表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/237

第142話 自分の方向音痴を自覚してても、行動がダメなら罰は必要でしょ!

 ライザさんが治療院で暮らす事になり、とりあえずギルドでハンター登録する運びとなった。

 朝食を終えると、ミリアさんとモーリィさんがライトアーマーを身に付け始める。

 ライザさんは、(ひと)(あし)先に登録を済ませる為に1人でギルドに行くと言う。


「一緒に行かなくて大丈夫ですか? 昨日の話だと、かなり(ひど)(ほう)(こう)(おん)()みたいですけど…」


 ギルドは治療院の正面玄関を出れば見えている。

 さすがに迷う事はないだろうけど…


「すぐ近くだし、見えてるんだから大丈夫だよ♪」


 言ってライザさんは勝手口から外に出て…


「そっちじゃありません! 逆です、逆!」


 いきなり逆方向へ歩き出したのだ。

 勝手口から入ったのは昨日の事なのに、覚えてないんかい!

 想像を(はる)かに超えた(ひど)さの(ほう)(こう)(おん)()っぷりに、アリアさんの目が点になっていた。


「あ… こっちか… ちょっと間違えちゃった、えへへ♪ じゃ、行ってくるね♪」


「本当に大丈夫なんでしょうか…?」


 ライザさんを見送るアリアさんが、心配そうに私を見る。

 まぁ、200年近くも迷子だったドラゴン(ひと)だからなぁ…


「アリアさん、今からでも付いて行ってあげますか? アリアさんが心配してるのを見てたら、なんだか私も不安になってきましたし…」


「い… いえ、それはミリアさんとモーリィさんに頼みましょう。お2人共、もうすぐ準備を終えてギルドに行くんですから。私達には大勢(おおぜい)の患者さんが治療を待ってますし」


 それもそうか…

 そして私達は準備を終えて降りてきた2人にライザさんのフォローを頼み、治療院を開けて診療を開始したのだった。





 ─────────────────





「「ただいま~…」」


「ただいまっ♪」


 なんだか疲れた声のミリアさんとモーリィさん。

 キツい依頼でも受けたんだろうか?

 対照的なのが、元気いっぱいのライザさん。


「お帰りなさい♪ もうすぐ夕食が出来ますから、着替えて待ってて下さいね♪」


 私と一緒に夕食を作りながらアリアさんが声を掛けると、3人はそれぞれの部屋へ着替えに行く。


「…なんでしょう? ミリアさんとモーリィさん、かなり疲れた様子ですけど…」


 心配そうな表情で聞くアリアさん。

 だが、私の(のう)()に1つの考えが(よぎ)る。


「私、なんだか(イヤ)な予感が…」


(イヤ)な予感? ギルドで登録に失敗したとかですか?」


「いえ… ドラゴンのライザさんなら、ハンター登録は問題無いでしょうね。それについては心配してません。私の(イヤ)な予感ってのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です…」


 キョトンとするアリアさん。

 理解してくれ!

 ライザさんの方向(ほうこう)(おん)()がミリアさんやモーリィさんの()じゃないのは見ただろ!

 それも今朝!

 まぁ、ミリアさんとモーリィさんから話を聞けば、私の()()()()を理解してくれるだろう…


「お2人が一緒にギルドへ行ってくれたなら、何も問題は無いと思いますけどねぇ… そもそもギルドの職員だった(かた)(がた)ですし…」


 ギルドでの手続きとかの事はね…

 同時に出掛けたなら()いよ?

 でも、(じゃっ)(かん)ではあるもののタイムラグがあるじゃん。

 ライザさんが出掛け、ミリアさんとモーリィさんに説明して追って貰うまでのタイムラグが…

 その(わず)かな差でライザさんが迷ってたら…


「そ… それは考え過ぎだと思いますけど…!? だって、見えてるんですよ!? すぐそこ、治療院の50(メートル)先にギルドが()るんですよ!? 幼児でも迷いませんよ!?」


 普通ならね…

 だけど普通じゃないんだよ、ライザさんの方向(ほうこう)(おん)()は…

 まぁ、()()()()()()ってのは、私個人の感想なんだけど…

 だが、予感が的中すれば確定。

 そして着替えを終えた3人がリビングに降りてくる。


「あ~、お(なか)()いたな~♪ もう()(たく)できた~?」


「私も~… 今日はメチャクチャ疲れたわよ~…」


「私も… 早く食べたい… 疲れ過ぎた…」


 やたら元気なライザさんとは対照的に、グッタリしてるのがミリアさんとモーリィさん。


「お2人共、なんでそんなに疲れてるんですか?」


「私… 何となくですけど、その理由が(わか)った様な…」


 ミリアさんとモーリィさんは顔を見合わせて(うなず)き、やがて涙をダバダバ流しながら…


「ギルドに行ったらライザちゃんが()()にも居なくて、(まち)(じゅう)(さが)し回ってたのよ~!」


「やっと見付けてギルドに向かっても、ちょっと目を離した(すき)に居なくなるんだから~!」


 やっぱりかい…

 私はソファーに座るライザさんの前に立ち、ニッコリと(ほほ)()みながら…


「ライザさ~ん… これから外へ出掛ける時は、私達の誰かと()()()()()()()()()下さい♪ 絶対、()()()()()()()()()()で下さいね♪」


「エ… エリカちゃん… その笑顔、なんか(すっげ)え殺気を感じるんだけど… 気の()()かな…?」


 それを(まわ)りで見ている3人は、(あお)()めた顔でフルフルと首を振る。


「それ、エリカさんが本気で怒ってるんだと思いますよ…?」


「エリカちゃんって、普通に怒る時は普通に怒った表情なんだよねぇ…」


「だけど、本気で怒った時は()()か笑顔なのよ… ただ、物凄(ものすご)い殺気が(あふ)れてるのよねぇ…」


 完全に血の気が引いた顔をする3人を見て、ライザさんも(あお)()め始める。


「えぇと… ボクはどうなるのかな…?」


 ひきつった表情を浮かべるライザさんの目の前に、私は異空間収納からハリセンを取り出し突き付ける。


「口で言っても忘れちゃいそうなんで、身体(からだ)で覚えて貰いましょうかね?」


「ちょっ… またその変なのでボクを張り飛ばすっての!?」


 ライザさんは(あわ)てて(あと)退(ずさ)ろうとするが、ソファーの背(もた)れが邪魔をする。


「変なのじゃありません♪ 大阪名物、ハリセン・チョップです♪」


「いや、その()()()()()()()()ってのが何だか(わか)らないんだけど! いや、それより張り飛ばすのは勘弁(かんべん)して欲しいんだけど!」


 私はハリセンで手をペシパシ軽く(たた)きながら…


「安心して下さい♪ このハリセンは、前に使ったハリセンとは別のモノですから♪」


 それを聞いたミリアさんが、首を(かし)げながら聞いてくる。


「別のモノって… じゃあ前に使ってたナッシュ用の? でも、あれってミラーナさん用のより()(りょく)が弱かったんじゃ…?」


 ()(りょく)が弱いと聞いて、表情が明るくなるライザさん。

 私はニッコリとミリアさんに笑い掛け…


「ナッシュさん用のじゃありませんよ? これはライザさん用に制作した新しいバージョンです♡」


 ミリアさんは無言で(あと)退(ずさ)りながら聞いてくる。


「…て事は、ミラーナさん用に(くら)べて…」


()(りょく)は10倍に高めてあります♡」


「そんなモンでボクを(はた)くつもりなのぉおおおおおおおっ!? (ほう)(こう)(おん)()なのは()(かく)してんだから許してよぉおおおおおっ!」


 泣きながら抗議し、逃げるライザさん。


「自分の(ほう)(こう)(おん)()()(かく)してるなら、()(かく)を持った行動しろぉっ! これぐらいしなきゃ(おぼ)えないだろが、アンタはぁああああああっ!!!!」


 私は逃げるライザさんに静止魔法を掛ける。

 ライザさんはピクリとも動けなくなり、近付く私を恐怖に(おび)えた目で見つめ…

 最新型のハリセンでブッ飛ばされたライザさんは、壁に身体(からだ)の半分以上をめり込ませて失神したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ