第151話 溢れる魔力に魅了の効果!? 意図せず他人を魅了していた様な、そうでも無い様な…
魔力の流れを見れると言うライザさんに私の状態を見て貰った結果…
それは、私自身が信じられない事だった。
「何これ… 魔力が多過ぎて溢れてるよ… しかも、溢れてる魔力に魅了の効果が付いてる…」
魅了の効果だと!?
そんなモンが付いてたら…
「エリカちゃん… それってズルくない? 普段から皆を魔法で魅了してるって事でしょ? そりゃ、モテるわよ…」
「いやいやいやっ! そもそも私、そんなの意識してませんから! てか、ライザさんに見て貰うまで、そんな状態だったなんて知らなかったんですよ!?」
私は慌ててミリアさんの疑念を否定する。
しかし、ミリアさんは信じていない様で、私を疑いの目で見ている。
「ねぇ、ミリア… エリカちゃん、本当に知らなかったんじゃない? 知ってて魅了してたんなら、フェルナンド殿下やルグドワルド侯爵の息子さん… グランツ様だっけ? 2人から求婚されて、エリカちゃんが慌てる事はないんじゃないかな?」
モーリィさんのフォロー、感謝!
いや、そんな効果があったなんて全く知らなかったし。
知ってたら抑えてるって!
面倒な事になるのは分かり切ってる事なんだから!
そもそも、精神が男である私が男を魅了したいなんて思うワケがないだろ!
言えんけど…
「それもそうか… エリカちゃんゴメンね、疑っちゃって…」
「解ってくれたなら良いですよ? それにしても魅了の効果ですか… なんでまた、そんなモノが…」
「う~ん… ハッキリした理由までは判らないけど… エリカちゃんが誰からも好かれるのは魅了を別にしても、普段からの他人に対する接し方なんじゃないかな?」
ミラーナさんが考えながら話す。
接し方?
私としては、普通に接してるつもりなんだけどな…
「エリカちゃんって、誰に対しても真剣に向き合うよな? 特に治療って言うか、怪我とか病気に関しては治療院の儲けなんか度外視してるって言っても良い程だし…」
うん、それは否定しない。
怪我も病気も、しないのが一番だ。
勿論、それが不可能なのも解ってる。
だからこそ、私は全力で怪我や病気を治すのだ。
私の手が届く範囲に限定されるけど…
「ハンター連中なんて、凄く気にしてるんだよ… 下手に怪我したらエリカちゃんに心配させる… って言うか、エリカちゃんを悲しませる、なんて思ってるヤツも少なからず居るんだよな…」
そうなのか?
「まぁ、中にはエリカちゃんに治療して欲しくて… って言うか、エリカちゃんに会いたくてワザと怪我するハンターが少なからず居るのも事実だけど…」
そんなヤツは、問答無用で死なない程度に殴りますよ?
「ロザミアから多少なりとも離れた場所で、そんな事を考えるヤツまで魅了されてるとは思えないしな。それを考えても、ミリアさんが言う様にエリカちゃんが魅了を意識的に使ってるって事はないだろうね」
「エリカちゃん! 本当にごめんなさいっ!」
ミラーナさんの意見を聞き、ミリアさんはバク転からの土下座を私に披露した。
…それ、王妃様達がロザミアを訪問した時にも見せた芸だよな…?
「そこまでして謝らなくても、私は気にしてませんから♪ それにしても魔力が溢れてる上に、その魔力に魅了の効果が付いてたなんて…」
「でもさ… アタシ達、何度もエリカちゃんをハリセンで叩いてるよな? 魅了されてたら叩けないと思うんだけど…?」
ミラーナさんの疑問は解る。
魅了されてたら、少なくとも躊躇する筈だからな。
「それなんだけど、エリカちゃんの魅了は人に依って効果が違うみたいなんだよね… 例えば同性より異性の方が効果が強くなるし、異性でも年代や想いを寄せてる人が居るかどうかで変わるみたいだね」
それって、恋人が居るとか結婚してる人には効果が弱いって事かな?
年代は、私の見た目と近い年代の人には効果が強く、歳が離れると効果が弱くなるって事か?
「だいたい、その解釈で合ってるかな? 同じ歳とか状況の人でも、それぞれ効果の強弱があるみたいだけどね。何が違いを出してるのかまでは判らないけど…」
「…て事は、私達も多少は魅了されてるって事かな? 私よりミリアの方が効果が強いみたいだけど…」
モーリィさんの言う様に、ミリアさんが私のドレスを選ぶ時なんか、目が血走ってたからな…
「だってぇ… エリカちゃんが着たら、絶対に可愛くなるドレスだったのよ! エリカちゃんが着た姿を想像しながら選んだら、目だって血走るわよ! 実際、可愛かったし♡」
力説するな、頼むから…
それで何着ドレスを買わされたと思ってんだ。
私の部屋のクローゼット、中身の半分近くはミリアさんが選んだドレスなんだぞ…
殆どは白衣の下に着る、シンプルでフォーマルな白いシャツと黒いスカート。
職業柄、普段着を少ししか持ってないのが悲しい…
「ミリア、あんた… 選ぶだけ選んで、支払いはエリカちゃんなワケ?」
ミリアさんをジト目で見るモーリィさん。
いや、私を含めた全員がミリアさんをジト目で見ていた。
「でも、ミリアさんの気持ちも解る気がします。私は同性で恋人も居ませんけど、エリカさんの事は大好きですから♡」
アリアさん、あんたもミリアさんをジト目で見てたやろが…
それに、あんたの場合は『大好き』と言うより『崇拝』に近いぞ?
なんだかんだで私を恍惚とした目で見てるやんか…
ドレスを買わされんだけマシだけど…
「そう言えば、皆で王都に行った時も、途中の街でドレスを買ってたよな? あの時、何着買ってたっけ?」
「王都に向かった時は1着だけでしたけど… 私がロザミアに来て少しした頃も、似合うからってミリアさんに言われて… 確か、5着は買いましたね…」
それだけでもドレスを6着持ってる事になるのだが…
更に国王陛下からの褒賞としてのドレス──金貨5000枚、日本円にして約5億円に相当──を頂戴している。
畏れ多くて──と言うか、値段にビビって──王宮以外の場所で着る勇気はない。
王都からの帰還途中、宿場町でミリアさんから強引に着させられたけど…
王妃様達がロザミアを訪問された際に値段を知ったミリアさんは、先程のバク転土下座を初披露。
「言わないで… 確かに調子に乗ってたのは認めるわよ…? でもでもでもっ! エリカちゃん、ドレス似合ってるでしょ!? 私、エリカちゃんには可愛い服を着て欲しいんだもんっ! なのに、野暮ったいフォーマルな服に白衣ばっかりなんて! 素材が良いのに勿体無いわよ!」
野暮ったい服で悪かったな!
今は女の子の姿だが、元は男なんだから可愛い服には抵抗があるんだよ!
言えんけど!
てか、少し落ち着け!
魅了の効果かどうかは知らんが、頼むから落ち着いてくれ!
「ミリアさんには魅了の効果が少し強いみたいだよねぇ… 理由までは判らないけど… ボクには無理だけど、エリカちゃんなら魔法で何とかできるんじゃない? 魅了に対する抵抗力を上げてあげるとか…」
そりゃ、できるよ?
どんな魔法でも無制限で使えるんだから。
そしてライザさんの提案を採用し、ミリアさんの魅了に対する抵抗力を上げてみたのだが…
元から私に対する好意が強かったのか、ミリアさんには全く効果が無かったのだった。
何なんだ、コイツは…