表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/237

第148話 絶賛されるトリュフを使った料理と、久々のナッシュへのハリセン攻撃

 ニース近郊(きんこう)の山や森で()った山菜やキノコ。

 更に、思いがけず収穫したトリュフを使い、私は『ステーキの山菜()え with トリュフ』を調理している。

 作り方は単純。

 ステーキは300(グラム)の肉に塩・()(しょう)で下味を付け、をミディアム・レアで焼き上げる。

 薄くスライスしたトリュフをステーキの下に忍ばせて完成♪

 山菜はキノコと共にバターでソテーするだけのシンプルな物。

 出来上がったら、おろし金ですりおろしたトリュフを()りばめて完成♪


「「「「「……………!」」」」」


 一口(ひとくち)食べ、全員が固まる。


「味は普段通り(うま)いんだけど、この鼻に抜けるトリュフの香りが…!」


「エリカちゃんの言った通り、全く味を邪魔せずに香りだけが()(くう)を突き抜けて…!」


「こんな感覚、初めてです…! エリカさん、最高ですよぉ…!」


「こんなの味わったら、トリュフの無い料理が物足りなく感じるかも…!」


「こんな()()しい料理を毎日食べられるだけでも幸せだぁ…! ボク、正式に治療院(ここ)の家族になるよ!」


 それぞれが口々(くちぐち)に感想を述べ合う。

 食い物で家族になる事を決めるライザさん。

 それで()いのか?

 まぁ、本人が()いなら(かま)わんけど…


「トリュフは私の異空間収納で保管しますから、悪くなる事はありませんね。かなりの収穫量ですから、毎日使っても春頃までは大丈夫でしょう。無くなりかけたら、またニースに行きましょう♪」


 春の山菜も楽しみだしな♪

 この世界でも『春の七草』なんて()るんだろうか?

 ()るなら、七草粥(ななくさがゆ)なんて作りたいなぁ♪


「ナナクサガユ? それって(うま)いのかい?」


美味(おい)しいかどうかと言えば、普通ですね。胃を休める為の食事とも言われてます。ミラーナさん、今まで年末年始は王都で(ぼう)(いん)(ぼう)(しょく)してたでしょ? 海水浴が原因で社交シーズンが2ヶ月ズレたから、来年からは大丈夫だと思いますけど…」


「暴飲暴食って… まぁ、否定できないけど…」


 適当に言っただけなんだけど、やっぱりか…


「そんな疲れた胃を休める為の食事なんですよ。胃に優しい野菜を入れたお(かゆ)… お米を多めの水で柔らかく()た物で、そこにセリ、ナズナ、ハハコグサ、ハコベ、コオニタビラコ、カブ、ダイコンなんかを入れて作るんです。まぁ、入れる山菜… 野菜は地方によって違うみたいですし、必ず7種類入れなきゃダメって事もないみたいですけどね」


「エリカちゃんって、色んな事を知ってるのね…」


「私達と2歳しか変わらないのに、知識量が(はん)()ないよねぇ…」


 元の世界(前世)って、情報社会だったからなぁ…

 この世界と違ってインターネットが()(きゅう)していたから、誰でも簡単に知りたい情報を手に入れられたんだよ。

 前世では気になった事はネットで調べて、知識を増やす事に夢中になってたモンだ…

 今でも時々図書館に行って、気になった事は調べてるしな。

 元の世界に比べて文明が遅れてるから、間違った記述も多いけど…


「それだけの知識を持っていながら、まだ勉強してるなんて… やっぱりエリカさんは凄いです♡」


 恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべて私を見つめるアリアさん。

 なんなんだ、アンタは…


「ご馳走さん♪ あ~、(うま)かった~♡ まだまだ食えそうだけどな♪」


 …ミラーナさん、太るぞ?


元々(もともと)エリカちゃんの料理は()()しいけど、トリュフの香りが更に()()しさを引き立ててるわねぇ♡」


 ミリアさん、嬉しい事を言ってくれるねぇ♡


「だったらさ… 私の料理もトリュフを使ったら、一段階上に行けるのかな?」


 確かに良い香りは(ふう)()を引き立てるけど、味自体が良くなるワケじゃないからね?

 モーリィさん、勘違いしないでね?


「トリュフの使い方が絶妙ですよね♪ ステーキにはスライスした物を、付け合わせの山菜ソテーにはすりおろした物を… 多過ぎず少な過ぎず、丁度()いです♡」


 アリアさん…

 どこかの料理評論家みたいな意見だな…


「だよねぇ♪ ボクの(きゅう)(かく)じゃ、これ以上の量だと香りが(つよ)過ぎてキツかったかも」


 ドラゴンだけに、ライザさんの(きゅう)(かく)(するど)いからな。

 次からライザさんの分は少し減らすか…


「ところでエリカちゃん。毎日使っても春頃までは大丈夫って言ってたけど、それって夕食だけでって事かい? それとも、朝食も含んでるのかい?」


「朝からトリュフの香りはキツいでしょう? 使う様な料理でもありませんし、夕食に限定してって事ですよ」


 私とアリアさんは、昼食はギルドや街の食堂街で済ませてる。

 ミラーナさん達も同じだろう。

 たまに一緒に食べるしな。

 さすがに毎食だと、2ヶ月も持つかどうか…

 それに、隔月(かくげつ)とはいえニースにばかりトリュフを()りに行ってたら、ニース近郊(きんこう)の山や森からトリュフを()()くしてしまうかも知れないしな。


「さすがにそれはマズいよなぁ… 下手(へた)すりゃ… いや、下手(へた)しなくてもニースから()(きん)食らっちまうな…」


 トリュフの存在自体、この世界じゃ知られてないみたいだから大丈夫だと思うけどな…


「そうだ! 年末最後か年始最初の休診日は、さっき言ってた七草粥用の山菜を()りに行きませんか? 寒いでしょうから、防寒対策(ぼうかんたいさく)はしっかりしなきゃですけどね♪」


「「「「「(さん)(せ~い)♪」」」」」


 全員一致で春の七草を()りに行く事が決まった。

 それにしても…


「私もだけど… なんだかんだ言って、食い意地張ってますよねぇ… 全員…」


 その一言(ひとこと)に、全員が沈黙したのだった。





 ─────────────────





随分(ずいぶん)、久し振りですねぇ… しっかり修行してますか? …って、してるからこんな()()したんでしょうけどね…」


「ちょっとした怪我じゃ、治療院(ここ)に来させてくれないんだよぉ~… さすがに今回のはマズいって事で来れたけどさぁ… (いて)ててて…」


 治療室のベッドで(うな)っているのは、(なつ)かしのナッシュさん。

 ()(こう)の悪さ──主に私を含めた女性に対する──からギルド職員をクビになり、接客を学ぶべく商店で(でっ)()(ぼう)(こう)を続けている。

 そんな彼が、2年だか3年だか…

 とにかく数年()りに治療院を(おとず)れ、私の治療を受けている。

 ちなみにアリアさんとは初対面(はつたいめん)


「この人が(うわさ)のナッシュさんって人ですか…? 確かに見た目は(けい)(はく)そうですけど、それほど危険人物とは思えませんけどねぇ…」


 アリアさんは、私の後ろで治療の様子を見つめながら言う。


(だま)されちゃいけませんよ? ナッシュさん、かつてはミラーナさんに言い寄ってブッ飛ばされ、私に言い寄ってハンターの兄ちゃん達に殴り倒され、あまりの()(こう)の悪さからギルド職員をクビになった人なんですから」


「エリカちゃ~ん… それは過ぎた話だろぉ~? あれから俺も心を入れ換えて頑張ってんだからさぁ~…」


 泣くなよ…

 そもそも()(こう)が悪かったのは事実だろ…


「そりゃ、()(こう)が悪かったのは認めるよ… だからギルド職員をクビになったんだし… だけど、あれから俺も心を入れ換えて…」


「モーリィさんから聞きましたけど、商店での仕事中に女性をナンパして怒られてますよねぇ…?」


「それも過去の話だって! あれからは真面目に頑張ってんだよぉ…」


 私は治療を終え、元・患部の腰をパンッと叩く。


「ハイ、これで終了です。真面目に頑張ってるのは(わか)ります。そうでなかったら、ギックリ腰になんてなりませんからね」


 ナッシュさんはベッドから起きて身体(からだ)をコキコキと動かし、ドヤり顔になる。


「だろぉ? 俺だって頑張ってんだから、そろそろギルドに復帰できるかな?」


「それはマークさんに聞かないと、ですね。だけど、簡単に復帰できるとは思えませんよねぇ… なにしろ、今までが今までですからねぇ…」


「エリカちゃ~ん…」


 泣くな、情けない。


「…ところでさ、アリアちゃんって言ったっけ? エルフで、エリカちゃんの弟子なんだって? 良かったら俺と付き合っ…」

「そのナンパ(ぐせ)を改めんかいっ!」

「お断りしますっ!」


 すぱぱぁああああああんっ!!!!


 私とアリアさんのダブル・ハリセンがナッシュさんの顔面に(さく)(れつ)し、ナッシュさんは失神したまま治療院の裏口に放り出されたのだった。

 相変わらずだな、この(くさ)れボケ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ