)が起きる事は無い。

 これは単にハリセンを脳天に食らったダメージと、顔面を床に叩き付けられたダメージが原因。

 (おそ)らく、脳天にハリセンを食らった事で首に垂直方向の強烈な衝撃が発生し、それが原因で(けい)(つい)(つい)(かん)(ばん)ヘルニアになったんだろう。

 アリアさんは私の指示で頸椎(けいつい)から(とっ)(しゅつ)した椎間板(ついかんばん)を元に戻し、ライザさんを正座させて説教した。

 そして更に、罰として銀貨1枚を私の治療費として(ちょう)(しゅう)していた。

 ちゃっかりしてんな、おい…





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「さ… さすがに疲れたよ… 考えてみりゃ、(ひと)(ばん)休んだだけで疲れも残ってる状態でフィクセルバートまで全力(しっ)(そう)してきたんだからな…」


 (わず)か半月と言う驚異的な早さでロザミアに戻ってきたミラーナさんは、()(ろう)(こん)(ぱい)でソファーに横たわる。

 飲まず食わず、更には不眠で走れる魔法は掛けたけど…

 疲れは回復させなかったし、疲れない様にはしなかったな…

 こりゃ、ミリアさんやモーリィさんも同じ様な状態…

 いや、ミラーナさん以上に疲れた状態で戻ってくるだろうな。

 回復魔法、サービスしてやるか…


 数日後、戻ってきたミリアさんとモーリィさんは無言で部屋に入り、翌朝まで眠り続けたのだった。

 戻ってきたの早朝だったんだけど、かなり疲れてたんだな…

 成仏しろよ?

 いや、死んでないけどね…

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