第124話 ルグドワルド侯爵、アンタの奥さんは〝酒の申し子〟ですか?
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翌朝…
ミラーナさんとジェニファー様以外の全員が、気まずい雰囲気で朝食のテーブルに着いていた。
昨夜の宴会で、酒豪の2人以外は完全に酔い潰れてしまった。
朝になって気付いた私は思った。
やってしまった…
グランツ様に年齢を聞かれて答え、なんか飲みたくなって一気にブランデーを一瓶空けたトコまではハッキリ覚えている。
その後、給仕で控えていた侍女やメイド達にもお酒を(無理矢理)飲ませた辺りは記憶が朧気で…
気付いたら朝。
何をやらかしたんだ、私は………
「あ~、エリカ殿… 気に病む事はないぞ? 皆に酒を強引に飲ませた事に関しては、女性に年齢を聞いたグランツにも非はあろう」
ルグドワルド侯爵に言われて萎縮するグランツ様。
「グランツも勉強になったであろうし、今後の糧とするが良い」
「はい、父上… エリカちゃん… いや、エリカ殿、迂闊にもレディーに年齢を尋ねた事、ご容赦願います」
私に向かって深々と頭を下げるグランツ様。
そんな事、しなくて良いから!
平民に対して貴族──それも侯爵家の嫡男──が簡単に頭を下げるんじゃないっ!
「いやいやいやいやっ! お気にならさずに! それより私の方こそ御無礼を!」
私は椅子から立ち上がり、平身低頭して謝る。
「エリカ殿、貴殿こそ気にする事はないぞ? あの後のグランツときたら… 本人は覚えておらぬだろうが、笑わせてくれおったわw その所為で、私も酔いが回ってしまったのだがなw」
へっ?
何かあったのか?
確かにグランツ様も覚えていない様で、キョトンとしているが…
「あの、父上…? いったい僕は何をしたのでしょうか…?」
恐る恐る聞くグランツ様。
「クックックッ… 実はな… お前は酒に酔った勢いで、エリカ殿に結婚を申し込んだのだよw」
マジか…
いや、フェルナンド殿下にも求婚されたけどね…
グランツ様にも結婚を申し込まれてたのか、私は…
「………………………!」
驚愕の事実を暴露され、真っ赤になって固まるグランツ様。
「それにしても、お前までもエリカ殿に惚れるとはな… いや、エリカ殿なら義理の娘になるのも悪くないがな♪」
『♪』ぢゃねぇよ、オッサン…
「しかしまぁ、エリカ殿が不老不死である以上は叶わぬ夢であるな。仮にエリカ殿が不老不死でなくとも、フェルナンド殿下に勝てるとは思えんがな」
「えっ? フェルナンド殿下… ですか?」
あぁ…
私が不老不死でなく、中身も女性だったとしたら…
私の意思を別とすれば、次期国王vs侯爵家の嫡男では分が悪いわな…
「実はフェルナンド殿下もエリカ殿に求婚していたのだ。なかなかの執着振りで、正妻がダメなら側室にとも仰っておった。次期国王に勝てるだけの自信はあるのかな?」
「さすがに… それは無理でしょう…」
うんうん、下手したら殿下の心証を悪くする可能性もあるからな。
自分の惚れた女性を寝取った家臣ってな感じで…
いやいや、私にその気は無いからね!
「いずれにせよ、私が不老不死である以上、誰とも結婚する気はありませんよ… そもそも結婚なんかより、私は1人でも多くの怪我や病気に苦しむ人を治してあげるのが使命だと思ってますから」
「さすがであるな、エリカ殿。貴殿の崇高な想い、まさに聖女と呼ぶに相応しい」
聖女扱いは止めてくれ、マインバーグ伯爵っ!
私は魔法医──医者──として当然の事をしてるだけなんだ!
他の連中も!
私達を無視して食事をパクつくんじゃないっ!
少しはフォローするなり突っ込むなりしろ!
いや、突っ込みは要らんけど!
「エ… エリカ殿… 朝食の後… いや… 出立の前に、例の酒量を減らす魔法をお願いする… 妻の健康維持には必要であろうからな…」
ルグドワルド侯爵…
その必死に笑いを堪えながら話すのは止めて貰えませんかね…?
顔の筋肉がひきつってますよ…?
ともあれ私達は朝食を終え、出立の支度──と言っても、ドレスから昨日の服装に変えるだけだが──を調える。
貴族様の馬車ならともかく、幌馬車にドレスで乗るのを女性陣が嫌がったのだ。
まぁ、椅子も無いから汚れるだろうし、シワになったりするだろうからなぁ…
…それにしても、私のドレスはどうなってんだろ?
一晩中床で寝ていたにも拘わらず、全く汚れてないしシワも無い。
さすがは金貨5000枚のドレスとでも言うべきだろうか…?
考えても仕方無いけどな。
そして…
「ではジェニファー様、酒量を減らす魔法を掛けさせて頂きますね」
言って私はジェニファー様の身体に手を翳す。
柔らかい光が夫人の全身を包み、やがて身体の中に入る様に消える。
「これで大丈夫です♪ 毎食グラス一杯で程好く酔えますから♪」
「ちなみに二杯飲むと、どうなりますの?」
「昨夜も申し上げました様に、寝コケちゃいます♪」
ジェニファー様は少し考え…
「それじゃあ、テーブルを片付けてから飲まないと… それに、立ったまま飲むのは危険ですわね…」
気を付けるトコが違うと思うんだが…
てか、二杯飲む事を前提で考えるなよ…
「あっ、寝る前に二杯目を飲んだら良いのかしら? そうすれば気持ち良く眠れそうですわね♡」
もう好きにしてくれ…
マインバーグ伯爵夫人のミランダ様より呑兵衛なんじゃないか?
いや、ミラーナさんも呑兵衛だけど…
すぱぁああああああんっ!!!!
ばごんっ!
「あ痛ぁっ!」
ミラーナさんのハリセン攻撃を後頭部に食らい、私は顔面を馬車の荷台に直撃する。
「エリカ殿… また口に出ておったぞ…」
「つい最近、似た様な事があったな…」
ありましたね…
あの時も荷台の床に顔面をぶつけましたよ…
「さて、行くか。妹達もエリカちゃんを待ち兼ねてるだろうしな♪」
言ってミラーナさんは私を荷台に放り投げ…
ぼてっ
って、人を荷物扱いすなっ!
ダメージで力の入らない私は、昼食に立ち寄った宿場町まで荷台の隅で倒れていた。
後で聞いた話では、潰れたヒキガエルみたいな格好だったらしい…
がっでむ!