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第45話 友達は唯一無二。これギャルの鉄則

まだ読んでくれてる人いるんだろうか・・・

「敵襲! 敵襲! 総員配置につけ!!!!」


 唐突にそんな叫び声が聞こえ、同時にけたたましいサイレンが城内に鳴り響いた。

 一斉に近辺のドアが開き、何事かと中から魔族達が顔を出す。


「おい! 敵だ! 全員起きろ!!!」


 シェーラとミナが固まっていると、男子寮の方から部下を引き連れたコンクリン軍曹が姿を見せた。


「何をボケっとしている! 待望の敵様の襲来だ! 迎撃準備! 日頃の訓練の成果を見せてみろ!!!」


 休日のランチから急に戦場へと放り込まれた女子二人は「……は、はい!」と返事をする。

 だが、余りに急なのでどうしたらいいのか分からなかった。


「シャラ! 今すぐ円卓会議場へ行って、茶を飲んでるジジイ共を地下のシェルターへ連れて行け! いいか、アレでも魔王軍における実質的な執政だ! いざとなったら命に変えても守れ!!」

「……わ、分かりました!」

「おい、そこの新入り!」

「ミナです!」

「お前はシャラをサポートしろ!」

「イエッサー!!」


 二人は命令通り、駆け足で円卓会議場へと向かう。

 背後からは早くも戦いの雄叫びが聞こえてきて、呪文の爆発音や建物の破砕音が鳴り響いてくる。

 先程までの豪華絢爛な雰囲気は消え失せ、緊張感が城内を包んでいた。


「皆さん! 敵襲です! 早く地下へ……」


 円卓会議場に飛び込むや否や叫んだシェーラは、しかし言葉を失う。


「……誰もいない?」


 そう、場内は空っぽだった。

 ただ、円卓の上に置かれた湯呑みからはまだ湯気が立っている。


「警報を聞いてさっさと逃げたんだろ。権力者ってのは決断は遅いが、逃げ足は早いからな」


 湯呑みの数を数えながらミナは吐き捨てるように言う。

 何故そんな事をするのかシェーラは不思議に思ったが、今はそれどころではない。

 地下へと向かうため踵を返す。


「こっちです!」


 シェーラとミナはまた大廊下まで戻ってくると、何気なく飾ってあるツボをどかしてスイッチを押す。

 すると第四代魔王の肖像画がゆっくりと横へスライドし、地下へと続く隠し扉が姿を現した。


「へぇ、こんな場所から」


 ミナは感心した様子で階段を駆け下りるシェーラの後に続く。

 通路は非常に暗かったが、遥か下の方に光源が僅かに見えるため迷うことはなかった。


「あ!」


 最下層にある見るからに頑丈な鉄の扉の前まで来ると、シェーラは素っ頓狂な声を上げた。


「どうした?」

「わたくし、シェルターへ入る為のパスワードを知りません……」


 ミナが扉の方を見ると、数字が羅列されたパネルが取り付けられていて、試しに触れてみると12桁の数字を要求された。

 先代魔王が職場改革の一環で取り入れた魔王城屈指の防衛システムである。

 

「10の12乗……100年はかかるな」


 真面目に言ってるのか冗談で言ってるのかシェーラには判別つかなかったが、とにかく今は時間をかけてパスワードを解読している場合ではない。


「仕方ありません、経理の方には後で謝りましょう」


 そう言ってシェーラは強く拳を握り締めると、思いっ切りパネルに打ち付けた。

 繊細な電子式パネルは一撃で破壊され、鉄の扉が重々しく開いていく。


「必要経費だ」


 そう肯定しながらミナが先行してシェルター内へと入っていく。

 刹那、何かを感じ取ったシェーラは咄嗟にミナを突き飛ばした。

 殺気。

 シェーラは反射的に防御態勢を取る。

 次の瞬間、巨大な二本のメイスが闇の奥から突き出てきた。


「ぐっ……!!」

 

 最初の一撃は痛烈だったが、シェーラは何とか耐えた。

 しかし、ゴーレム程度なら一撃で砕いてしまう程の質量を帯びた攻撃が目にも止まらぬ速さで次々と襲い来る。

 だがシェーラは上手く体を捻りながら急所への一撃を尽く回避し、致命傷を避けた。

 そして須臾レベルの僅かな隙を見逃さず、シェーラは相手の両腕を掴んでその動きを封じた。


「……へぇ」


 成程、確かに只の人間ではないな、とミナは独りごちた。

 あんなものを軽々と振り回す腕力を持つ相手を素手で止めるなど、大型のトロルでも無理だろう。


「……離せ!」


 尚も抵抗しようとする襲撃者はしかし、そこで初めて相手の顔を視認するなり気の抜けた声を漏らした。


「シェーラ?」


 耳馴染みのある声にシェーラも掴む力を緩める。


「ミナさん……??」


 そんなバカな。

 だって彼女はたったいま自分と一緒にここまで……


「案内ご苦労」


 背後で〝ミナ〟がそう言った。

 シェーラは目の前に立つミナの腕を放すと振り返ろうとするが、叶わなかった。

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