第131話 海水浴を提案しましたが、なんか納得できない事になりそうです…
夏も近付く八十八夜…
じゃなくて、夏も近付く5月終盤の休診日。
言ってしまえば5月25日。
だから何だと言わないで下さい。
今年の夏こそはと考えている事があるんだよ。
それをミラーナさん達に相談しようと思ったのだ。
それが何かと言えば、海水浴だ!
考えてみれば、異世界に転生してから1度も泳いでない。
正確に言えば、前世で医科大学に入ってから。
だから、もう10年近く泳いでないのだ。
ロザミアの近くには意外と大きな川も流れてるし、海だって馬を駆けさせれば1時間弱の距離にノルンと言う漁村も在る。
さすがに漁村の近くで泳ぐのは気が引けると言うか、漁師さん達に迷惑だろうから離れた場所で楽しむ事になるだろうけど…
それでも良いんだよ!
とにかく私は泳ぎたいんだ!
それに、他にも楽しめる事があるしな♪
豊満ってワケじゃないが、引き締まった身体のミラーナさんの水着姿♡
勿論、ミリアさんやモーリィさんにも期待だな♡
「…てなワケで、今年の夏は皆で海に行きませんか? 夏と言えば海! 海と言えば海水浴でしょう!」
私の提案に、何故か乗り気でない4人。
何か変な事でも言ったかな?
「海水浴って、海に入るって事かい? それって、何の為に?」
海水浴を知らない?
この世界じゃ、海水浴の習慣は無いのか?
「海に入って泳いだり、砂浜で日光浴したりして楽しむんですよ。…って、もしかして皆さん泳げないとか…?」
私から視線を逸らすミラーナさん達。
どうやら図星だった様で、誰も泳げないらしい。
目は泳いでるけどな…
「ハンターが泳げないって… 獲物が川に逃げる事もあるでしょう? そんな時、どうするんですか?」
「「「諦める…」」」
をいっ!
「だってさぁ… 川に逃げた獲物を魔法とかで仕留めても流れてくし…」
「泳げても、流れる獲物を引き揚げるのが大変だし…」
「濡れた服やアーマーを乾かすのも面倒だしねぇ…」
そんな事ばかり言ってたら何も出来なくなるだろ…
「海水浴はハンティングと違って楽しむ為に行くんですから。それに、泳げなくても波打ち際で遊んだりするだけでも楽しいですよ♪」
「でもなぁ…」
「ですよねぇ…」
「だよねぇ…」
まだグズグズ言うミラーナさん達。
私は最高の笑顔で3人を見つめて懇願する。
「お願いですから一緒に行きましょう♡」
すると3人は一気に顔を青褪めさせ…
「「「ハイッ!」」」
ど~ゆ~意味だ、テメー等…
「と… とにかく、私は1人で行こうにも馬に乗れませんから。ところでアリアさんは馬には?」
「私も乗れませんね… 基本、エルフは森の中の集落で暮らしてますから、そもそも馬に乗る習慣が無いですし…」
あぁ、木々が邪魔だから歩いたり走ったりする方が早いのかな?
仮に乗れても、馬を走らせるのは難しいだろうな。
「一応、全員参加って事で良いですね? 付き合ってくれるお礼として、私が皆さんに水着を買っちゃいます♡ 好きなのを選んで下さいね♡」
一同は顔を見合せ相談を始める。
「やっぱ、ビキニだよな♪ 色は… 白一択かな?」
「ですよねぇ♡ 私もビキニにしようと思ってたんですよ♡ 色も、白がシンプルで良いかなって♡」
「私も白のビキニかなぁ? なんか被っちゃうけど、仲間って感じで良いじゃん♡」
「私は白のワンピースで良いですね… なんか、露出が多いのって恥ずかしくて…」
なんか盛り上がってるけど、その選択には問題があるぞ?
「確かに白はシンプルで良いですけど… 水着が濡れると透けますよねぇ… ミラーナさん、ミリアさん、アリアさんは金髪だから目立たないかも知れませんけど、モーリィさんは茶髪だからハッキリ分かっちゃうかも…」
4人は再び顔を見合せ…
「白を着るなら剃れって事か…?」
「それなら色の付いた水着にした方が…」
「白って透けるの? だったら私、茶髪だから思いっ切り目立つじゃん!」
「私… この際だから黒でも良いんじゃないかって気がしてきました…」
皆、生えてるだけに大変だなぁ…
私みたいにツルツルだったら、何も気にしなくて良いのにな♪
…って、自分で言ってて虚しい気分になるのは何故だろう?
「で、エリカちゃんはどうするんだ? アタシとしては白のビキニを着て欲しいんだけどなぁ♪」
「う~ん… エリカちゃんならワンピースの方が良くないですか?」
「いやいや、エリカちゃんの体型ならトップス無しでも良くないかなぁ?」
ちょっと待て、コラ。
それは聞き捨てならないぞ、モーリィさん…
「あぁ、それは確かに… エリカちゃん、絶壁だし…」
すぱぱぁあああああああんっ!!!!
「絶壁言うなぁあああああああっ!!!!」
私のハリセン・チョップ2連発がミラーナさんとモーリィさんを沈黙させる。
「王都でもミラーナさんに言いましたけど、少しは在るんですからねっ! そりゃ、ペッタンコに近いと言えば否定できないですけど、全く無いワケでもありませんからっ!」
「エリカちゃん…」
「エリカさん…」
ミリアさんとアリアさんが私の肩をポンポンと叩きつつ、ミラーナさんとモーリィさんを指差す。
あ…
2人共、気絶してるよ…
ちょっと力が入り過ぎたかな?
いや、仕方無いだろ!
元が男とは言え、今は女性──女の子──なんだから胸が絶壁と言われるのは我慢ならんっ!
そもそも絶壁と言われる程、胸が無いワケでもないんだからっ!
そりゃ、在るのかと聞かれたら答えに窮するけど…
放っといてくれ!
元が男なんだから、在り過ぎても違和感バリバリなんだよ!
ちょっと膨らんでる程度が限界なんだよ!
納得できないまま、私達は服飾店に出向いて全員分の水着を採寸・注文したのだった。
海水浴が楽しみな様な、スタイルを考えると虚しい様な、なんかムカつく様な…
いや、キレてないですよ?