表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/237

第108話 平気なモンは平気なんです!

ユニークが15000人を超えました。

読んで下さってる皆さんに感謝です♪

 (こぶし)(だい)から人の頭程度の大きさの石が大量に(ほう)り出され、更に細身の丸太と言える太さの矢が10本飛んで行く。

 各投石機部隊と()(ほう)部隊の隊員達は次の発射準備に取り掛かり、部隊長は着弾の様子を望遠鏡で確認する。

 どちらも()()く命中した様で、チュリジナム皇国軍は大混乱。

 いや、()()(きょう)(かん)の地獄と化していた。

 石が腕や(あし)を直撃した者は、その部分が()()れ飛んでいた。

 頭に直撃した者は即死しただけ良かったと言える。

 身体(からだ)に直撃を食らった者は内臓を()()らし、(もん)(ぜつ)しながら死んでいった。

 細身丸太の矢を食らった者は、アーマーを着込んでいたにも(かか)わらず、身体(からだ)(つらぬ)かれていた。

 (たて)に並んでいた者達は串刺し団子状態になり、口から血の泡を吐きつつ(もん)(ぜつ)しながら死んでいった。

 戦場を見慣れている筈の者達でさえ、目を(そむ)ける()(さん)な光景だった。


「こりゃ… 近くに居なくて良かったな… 望遠鏡で見るだけでも()()きそうになるよ…」


 ミラーナが眉をしかめて言うと、司令官達は苦笑いするしかなかった。


「まぁ、()いや。2発目の準備が出来た部隊から発射させてくれ。多分、今日はそれで終わりだろう。アタシ達はエリカちゃんに報告しに行くよ。(あと)(まか)せた」


 言いつつミラーナはミリアとモーリィを連れて治療所へ向かった。





 ────────────────





「う~ん……………… これで良かったのかなぁ…………………?」


 私は(なや)んでいる。

 1発目を()ち出す号令(ごうれい)(あと)、合図用の旗を近くに居たマインバーグ伯爵に渡してサッサと治療所に引き上げていた。

 しばらくしてから報告に来た伝令兵の話を聞き、今日の戦闘の勝利を確信した上で(なや)んでいるのだ。


「勝ちは勝ち… それは()いんだけど、こんなに圧倒的で良かったのかな…?」


 私が()(ねん)しているのは味方(イルモア)側ではなく、(チュリジナム)側の事である。

 多分ではあるが、(チュリジナム)側は(あと)の無い戦いを(いど)んでいる(はず)

 それが剣を(まじ)える事も無く、いきなり飛んで来た大量の石や細身の丸太と言える太さの矢に多くの兵が倒されたのだ。

 そして間も無く第2撃が(はな)たれ、更に被害が増す事になる。

 対する味方(イルモア)側は、今の時点で全くの無傷。

 敵は(いっ)(たん)退()き、今日の戦闘はこれで終わりだろう。

 そして、一体(いったい)何がどうなっているのだと言う話になり、少なくとも数日は(にら)み合いが続く可能性が高い。

 長期戦になれば防衛側(我々)が有利。

 回り込んで敵の補給線を()てば、敵は()えや(かわ)きとも戦わなければならなくなる。


「そんな勝ち方や負け方で敵や味方が納得するのかなぁ………?」


 そんな事を考えていると…


「何を難しい顔してんだよ」


 ポンッと私の頭に手を置いてミラーナさんが話し掛けてくる。


「いや… ちょっと圧倒的過ぎたかな~って思っちゃって… で、戦場の様子はどうですか?」


 私の質問にミラーナさんは後頭部をポリポリと()きながら答える。


「エリカちゃんも想像してたと思うけど、当然ながら味方の被害は(かい)()。敵はグチャグチャって感じだね。予想を(はる)かに()えた(せん)()だよ。(すご)過ぎるな、あの新兵器は」


 言いつつミラーナさんは肩を(すく)め、後ろに居るミリアさんとモーリィさんは苦笑いしている。


「それでだ。今から新兵器の威力を確かめる為に戦場へ行くんだけど、エリカちゃんも一緒に行かないか?」


 ニヤッと笑うミラーナさん。

 はは~ん…

 ゲチョグロの戦場(あと)を私に見せて、反応を楽しむつもりだな?

 だが、その認識は私という人間を甘く見てると言わざるを得まい。

 これでも前世では医科大学を卒業しているのだ。

 死体の解剖でも最初から平気だった私を()めるなよ?

 いや、何の()(まん)にもならんけど…

 前世のクラスメートにも『お前には神経が無いのかよ!?』とか言われたけど…

 ()っといてくれ。

 平気なモンは平気なんだ。

 私は笑って(うなず)き、ミラーナさんの(あと)に付いて戦場(あと)に向かうのだった。





 ────────────────





 それは普通の人間なら直視するのはキツい状況だった。

 いや、キツいなんてモンじゃない。

 PTSDを発症しても不思議ではなかった。

 むしろ、発症するなと言う方が無理な状況だった。

 ()(さん)な戦場を見慣れている(はず)の将校達でさえ、目を(そむ)ける様な(せい)(さん)(きわ)まりない光景が広がっていた。

 投石機から(はな)たれた石の直撃を食らった者達は、もはや人間としての原型すら(とど)めていなかった。

 ()(ほう)の矢を食らった者達は、その矢に身体(からだ)(つらぬ)かれた(だん)(まつ)()の表情を浮かべて死んでいた。

 さすがのミラーナさんも眉をしかめている。

 ルグドワルド侯爵やマインバーグ伯爵、その他の貴族司令官達も同様だった。

 この様な戦場に慣れていないリンダさんのパーティーは、全員が我慢できずに胃の中の物を()いていた。

 ミリアさんとモーリィさんは、多少は慣れていた様なので離れた場所で()いていたけど…

 それほど(ひど)い状況の中、私だけは平気で死体の状態を(たし)かめている。


「フム… 死体の内臓を見ると、チュリジナム皇国軍の食料事情は良くない様ですね。ハッキリ言って、満足する様な食事は(あた)えられていない様です」


 私は死体の()(ちょう)を引き()り出してはナイフで切り()き、内容物を確認しながら(たん)(たん)()げる。

 仕方無いだろ。

 この状況、この場では、私は魔法医──医者──としての責務を(まっと)うするだけだ。

 人間としての感情?

 そんなモン、医者としての使命を(まっと)うする時に必要あるか?

 治せる可能性が1%でもあるなら、その1%を100%に近付ける為に全力を()くす。

 それがダメなら、生きている者を生かす為に有効な情報を集め、それを最大限に()かす方法を考えて実行に移す!

 (あきら)めるのは、助けたい相手が死んでしまった時だけだ!

 それまでは何があろうと絶対に(あきら)めない!

 まぁ、今の状況では目の前に死体しか無いので(あきら)めるも何も無いのだが…


「エリカちゃん、よく平気だな… さすがのアタシでも気分が悪くなるってのに…」


「ん~… こうなっちゃったら人間と言うよりモノですからねぇ… モノだと思えば何とも… 人間だと思うから気分が悪くなるんだと思いますよ?」


 私は振り返りもせず答え、作業を続ける。


「さすがと言うか、何と言うか… ()(くろ)が外れちまったな…」


 言いつつミラーナさんは肩を(すく)めて()め息を()く。

 やっぱりか。

 私をゲチョグロの死体だらけの場所に連れて来て、気分が悪くなるのを期待してたな?


「ミラーナさん、知ってるでしょ? 私がこ~ゆ~のは平気だって。生きている人間の身体(からだ)の中を()れる()を持ってるんですから、動かない死体なんて何とも思いませんよ♪」


 私は()(まみ)れの手を魔法で洗浄しながら笑って見せる。

 そんな私を見る司令官達は、まるで怪物と(たい)()したかの様に(おび)えていたのだった。

 …なんでやねんっ!

シリアス展開(?)の中に笑いの要素を入れるって難しい様な、そうでも無い様な…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ