第159話 ニュールンブリンクの大森林での魔獣暴走は抑えられるんでしょうか?
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ワイルド・ウルフの魔獣暴走が懸念されてから数日、ロザミアのハンター達に依る大規模なワイルド・ウルフ討伐が続けられている。
その甲斐あって、ニュールンブリンクの大森林のロザミアに近い場所では、ワイルド・ウルフの魔獣暴走は起こりそうになかった。
しかし、問題は他の場所。
ロザミアみたいに大森林まで徒歩で1時間程度の近さではないものの、そこそこの距離に街が点在している。
それらの街の防衛状態は大丈夫なんだろうか…?
私はギルドで昼食を食べながらマークさんに聞いてみる。
「そうだなぁ… ニースなんかだと大森林との間に山が在るから、まだ安心だと思うが…」
考えながら言うマークさん。
ニース近郊の山って、意外に大きかったしな…
仮に魔獣暴走が起こっても、あの山を越えてまでニースへは行かない可能性が高い。
同じ様に、大森林との間に大きな山が在る街は、危険は少ないだろう。
大きな川が在る街も大丈夫そうかな?
「…後は、各街の領主次第って感じかなぁ? 念の為に、大森林周辺の街には早馬で魔獣暴走の可能性を知らせておいたから、領主の私設軍が何とかしてくれるとは思うんだが…」
「相手が魔獣ですからねぇ… どう動くかを予測するのは難しいですよねぇ… 魔獣の動きを本能で察知できるミ…」
そこまで言って、嫌な予感がした私は後ろを振り返る。
するとそこには、今まさにハリセンで私を叩こうとしているミラーナさんの姿が在った。
あ… 危ねぇえええええっ!!!!
「チッ… 気付きやがったか…」
舌打ちして残念がるミラーナさん。
おいおい…
「もうちょっとだったのにな… まぁ、良いか… マークさん、とりあえずだけど、ロザミアから徒歩で3時間圏内のワイルド・ウルフは魔獣暴走を起こさない程度に討伐したよ。一先ずは安心して良いと思うけどね」
「そうですか… それは良かった…」
椅子に凭れ、安堵の表情を浮かべるマークさん。
しかし…
「ミラーナさん… 一先ずって事は、まだ安心するのは早いって事ですよね?」
「おっ? エリカちゃん、さすがだな♪ マークさん、エリカちゃんの言う通りだよ。確かにロザミアから徒歩で3時間圏内のワイルド・ウルフは討伐したよ? けど、それは一時的に過ぎないって事だね。ニュールンブリンクの大森林は広大なんだ。どの程度ワイルド・ウルフが増えてるのかも判らないし、アタシ達が討伐した範囲に他から流れ込んで来る可能性も否定出来ないからね」
安堵の表情から一転、マークさんの顔色が変わる。
「他の街のハンターもワイルド・ウルフを討伐してるでしょうけど、その効果はロザミアより少ないでしょう? そもそもハンターの絶対数が違うんですから… マークさんが言う領主様の私設軍も動いてるでしょうけど、こちらの効果もロザミアのハンター達に比べたら…」
「エリカちゃんの言う通り、どっちも効果は期待出来ないだろうね。そもそも魔獣に対する慣れが違い過ぎるんだよ。私設軍は対人戦闘には優れてるだろうけどな。対魔獣となると、ロザミアでの駆け出しのハンターの方がマシだろ。で、他の街のハンターだけど、ロザミアのハンター達に比べたら…」
「単純に数と実力が違い過ぎるんだよ。ロザミアは人口こそ3000人程度だが、半数以上がハンターとして活動している。更にハンターの半数以上がBランクで、残りの半数程もCランクだからな。ハンターとしての実力が、他の街のハンターとは違うんだよ」
何故かドヤり顔のマークさん。
そう言えば、他の街のハンターの数と実力って知らないよな…
「他の街のハンターは、だいたい10人に1人居るか居ないかって感じかな? 多い街でも5人に1人って感じだったと思うよ? それに、Bランク以上のハンターなんて、そこから更に10人に1人って感じだよね。Cランクは5人に1人だったかな? だからこそ、安心するのは早いって事だね」
ミラーナさんの言葉に、今度は力無く椅子に凭れるマークさん。
「今の状態が、どの程度維持できるかって事ですね…? 勿論、必ず魔獣暴走が起きるとも言い切れませんが…」
「まぁ、それは何とも言えないな。けど、このまま討伐を続ければ、魔獣暴走が起きる可能性を少なくする事は可能だろうとは思う。勿論、絶対とは言い切れないけどな。だからハンター連中には、今まで通り討伐を続けさせるよ」
「「お願いします」」
私とマークさんは、揃ってミラーナさんに頭を下げたのだった。
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「お大事に~♪」
この日の最後の患者を見送り、治療院の玄関を閉める。
「やっぱり、ワイルド・ウルフ討伐の影響なんでしょうか? この数日、普段より怪我人が多いですよね」
私と一緒にキッチンへ向かいながらアリアさんが聞いてくる。
「でしょうねぇ… ワイルド・ウルフ自体はCランクのハンターなら大丈夫ですけど、数が多いですからねぇ…」
「それに、凄く早く動くんですよねぇ…? 大きさは普通の狼の2倍近くもあるのに…」
「らしいですね。更に鋭い爪や牙、長い尻尾での攻撃もヤバいって聞いてますよ?」
アリアさんは何かを思い出す様に目を閉じ…
「そう言えば、何十年か前にもワイルド・ウルフの魔獣暴走がありましたね… ニュールンブリンクの大森林ではなく、私達エルフの住んでる森から少し離れた別の森で、ですけど… 私が100歳になる少し前でしたっけ…」
…それって60年ぐらい昔なんじゃ…?
確かアリアさん、158歳って言ってたよな…?
「で… その時の魔獣暴走って、どうなったんですか? やっぱり今のロザミアみたいに討伐隊… と言って良いか判りませんが、組織されたとか?」
「近くの街の領主軍が出動した筈ですね。それほど大きな森じゃなかったんで、すぐに鎮圧されましたけど… だから今回の魔獣暴走に比べると… って、まだ起きてませんけどね… とにかく、その領主軍だけで充分だった記憶があります」
規模としては小さかったって事か…
だとしたら、やっぱり同じ様に抑えられるとは思わない方が良さそうだな…
「そうですね… 森の規模が違い過ぎますからねぇ… ところでミラーナさん達、今夜は…?」
「確か今夜は夜番って聞いてます。ですから、帰ってくるのは昼前ですかね?」
今頃は、その夜番に備えて大森林近くの簡易宿所で仮眠を取ってるか、腹ごしらえしてるんだろうな。
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「…てな感じで囲んじまえば、討伐するパーティーは背後を気にせず戦えるって事だよ。で、それを交代制で行うってトコかな?」
夜番を担当する全パーティーを集め、簡易宿所の食堂を兼ねた会議室でミラーナが作戦を説明する。
「なるほど… それなら確かに別のワイルド・ウルフの集団が襲ってきても、対処するのは容易いですね」
ミラーナの提案は、大隊単位での討伐だった。
ロザミアのハンター達は、基本的に4~6人で1つのパーティーを組んでいる。
パーティーを10チーム集め、1つの大隊とする。
なので、50人前後で1つの大隊を形成する事になる。
そして1つのワイルド・ウルフの集団に、1つか2つのパーティーが討伐に当たる。
その討伐の間、他のパーティーが周りを囲んで周囲を警戒する。
人口約3000人の半数以上がハンターのロザミアでは、魔獣暴走を起こさせない為に3交代制で討伐を続けている。
約500人ずつの交代制である。
なのでミラーナの作戦では、昼番・夜番共に10個大隊で活動する事になる。
ちなみにローテーションは…
昼番(10時~22時)
↓
夜休憩(22時~10時)
↓
昼休憩(10時~22時)
↓
夜番(22時~10時)
↓
昼休憩(10時~22時)
↓
夜休憩(22時~10時)
↓
昼番(10時~22時)
これの繰り返しである。
「昼番なら大隊のパーティーの数を半分にして、20個の隊に分けても大丈夫だろうけどな。夜行性のワイルド・ウルフを相手にするなら、アタシ達のパーティー以外は大隊単位の方が安全だろ?」
ミラーナのパーティーは、ミラーナをリーダーにミリア、モーリィ、ライザの4人。
パーティーとしては少数だが、その実力はロザミアのハンター・パーティーの中でもズバ抜けている。
ハンターとしては最強のミラーナ。
スピード・ファイターの異名を持ち、スピードだけなら誰にも──ミラーナを除く──負けないミリア。
パワー・ファイターの異名を持ち、パワーだけなら誰にも──ミラーナとライザを除く──モーリィ。
致命的な方向音痴ではあるが、その正体はドラゴンのライザ。
「そりゃ~ミラーナさんのパーティーを相手にして、ワイルド・ウルフの集団程度が無事なワケありませんからねぇ。それに比べりゃ、俺達なんてなあ?」
話を聞いたハンター達は、誰もが納得顔でウンウンと頷く。
そして、ミラーナ達の夜番が始まる。
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