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2月3週目 キティ⑤

 オープンクラスでの一戦は、スキルによる影響を微妙ではあったが実感できた。

 しかし、それは≪スピードアップ≫についてであり、≪人語理解≫の方はまだまだだと言わざるを得ない。

 攻略サイトの情報を信用するのであれば、日本語を喋れるようになるのは副次的な効果で、本命は騎手(ライダー)の指示をどこまでも正しく反映するところにある。つまり、今までに比べ俺の指示への反応(レスポンス)が良くなっていないといけないわけで。「全然変わってないんですけど?」とでも俺は言えばいいんだろうか、特に効果を実感することは無かった。



「という訳なんだが。何か情報おくれ」

「一昨日帰るニャ。もしくは味噌汁で顔洗って来いニャ」


 ほぼ一週間ぶりのキティさんが冷たいです、ニャンタ師匠。


 俺は≪人語理解≫の話を聞きに、キティの所にやってきた。

 三味線の所も選択肢にあったんだけど、三味線のドラゴンで≪人語理解≫を持ってるやつを知らなかったから、リザのオーナーであったキティの所に来たのだ。


「そもそもあれは騎手が逸れニャりのレベルじゃニャいと意味ないニャ。猫村には半年早いニャー」

「半年とはまた具体的だな、オイ」


 「反論できるかニャ?」と聞かれれば沈黙をもって答えるしかないだろう。否定できん。


「つまり、俺の腕がしょぼいから実感がわかないと?」

「そーニャ。レースで100戦200戦して、よーやく意味が出てくるスキルニャ。≪妖精化≫も含めて、無駄なスキルばっか取ったニャ」


 100戦って。

 先月はパヴァ以外のドラゴンにも乗って、ようやく30戦といったところである。

 それならあと2ヶ月かからないだろうけど、200戦ならあと4ヶ月近くかかる計算だ。途中で扱うドラゴンが増えて、挑むレースもそれに合わせて増えればそんなもんだと思う。

 もっとも、それが実感できるかどうかの境界線なら、あと半年が目安になるのだろう。

 ……パヴァ、引退してるっての。スピード重視のドラゴンは早熟かつ早期引退が懸念されるって言うのに。

 確かに一見無駄なスキル選択である。


「≪妖精化≫は、取ったの、俺じゃないけどな」

「ちゃーんと当事者(ドラゴン)と話し合いをしないからそうなるニャ。“ソウル・リンケージ”は次世代に受け継がれる魂だけじゃニャいニャ。プレイヤーとドラゴンの魂の触れ合いでもあるニャ。よーするに、猫村はまだまだ口先だけニャ。分かってるようで分かってニャいニャ。分かってるニャら、一週間も私を放置しニャいニャー」


 ニャーニャーとキティが言っているが、一応、正論である。

 パヴァと遊ぶことはあっても話し合う事はあまりなく、基本的に方針その他は全部自分で決めてきた。

 路地裏の仲間は、基本的に全員個人主義者だ。キティのようなのもいるが、思うように歩き、隣を歩けば助け合い、だからと言って自分が人に合わせるという事が少ない面子(メンツ)だった。

 過去につるんでいた理由は、同じゲームをやっていたから。同じ方向を向いた誰かと協力する理由があれば協力するし、敵対するならぶちのめすのが流儀だった。

 思いついたら即行動するのは、あの時から変わっていない。

 積極的に人と敵対する愚は理解しているし、波風立てなければ特に問題ないのでそのままやってきたのだが……。


 その時の悪癖が表に出ていたようで、後ろ足で頭をかき、反省する。

 って、オイ。

 ≪人語理解≫の話から、なんで俺、ディスられなきゃいけないんだ?


「キティさんや。話が逸れてないか?」

「話を振ったのは猫村ニャー」


 せめてもの足掻きに、反論したらジト目で見られた。


「これに懲りたら家族会議ぐらい、週一でするニャ」

「……はい」

「もーちょっと、私の所に顔を出すニャ」

「は……い?」

「素(ニャお)に返事をする!!」

「はい!!」



 今日、いくつか分かったことがある。

 俺はまだまだ未熟で。

 キティは相変わらず怖いし逆らえないってことだ。


 どちらも大事だから、忘れないようにしよう。





 さて、肝心のパヴァさんであるが。


「猫村ー、ごはんー」

「お腹空いたー」

「今日もお肉。うまうま」


 腹ペコキャラで、定着したらしい。食費が増えた。妖精に(小さく)なったのに。

 物理法則を無視した食事量に突っ込む気はないが、食事の頻度はドラゴンだった時の3倍で、一回当たりの食事量が変わったという事は無い。食費はその分計上され、俺の財布を圧迫している。そこにはぜひともツッコミを入れたい。


「前から足りなかったよ?」


 ハイ、ソウデスカ……。

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