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嵐を呼ぶ男と体育祭①

閲覧いただきありがとうございます。

まだ序盤にも関わらず、ここまで読み進めてくださり感謝感激です(´;ω;`)

今回より新章に入りました。

ここから話は流香の気持ちと共にどんどん加速していく予定ですので、どうぞお楽しみいただけたら幸いです♪







グスッグスッ


嗚咽をもらしながら、二人の女子生徒が目の前を通り過ぎた。あれは一年生?

学校指定の上履きの色を見た私は何だか無性に気になり、ふと、彼女たちに目をとめる。あまり見られない光景ですから。どうしたんだろう? 何か嫌な事でもあったのかな? 悲しい事でもあったのかな?

お互い、慰め合いながら歩いていく。


好きな人に、彼女でも出来たのかな……?


「流香ー?」

「あ、ごめん。今行く~」


少し離れた距離で、私を呼ぶ親友の声。ぼんやりと考えていた私はそれに気付き、慌てて駆け寄ると、その場を沙希たちと一緒にあとにした。





「きゃあああ――――っっ!」

「ちょっ! おい先輩、逃げんな!」

「沙希! 助けてっ!」


とある休み時間。二年の自分のクラスへ、物凄い勢いで駆け込んだ私は、沙希を見つけて彼女の背後にまわる。


「どうしたの? 秋月、あんた流香に何かした?」


顔を真っ赤にさせながら自分にしがみつく私を見て、沙希は秋月に疑惑の目線を投げかけた。とりあえず聞いてはみるものの、大方予想はついているみたいです。


「まだしてねーっつの。ちょっとチューしようと思ったら逃げられただけっす」


悪びれも無しに、ニヤッと笑いながら言う秋月。それを認めた私は、更に顔面を紅潮させる。


「いやぁ~~! 何言ってんの秋月!?」

「あら、随分と積極的だね~あんた。だけどね、いくらあんたが流香に告白したからって、まだ親友の私の物なんだからね!」


「フフン」と、すがりつく私を抱え、頬擦りする沙希に、秋月はメチャクチャ悔しそうな顔をした。


「……ちっ! どうせなら先輩をもっと遠くに連れ出せば良かった。そうすりゃーあんなことも……」

「あんなことって……何?」

「ちょっと秋月楓。それはまだ早すぎるでしょう」


すかさず横やりを入れる智花。あんなことやそれはって? 私には智花と秋月が何を言ってるのか分からなかった。


「流香~? でも時間の問題だから覚悟しておいた方がいいよ~?」


ニッコリと楽しそうに私へ微笑みをかける柚子。ますますもって、サッパリ分からない。


とりあえず、私は秋月の魔の手(?)から逃れることに成功しました。告白されて以来、今までよりも更に輪をかけてちょっかいを出してくる秋月。自分の思いを私に告げられて遠慮が無くなったのか、セクハラが多すぎる! 私を好きなこと、これから証明するって秋月は言ってたけど……それは違うでしょ! って、突っ込んでやりたい!

でも私、逃げまくりです。突っ込む前に秋月が手を出してくるもんだから。


そんな私たちの変化を見逃さなかった沙希たちに詰めよられ、つい先日、秋月からの告白を強制自白させられました。友人たちが知っているのは、そういうわけです。


「しょーがねーじゃん朝霧先輩。俺、流香先輩のことチョー好きだもん」

「うん、前から知ってる」

「秋月くん、分かりやすかったもんね~」

「一発で分かったわ」


なんとぉ。告白された私よりも以前に、秋月の気持ちを知っていたという友人三人。そして、他のクラスメートからも何となく気付いてたという証言まで発生。今も私たちの会話を聞いていた何人かによる、「あ~やっぱり」という声がちらほら耳に入ってきました。え。みんな知ってたの!? 私だけ知らなかったなんて……。恥ずかしくて穴に入りたいです。

沙希たちに言われました。もう、誰に対しても『鈍感』なんて言葉を使わせないと……。はい、もう使いません。


「あれだけ流香にベタベタしてくればね~、誰でも気付くわ」


秋月を見て呆れながら言う沙希。でもそれには構わず、秋月はいけしゃあしゃあとのたもうてます。


「うん、ベタベタしたいからさっさと小林先輩、流香先輩から離れてくんねー? さぁ! 先輩!」


え。何そのまるで「自分の胸に飛び込んでこい!」と、言いたげな笑顔は。キラキラと顔を輝かせ、両腕を広げて私を見る秋月。明らかに、迎える準備万端って感じです。誰が行くもんですか! 恥ずかしい!


「~~っっ。い……いや!」


勿論、お断りします。そんなこと、出来るわけないもん。

だけど、断固拒否の行動をとった私なのに、何故か秋月は顔を赤く染めている。


「……そんな可愛い言い方すっと、マジで襲いたくなるんだけど先輩……」


何で!? 


「もぉ~流香可愛い~~! やだぁ~秋月になんか渡したくなぁ~い。あーやっぱり渡すのやめよう。流香は私の物~~」


沙希!? く、苦しい……。そんなに抱き着かないで……。


「必殺『いやいや攻撃』。流香にしか出来ない技だね、柚子さん」

「そ~だね~智花さん。あんなちっさくてロリ顔の流香に言われたら~、沙希も秋月くんもたまりませ~ん」


完全に外野席を陣取っている智花と柚子。何か実況している感じがするけど……。お願い、助けて! え、何その「ムリムリ」って笑いながら首を振るのはっ!


「おい。いい加減流香先輩を離さねーと、女でも容赦しねーかんな」

「ハンッ! 『流香争奪戦:ラウンド2』の相手である私に、その程度の脅しは効かないよ」

「へ~? 小林先輩、いい度胸じゃねーか。マジで俺にケンカ売ってるわけだ?」

「だてに流香の親友やってないからね。そこらの男には負けないよ? ……クソ一年風情が」


バチバチと火花を散らす沙希と秋月。話す言葉も、どこか喧嘩腰です。この二人が本気でぶつかりあったらと考えると……怖いので、やめることにします。間違いなく教室一つ分は、爆発しそうな雰囲気なので。


「そういえばさー」


そんな二人のやり取り最中、おもむろに智花の口が開く。


「流香、最近どう?」


え? 秋月のセクハラ頻度が上がって困ってる……。って、そういうことじゃなくて、智花が言いたいのは、私への嫌がらせに関してでした。


「私らが一緒にいるから、そう簡単に手出し出来ないだろーけど」


確かに、廊下で悪口言われるのは沙希や智花、柚子がいつも一緒にいてくれるお陰で無くなった。そのかわり。机の中や下駄箱の中、果てはカバンの中にまで入れられた嫌がらせの手紙は増えていた。

だけど……。


「最近、手紙も少なくなってきたんだよね」


私は何でだろう? と思いながら答えた。だって、告白されて以来。それまで以上に私に絡んでくる秋月を見たら、倍になりそうと覚悟を決めていたのに……。予想に反して、手紙はどんどん減っていったからです。不思議で仕方がありません。


「秋月くんが動いてくれているんじゃな~い?」

「え、そんな暇いつあるの!?」


楽しそうに言う柚子に、私は思わず突っ込んでしまった。


「秋月、学校じゃあしょっちゅう私のところに来るし……」


通学と帰宅も、今じゃあすっかり毎日だし……。何か恥ずかしくて、ごにょごにょと口を動かす私に、柚子はニンマリとしながら聞いていた。


「出来る子はね~、ちゃんと自分で時間を作るもんだよ~? 合格だね! ね、智花」

「そーだね。あれだけ流香のこと好きなんだから、秋月楓も必死にやるよねー」


クイッと首を秋月の方へ動かした智花は、柚子と同様、ニンマリとしていた。二人につられ、私もそちらへ視線を動かしてみました。そして、見なきゃ良かったと後悔しました。


「俺の方が流香先輩のこと好きだっつーの!」

「いーや私だね! なんていったって中学から一緒にいるし? 流香の可愛いとこ、全部知ってるし?」

「ヘッ、小林先輩~年数だけで流香先輩のこと全部分かってる気になってんじゃねーよ。俺なんて短時間で先輩の全部が好きになったし!」

「バッカじゃないの? それこそ流香のこと全部知った気になんなっての! 甘いよ秋月!」

「どこがだ! たかがクラス一緒なだけの小林先輩に言われたくねーよ。俺は部活している先輩も知ってんだかんな! スンゲー可愛いし!」

「話になんないね! 部活中だけじゃなくて、いつでも流香は可愛いんだよ!」

「当たり前のこと言ってんじゃねーよ小林先輩。そんなん決まってんだろ!」


は、恥ずかしい……。沙希と秋月。二人揃っていつの間にか私への大告白大会を開催しています。ううっ、本当に穴があったら入りたい。

でも都合よく、そんな隠れられる穴なんて教室にあるわけでもなく。私はとにかく自分の身を隠したくて、机の下に避難しました。


「おーい二人とも、そのぐらいにしとけば? 流香が恥ずかしいってさ」


私の奇抜な行動を見た智花が、沙希と秋月に声をかける。即座に二人がこちらを向いたのは、あながち当然だったのかもしれません。


「うわ! 先輩、団子みて~。カワッ!」

「ヤダ! 何してんの流香~。恥ずかしがっちゃって~。かっわいい~!」


机の下で顔を真っ赤にしながらうずくまる私を見て、沙希と秋月は揃って声をあげた。ていうか! も~~~~~~~~! お願いだから、それ以上言わないで! クラスのみんな、こっち見て笑ってるし! 誰ですか! 私に、「美少女と美少年に告られた感想は?」って聞いてきた人はぁ!


そんないっぱいいっぱいの私に、ほのぼのムードの教室内。悪口も手紙も少なくなって、はたから見れば平和な空間。

そういえば……。恥ずかしくて仕方がなかったけれども、机の下で、ふと私は平和な中にある、奇妙な違和感に気付いた。秋月目当てのギャラリーがいない気がする。一番最初、秋月が私のクラスへ来た時はあんなに沢山の女の子たちが廊下に群がっていたのに。あれ~?


――ダダダダダッ

――バッ!


「秋月――――! てんめー、やっぱりここにいやがった! ねーちゃんから離れろ!」


あ、颯太だ。また秋月が私に付きまとっている、と勘が働いたらしい颯太が、私のクラスにやってきました。

颯太が普通に走ってここに来られたってことは、見えない場所でもギャラリーはいないらしい。どうしていなくなったんだろう……?


その理由を私はすぐに知ることとなった。このあと訪れる、危機と共に。


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