第129話 考えてる事を口に出すクセは、治さないとダメですね…
いよいよ今日は餃子パーティー(仮)開催日♡
ミラーナさん達3人はギルドの依頼で留守なので、私とアリアさんだけで準備する。
…その方が安心だと思うのは私だけでしょうか?
それはともかく、まずは木の棒を魔法で加工して麺棒を作成する。
皮の作成には小麦粉に水と塩を加え、ひたすら練る。
力が無いから魔法で筋力と持久力をアップ。
耳たぶぐらいの固さに出来上がったら、小さく千切って麺棒で伸ばす。
焼き餃子用と揚げ餃子用には薄く、水餃子用と蒸し餃子用には多少大きめに千切って少し厚く伸ばす。
これで皮は完成。
餡は豚挽き肉に細かく刻んだキャベツ、少量のニンニクを練り込む。
それをスプーンで一抄いして皮に乗せ、更に牛脂を一欠片入れ、ひたすら包んでいく。
付けダレには醤油にレモンの絞り汁を加えて風味アップ♪
残念ながら、辣油は唐辛子が無いので諦めた。
胡麻油は在ったのにな…
辣油を家庭で手軽に作れ、失敗が少ない方法としては七味唐辛子を胡麻油に入れてゆっくり加熱。
ある程度の温度になったら火を止め、余熱でゆっくり辛味を抽出させる方法がある。
唐辛子は種を入れると辛味が強くなり、また加熱しすぎると苦味が出るので注意する事だ。
だが、この世界には唐辛子が無いので、当然ながら七味唐辛子も無い。
無い無い尽くしだなぁ…
いや、唐辛子も探せば見付かるかも知れないが、今ロザミアに無ければ仕方無い。
とにかく準備は完了。
各2個ずつ調理し、アリアさんと試食する。
「ん~っ♡ 凄く美味しいです♡ 焼き餃子と揚げ餃子は皮がパリッとしていて中はジューシー♡ 水餃子と蒸し餃子はモッチリした皮と餡のジューシーさがマッチしてます♡ どの餃子も、噛んだら溶けた牛脂が溢れて何とも言えません♡ ニンニクの風味も最高です♡ レモン風味の醤油が付けダレなのも味を引き締めてますね♡」
テレビ番組の食レポかよ…
アリアさん、意外な才能を持ってたんだな…
自分で言うのも何だが、結構良い出来だと思う。
とにかく、初めて餃子を食べたアリアさんが絶賛してくれるのは嬉しいな♪
こりゃ、ミラーナさん達の反応が楽しみだ♡
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「ただいま~。あ~、腹減った~…」
「私も~… お腹ペコペコですよぉ~…」
「エリカちゃん、何か新しい料理作ったんだって? 早く食べた~い♪」
口々に言いながらダイニングルームに入ってくる3人。
なんだかエサを強請るペットに見えてきたのは私だけだろうか?
「ハイハイ、すぐに用意しますから座って待ってて下さいね~♪」
言いつつ、まずは定番(?)の焼き餃子から提供する。
最近は全員が箸の使い方にも慣れてきた様なので、これなら餃子をフォークでブッ刺す事はないだろう。
フォークでブッ刺されたら、せっかくの肉汁が食べる前に溢れて意味が無くなるからなぁ…
「これは…?」
「初めて見る食べ物ですね…? それと、これは醤油? ちょっと違う気がするけど…」
「でも、なんだか良い香り… もしかして、レモン使ってんの?」
試食して美味しさを知ってるアリアさんは、3人の様子を少しニヤけた表情で眺めている。
気持ちは解る気がする。
大皿に焼き餃子を盛り付け、テーブルの中央に置く。
1人1つの小皿にはレモン果汁入りの醤油。
「まずは第一段、焼き餃子です♡ フォークじゃなく、箸で召し上がって下さいね♡ その方が絶対に美味しいですから♡」
箸を使う意味が解らず、首を傾げる3人。
だが、一口食べると…
「旨いっ!」
「「美味しいぃいいいいいっ♪」」
3人は次々と頬張り、大皿に盛られた焼き餃子は僅か数分で無くなった。
「箸で食べる意味が解ったよ… フォークで刺したら、せっかくの肉汁が流れ出ちゃって勿体無いよなぁ…♡」
「ホントですねぇ… 噛んだ瞬間に溢れる肉汁が口いっぱいに広がって最高だわぁ♡」
「レモン風味の醤油も、サッパリしてて… 何とも言えないよねぇ…♡」
続いて水餃子、揚げ餃子、蒸し餃子と、大皿に盛って出した各種餃子は、出した瞬間から3人の口に次々と消えていった。
勿論、予想はしてました。
予想では争奪戦が起きるんじゃないかとも思ってたんだけど…
なので私とアリアさんは、3人に提供する前にキッチンでそこそこ食べてからテーブルに運んでいたのだった。
仕方無いよ。
そうしないと私とアリアさんの食べる分が無くなると思ったからな。
予想に反して、争奪戦が起こらなかったのは意外だったが…
そして、僅か30分程で全ての餃子が無くなったのだった。
「旨かった~♪ それに、何だか疲れも取れた気がするよ♪」
ニンニクの強壮剤としての効果だろうな。
とにかく喜んでくれて良かった♪
作った甲斐があるってモンだ♪
…料理好きな人って、この気分を味わうのが好きなのかもなぁ…
知らんけど…
まぁ、餃子が出来たんだから、今度は焼売にも挑戦してみようかな?
中華料理なら炒飯も捨て難いし、酢豚も食べたいなぁ♪
八宝菜は言うに及ばず、青椒肉絲も外せない♪
各種天ぷら、お好み焼き、たこ焼き、すき焼き、ラーメン、丼物etc……
異世界に来てから食べてないし、見た事が無いんだよね。
これは是非、再現しなくては!
闘志を燃やす私を、ミラーナさん達は何故か冷めた目で見ている。
「え~と… もしかして、また…?」
「「「声に出てた…」」」
声をハモらせ、頷く3人。
「エリカちゃんって、思ってたより食いしん坊なんだな…」
「いやいや、戦場で凄い量のフライドポテトや唐揚げを1人で食べてましたよね?」
「エリカちゃんの小さい身体の何処に消えていったのか、不思議だったよねぇ…」
3人の話を聞いたアリアさんは、私をジッと見詰め…
「その果てしない食欲が、美味しい料理を考え出す原動力なんでしょうか? エリカさん、やっぱり凄いです♡」
なんで恍惚とするんだ、アンタは!?
それはともかく、思わず声に出してしまった料理の説明を全員から求められ、私は徹夜で話し続けた結果…
翌日は治療院を臨時で休診日にする羽目になったのだった…