第136話 見ぃ~たぁ~なぁ~…!?
王妃様達の合流は予想外というか、嫌な予感が当たったというか…
まぁ、それはもう仕方無いと諦めて、私は異空間収納から大量の荷物を取り出した。
まずはシートを敷いたり、木工屋で作って貰った折り畳み式の椅子やテーブルを用意する。
日陰を作れる様に、簡易テントも組み立てる。
チラッと王妃様達の方を見ると…
やたら豪奢なテーブルに椅子…
テントなんかは学校の講堂に在る、緞帳みたいな生地(?)なんですけど…
しかも、王家の巨大な紋章が金糸で刺繍されてるし…
とてもじゃないが、海水浴場に持って来る様なモンぢゃねぇだろ…
なんか、こっちが凄っげえ貧相に見えるんですけど…
「は… 母上!? 派手過ぎます! それに目立ち過ぎます! 野盗だって居るかも知れないのに!」
「あら、そんなのミラーナだったら簡単に倒せるでしょう? ミリアちゃんやモーリィちゃんだって居るし、護衛だって居るんだから大丈夫でしょう? ウフフフフッ♡」
王妃様の言葉にウンウンと頷く子女の皆さん。
腕を認められてるんだろうが、あまりの緊張感の無さに力無く項垂れるミラーナさん。
「エリカちゃん、アタシ達の剣って…」
「一応、万が一を考えて異空間収納に仕舞ってますけど… 出しておいた方が良さそうですかね?」
「頼む…」
言われて私は3人の剣を目立たない場所に置いたのだった。
まぁ、王家の紋章が入ったテントを見て襲ってくるマヌケな野盗は居ないだろうけど…
なんだかんだで私達──王妃様達を含む──は、楽しく浜辺で遊びまくったのだった。
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「あ~… 腹が減った~… そろそろ昼メシにしないか?」
「そうですね♪ それじゃBBQの用意をしますね♪」
すると、王妃様達の目が一斉にこちらを向く。
「ばーべきゅーとは何ですの!?」
「初めて聞く名前です!」
「どんな料理なんですか!?」
「エリカお姉ちゃん! それ、美味しいの!?」
「エリカね~たん、美味しいの?」
全員同時に聞くんぢゃねぇっ!
言えんけど…
とにかく私は異空間収納からBBQセットと大量の食材を取り出し、準備を始める。
魔法で作った木炭を使って火を起こし、炭全体に火が行き渡ったら網の上に肉や野菜を並べていく。
う~ん、この香ばしい匂いが堪らない♡
「これがBBQかぁ… 初めてだけど、旨そうだな…」
私は全員──護衛の人達を含む──に紙皿──これも魔法で作った──とフォークを渡し、次々と肉や野菜を焼いていく。
ちなみに肉も野菜も、あらかじめ自家製のタレに漬け込んで味付けしてあるので、そのまま食べて美味しいのだ。
「旨いっ!」
「美味しい~っ!」
「最高ですわっ!」
「これがばーべきゅーなんですのねっ!?」
海水浴場というか、青空の下で食べるって事も相まって、全員から好評を頂いた♪
朝食抜きの私は、時々つまみ食いしてました。
仕方無いだろ…
朝食を食べる前にハリセンでドツかれて失神し、今まで何も食べてないんだからな!
BBQは好評の内に終了し、皆が食休みしている隙に牛脂を使ったフライドポテトと唐揚げを作っておく。
ちょっとしなオヤツと言うか、海水浴の間の軽食ってヤツだな♡
この世界では海で遊ぶなんて習慣は無いらしく、誰もが海水浴を満喫していた。
護衛の人達は海水浴を楽しめない分、年代の近いミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんの水着姿をチラチラ見てるみたいだけど…
うん、気持ちは解るぞ。
ミラーナさんは黄色、ミリアさんは赤、モーリィさんは青のビキニをそれぞれ着ている♡
3人共、スタイルだけは良いからなぁ。
「エリカちゃ~ん…」
「スタイルだけって、ど~ゆ~意味かな~?」
「まだ思った事を口に出すクセ、治ってないみたいだねぇ…」
口に出てましたか、そうですか…
それはそうと、3人同時のハリセン攻撃は止めて貰えますかね?
砂浜だから全身が埋まっちゃうんですよ…
「うぇええ~… くひにしゅながひゃいっひゃっひゃりゃないれふか~…」
私は魔法で水を出して口を濯ぐ。
「エリカお姉ちゃん、大丈夫?」
フェルナンド様が苦笑いしながら聞いてくる。
「まだ少し口の中がジャリジャリしてますけど、もう2~3回濯げば大丈夫ですよ。あ~、酷い目に遇った…」
「エリカね~たん♡」
と、不意にローランド様が私の水着に手を掛け…
ずるぅっ!
と、ビキニのパンツをズリ落とした!
「にゃぁああああああっ!!!!」
なんて事しやがんだ、このガキゃぁああああああっ!!!!
「ろろろ、ローランド殿下っ! なんて事するんですかぁああああああっ!!!!」
素早くパンツを履き、ローランド様に叫ぶが…
あのガキゃあ、さっさと王妃様のトコまで走り去ってやがったよ…
「エリカお姉ちゃん、そんなに恥ずかしがらなくても… 僕、何度もエリカお姉ちゃんの裸見てるし…」
「そりゃフェルナンド殿下は何度も見てるでしょうけど、護衛の人達にも見られたじゃないですかっ!」
「あ…………」
私が指差す方向をフェルナンド様が見ると、護衛の兄ちゃん達がサッと目を逸らしていた。
テメー等ぁああああ………
私は護衛の兄ちゃん達の元へ歩を進める。
「見ぃ~たぁ~なぁ~…?」
ギクッと全身を強張らせ、硬直する兄ちゃん達。
「い… いや、エリカ様… 我々とエリカ様とは、それなりに距離が…」
「そ… そうです! ですので、エリカ様がツルツル… あっ…」
「おまっ… それを言っちゃ、モロに見えてたってのが… あっ…」
語るに落ちたな…
「しっかり見てんじゃねぇかぁああああああっ!!!!」
そして砂浜の一画は一時的に炎に包まれ、阿鼻叫喚の地獄絵図となったのだった。
勿論、王妃様達やミラーナさん達には被害は出てませんよ?
事後の治療だって、しっかり行いましたよ?
いや、そりゃもう思いっ切りドン引きされましたけどね…
かくして海水浴は無事(?)に終了し、私達はロザミアへ、王妃様達は王都への帰路に就いたのだった。
王都で私の変な噂が立たないだろうな…