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第161話 魔獣暴走を減らせる方法を考えてみました♪ 上手く行くかは知らんけど…

 ニュールンブリンクの大森林を、ミラーナ、ミリア、モーリィが駆け抜ける。

 大森林の東側でワイルド・ウルフ討伐(とうばつ)に当たっている街への連絡は、討伐(とうばつ)に参加していないDランク以下のハンターで馬の(あつか)いに()けている者が担当。

 大森林の西側の街への連絡は、大森林を()(かい)して馬で駆けるより(いっ)(ちょく)(せん)に走り抜けた方が早い。

 ミラーナ達3人以外に、それが可能な者は居なかった。


「よ~し、もう少ししたら分かれるよ! アタシはルグドワルド侯爵領のフィクセルバートに向かう! ミリアさんはベルナール、モーリィさんはタルキーニに向かってくれ! それぞれ街に着いたら、大森林に近い周辺の街に連絡する様に伝えてからロザミアに()(かん)!」


「「了解(らぢゃ~)♪」」


 そして3人は、それぞれが目指す街に向かって分かれていった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「…昨日、言ったばかりじゃないですか? 大森林で気を付けなきゃいけないのは、討伐(とうばつ)対象のワイルド・ウルフだけじゃないって…」


「いや、まぁ… それは(わか)ってたんだけどさ… いや! エリカちゃんの言いたい事は、充分に理解してるよ!? でもさぁ…」


 私が治療してるのは、前日にジャイアント・スパイダーの毒液を目に()びて失明しかかったギルバートさん。

 今回は逃げるワイルド・ウルフを追ってる最中、フォレスト・ウルフに不意を突かれて襲われたそうだ。

 フォレスト・ウルフはワイルド・ウルフより小型だが、小さいワリに凶暴な狼型の魔獣である。

 ワイルド・ウルフと同様に、魔獣暴走(スタンピード)を起こし(やす)い厄介な魔獣と言われている。

 まぁ、ワイルド・ウルフより天敵が多い為、ワイルド・ウルフよりは魔獣暴走(スタンピード)の可能性は低い。

 それに、ワイルド・ウルフより小さくて攻撃力も低いから、Dランクのハンターでも5人以上のパーティーなら討伐(とうばつ)依頼も受けられる。

 そんな魔獣でも、油断したらBランクのハンターであるギルバートさんですら怪我する()()になる。


「でもさぁ… じゃありませんよ。私だから治せましたけど、他の街の魔法医だったら言いたく()()()()けどハンターを引退する事になってましたよ?」


「それ、言いたく()()()()()じゃ…?」


 隣で別のハンターを治療しながら突っ込むアリアさん。

 …突っ込みを入れる余裕も出てきたんかい。


 コホン!


 と、私は(せき)(ばら)いし…


「と… とにかく! もっと(まわ)りに注意して下さい! 怪我の度合いにも()りますが、今の状況だと1つのパーティーが抜ける様な事が起きると、他のパーティーの負担が大きくなって、それが原因で怪我するハンターが増えるかも知れないんですからね!?」


「わ… (わか)ってるってば! だから、そんなに怒らないでくれよ!」


 本当に(わか)ってくれたのかな?

 ギルバートさん、意外にドジなトコがあるからな…


「そんなに(あわ)てる事はないと思いますよ? エリカさんが怒った顔で言ってる時は、怒ってる様に見えて意外に怒ってませんから♪ むしろ笑顔で怒ってる時こそ、エリカさんがキレてる証拠です♪」


「そ… そうなのかい? 良かった~… エリカちゃんが本気で怒ったら、命が無いと思えって言われたから…」

「誰が言ったんですか、そんな事! てか、人を救う魔法医が人を殺すかぁあああああっ!!!!」


 すぱぁああああああんっ!!!!


 ずどべしゃぁあああああっ!!


 思わずギルバートさんをハリセンで叩きのめしてしまった私でした…





 ─────────────────





「えっ!? それじゃあミラーナさん達、しばらくロザミアには…」


 ここ数日、私とアリアさんは毎日ギルドで昼食を食べている。

 理由は単純。

 ワイルド・ウルフ討伐(とうばつ)の状況を知るには、ギルドで話を聞くのが確実だから。

 (まと)め役のマークさんは、昼と夜の引き継ぎと指示を行うとギルドに戻ってくる。

 なので、昼食を兼ねたマークさんからの情報収集ってワケだ。

 そこでマークさんから聞かされた話が、ミラーナさん達が大森林に近い街への連絡役を買って出た事だった。


「そういう事だな。いくらミラーナさん達でも、ニュールンブリンクの大森林を駆け抜けて、周辺の街に連絡してロザミアに帰ってくるのに、10日程度じゃ無理だろうからね」


 だよなぁ…

 ニュールンブリンクの大森林って、北は王都のヴィラン近くから、南は漁村のノルン近くまであるし、東西も同じぐらいの大きさだからな…

 馬で()(かい)するより、ミラーナさん達なら大森林の中を突っ切った方が早いだろう。

 出会った魔物や魔獣は()りまくるだろうから、討伐(とうばつ)も兼ねられて一石二鳥ってヤツかな?


「…て事はミラーナさん達、どれぐらいで戻ってくるんでしょうか? 1ヶ月も2ヶ月も掛かるとは思えませんけど…」


「そうだなぁ…」


 (ちゅう)(あお)いでマークさんは考えて…


「ミラーナさん、ミリア、モーリィが、それぞれ違う街へ向かって、そこで近隣の街への連絡を頼むらしいから… だいたい半月から1ヶ月もしない(うち)に帰ってくるかな? 街への距離がそれぞれ違うから何日か… 状況次第では10日前後ズレるかも知れないけどね」


 なるほど…

 ミラーナさんの事だから自分は一番遠い街へ向かって、次にミリアさん、モーリィさんの順かな?


「あの~… ところでライザさんは…?」


「あぁ… ライザちゃんね…」


 アリアさんの質問に、マークさんは何やら口ごもる。

 いや、何となく想像できるんだけど…


()命的(めいてき)方向(ほうこう)(おん)()だから排除されたとか?」


「エリカちゃん… そんなにハッキリ言っちゃ…」


 私の言葉にマークさんは困った様な表情になる。

 やっぱりか…


「だって、私が北や南に向かってくれって指示してるのに、東や西に向かう人ですからねぇ。治療院からギルドに行くだけでも迷子になってましたし、排除されても仕方無いですよ」


「…そんなに(ひど)方向(ほうこう)(おん)()だったのか… そりゃ、ミリアとモーリィがハリセンってヤツを食らわすワケだよ…」


 食らわせたんかい…





 ─────────────────





 ミラーナさん達が連絡役となって他の街へと向かってから、早くも半月が過ぎた。

 ニュールンブリンクの大森林では、相変わらずワイルド・ウルフ討伐(とうばつ)が続けられている。


「結構、長引いてますね… ワイルド・ウルフって、そんなに(やっ)(かい)な魔獣なんですか?」


 今日も私とアリアさんは、ギルドで昼食を食べつつ情報収集。


「まぁ、厄介だね。たった2年で成獣になって(はん)(しょく)するから、ちょっと気を抜いてるとアッと言う間に増えるんだよ」


「それは… 確かに厄介(やっかい)ですね。何とかして(よく)(せい)できれば()いんですけど…」


(よく)(せい)かぁ… 相手が魔獣だから、難しいんじゃないかなぁ…」


 腕を組んで悩むマークさんとアリアさん。

 いや、(はん)(しょく)(よく)(せい)するだけなら、何とかなるんじゃないか?


「ちなみにですけどマークさん、ワイルド・ウルフの()(ゆう)を見分けるのは可能ですか?」


「ワイルド・ウルフの()(ゆう)? あぁ、(オス)(たてがみ)が黒っぽくて長く、(メス)は白っぽくて短いのが特徴だな。で、それが何か関係あるのかい?」


「ありますよ? 絶滅させるのは()めた方が()いですけど、(メス)(しぼ)って討伐(とうばつ)すれば、生まれる子供の数は大きく減るでしょうね。子供を()んで増やすのは(メス)ですから、(メス)が減れば(はん)(しょく)(よく)(せい)させるのは可能でしょうね♪」


 私の意見に2人は何やら考え…


「「なるほど!」」


 理解したみたいだな。

 仮に(オス)だけを減らしても、単に(メス)(めぐ)る競争相手が減るだけで、子供を()み育てる個体は(メス)なので意味は無い。

 逆に、(メス)を減らせば子供を生み育てる個体が減るので、必然的に全体の数が減少する。

 それなら()(ゆう)共に減らせば()いとの意見もあるだろう。

 勿論、それが(さい)(ぜん)なのも(わか)る。

 問題は危険性。

 ()(ゆう)共に討伐(とうばつ)するには、当然それなりに危険が(ともな)う。

 しかし、(メス)だけを討伐(とうばつ)するなら話は変わる。

 (オス)牽制(けんせい)するチームと(メス)討伐(とうばつ)するチームとで(れん)(けい)すれば、危険性は大きく下がる。

 更に言えば、子供は(メス)が守ってる場合が多いので、(メス)討伐(とうばつ)は同時に子供も討伐(とうばつ)する事になる。

 まさに一石二鳥♪

 まぁ、そう簡単に事は運ばないだろうけどね。

 それに、この案は将来の保険の意味合いの方が強い。

 現状を()(かい)する案ではなく、将来の魔獣暴走(スタンピード)が起きる可能性を減らす案なのだから。


「それに、さっきも少し言いましたが、完全に(メス)を絶滅させるのはダメです。(メス)を絶滅させる事はワイルド・ウルフの絶滅を意味し、それは大森林の生態系を激変させる危険性も(ともな)いますからね。絶滅させない程度に減らすのが(かん)(よう)です」


「承知した。その作戦をハンター連中に伝えよう。これで、魔獣暴走(スタンピード)を起こす魔獣が1つ減ったかな? 他の魔獣にも適用すれば、更に魔獣暴走(スタンピード)を起こす可能性を減らせるだろうな♪」


 そう言ってマークさんは、ギルドを出ていったのだった。

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