第137話 大切な事は、言い忘れない様にしましょう♪
ユニークが延べ25000人を超えました♪
読んで下さってる皆さんに感謝、感謝です♪
「なんか最近、ハンターの人達が少ない様な気がしませんか?」
「そうですねぇ… 少しですが減ってると言うか、一時的に見掛けなくなる人が居ますね」
久し振りにギルドで昼食を食べようと、私とアリアさんは歩きながらの会話。
8月も半ばを過ぎ、まだまだ暑さは厳しい。
それを差し引いても治療院やギルドの在る中央広場は、最近なんだか人出が少なく感じるのだ。
からん、から~ん♪
と、ドアを開けてギルドの中へ入り、私達は真っ直ぐに食堂へと向かう。
なんか、ギルドの中も人出が少ない様な…
「よぉっ、エリカちゃんにアリアちゃん。久し振りだな。今日はギルドで昼メシかい?」
昼休憩なのか、食事中のマークさんが気軽に話し掛けて来る。
マークさんと会うのも久し振りだなぁ。
「えぇ、たまにはギルドに顔を出そうと思いまして… それにしても、ハンターが少なくありませんか?」
どう見ても普段の3分の1近くは減っている気がする。
「あぁ… なんか最近、ロザミアで海水浴ってのが流行ってるらしくてな… さすがに全員が一度に行くのはマズいだろうからってんで、街の連中とハンターが徒党を組んで漁村まで泊まり掛けで出掛けてやがるんだよ」
はぁっ?
ロザミアで海水浴が流行ってる!?
私は知らんぞっ!?
海水浴の事は私達──と、王妃様達──しか知らない筈だろ!?
いや、ずっと内緒にしようなんて思っちゃいないよ?
異世界の海が海水浴を楽しむのに安全かどうか、確かめてからでないとダメだと思ったからであって…
決して私達だけが楽しもうなんて思ってないからね!
王妃様達は勿論だけど王宮の関係者も知ってるし、護衛の兄ちゃん達から話が漏れるだろうから永久に内緒になんて無理な話だし…
だから、いずれはイルモア王国中に海水浴が知れ渡るのは時間の問題であって、内緒にする意味が無いのは自明の理だってのは最初から判ってる事だから…
ぬあぁああああああっ!!!!
だからって、なんで急にロザミアで海水浴が流行るんだぁああああああっ!!!!
「エ… エリカさん!? 何を急に悶えてるんですか!?」
「あぁ、アリアちゃん… 前にも似た様な感じで悶えてた事があったから心配いらないと思うよ? 多分、頭の中で色んな考えが交錯してるんだろう。エリカちゃん、ちょっと考え過ぎるクセがあるみたいなんだよな。ミラーナさんと違って…」
すぱぁああああああんっ!!!!
がごんっ!
聞き慣れたハリセンの音と共に、テーブルに頭を打ち付けるマークさん。
「エリカちゃんは考え過ぎるクセがある… それは解るとして… アタシと違ってってのは、ど~ゆ~意味かな~?」
いつの間にかマークさんの背後に立っているミラーナさん。
相変わらず気配を消して現れるんだな。
「ミ… ミラーナさん… いつの間に…?」
ハリセンが炸裂した後頭部を擦りながら聞くマークさん。
「エリカちゃんが悶えてる辺りからかな? ちょっと笑いを堪えるのに苦労したけど…」
放っとけ!
てか、笑いを堪えてまで気配を消してんぢゃ無えっ!
てか、もしかして…
「ミラーナさん…? もしかして海水浴の事、誰かに話しました?」
「ん? あぁ、普段アーマーで隠れてるトコが日焼けしてたから、理由を聞かれたんで答えたんだけど…」
あぁああああああっ!!!!
やっぱりぃいいいいいいっ!!!!
「ミラーナさん! 確か8月半ば頃からクラゲが大量に発生するって言ってましたよね!? それは言いましたか!?」
「あ…………」
ミラーナさんのアホぉおおおおっ!!!!
肝心な事を言わんでどうするんだぁああああああっ!!!!
「ミラーナさん! 今すぐ馬の用意をっ! 私達が遊んだ浜辺まで全速力で駆けて下さいっ!」
「私も行きますっ! どう治療したら良いか、教えて下さいっ!」
アリアさん、逞しくなったなぁ…
て、感心してる場合じゃないっ!
私達はミラーナさんを急かせ、大急ぎで海水浴をした浜辺へと向かったのだった。
────────────────
死屍累々…
いや、死んではいないけど、砂浜にはクラゲに刺された大勢の人が苦しんでいた。
症状としては痛みのみの様で、呼吸困難や肺水腫等の重篤な人は居なかった。
不幸中の幸いだな。
私とアリアさんは患者の身体の付着物を魔法で除去し、更に解毒の魔法を掛けて治療を施していく。
2時間程で全員の治療を終え、クタクタになったアリアさんは砂浜に座り込む。
「さすがに… 疲れました…」
「重症の人が居なかったのが良かったですけど、これだけ大勢の人を一気に治療したのは初めてでしたっけ? お疲れ様でしたね」
それはそうと、肝心な事を言い忘れて多くの被害を出す切っ掛けになったミラーナさんは…
こっそり馬でロザミアに逃げ帰ろうとしてやがる。
…そうはさせるかって~の。
ぼぅんっ!
突然、ミラーナさんの前に炎が吹き上がる。
「どわぁああああああっ!!!! 何だ何だぁああああああっ!?」
「ミラーナさぁ~ん… 何を逃げ帰ろうとしてるんですかぁ~?」
へたり込むミラーナさんの背後に立つ私。
その後ろにはクラゲの被害に遇った大勢の人達。
「いや… その~… アタシは日焼けの事を聞かれて海水浴の事を言っただけで… クラゲの事は隠してたワケじゃなくて、忘れてただけであって~…」
「その〝忘れてた〟ってのが原因でしょうがぁあああああああああああっ!!!!」
ずどぱぁああああああんっ!!!!
私の渾身のハリセン・チョップで砂浜にめり込むミラーナさん。
だが、これだけで犠牲になった人達が納得するワケでもなかった。
そこで私は〝対ミラーナ仕様ハリセン特別改良版(従来の物より破壊力を2倍にアップ)〟で被害者1人1人が一発ずつミラーナさんを叩く事を提案。
全員が納得し、ミラーナさんは泣く泣く承諾した。
それは日が暮れるまで続いたのだった。
更にミラーナさんと馬をロープで繋ぎ、ロザミアまで引き摺って帰る事も提案したのだが…
「それは… やり過ぎだと思いますけど…」
「だよね? だよねぇ!? アタシだって、わざと言わなかったワケじゃないんだからさぁ! せめて歩いて帰れって程度で良いんじゃないかと思うんだけど~… ダメ?」
アリアさんの意見に助けを求めるミラーナさんに、全員が考え込む。
さすがに馬で引き摺るのは非・人道的だろうなぁ…
結局、ミラーナさんの懇願は受け入れられ、ロザミアまで3日も掛かって帰ってきたのだった。
更に疲れを癒す間も無く、9月から始まる社交パーティー出席の為、ロザミアをヘロヘロになって出発して行った。
自業自得とは言え、哀れ…