日々幸福 1
碧天雲一つ無く、日は赤い。
陽光が大地を燦々と照らし、薫風がそよいでは森を撫でていく。まるで二人の門出を祝福しているかのようだ。清香馥郁たる花々が咲き誇る、とある集落の小さな教会で身内と親しい友人を招いた質素な挙式が行われた。式を見守る人々はそれぞれ個性的だが、礼服で身なりを整え、参列席に収まっては、うら若い新郎と新婦の入場を今や遅しと心待ちにしている。
オルガンの妙なる調べが流れ、父なる神が見守るような荘重な雰囲気に包まれる中、神父を務めるアプリコットが静かに合図をすると、正面にある重そうな玄関がゆっくりと開いた。そして赤い絨毯で敷かれたバージンロード上を新郎のアルフレッドがドンカスターが一歩また一歩と、今までの人生の歩んできた道を確かめるようにして進んでいく。彼の衣装は全身を白でまとめたもので、勇気に満ち溢れた表情をして、双眸は希望に爛と煌めいて、実に晴れやかな印象を参列者に与えている。一方、深紫のローブをまとったドンカスターはというと、今にも泣きそうな顔をしている。そうして神父の前まで来ると、新郎とドンカスターはゆるりと向かいあった。
「おじいちゃん、ありがとう」
返事が出来ないのか、ドンカスターはただしみじみとうなずいていた。そして役目を終えると、静かにロンシャンの隣の席に座った。ロンシャンが何も言わずに白いハンカチを渡そうとすると、
「まだ、だいじょうぶじゃ」
と言って涙をこらえていた。
しばらくすると新婦のイェオーシュアがベルベッドと共にバージンロードを渡ってきた。新婦の衣装は全身を繻子織りの白無垢で包み、手には白の手袋、まとめずにおろした髪、頭上には小さなティアラ、そして薄い白のヴェールで顔を隠している。時折ステンドグラスから漏れる光が、長い銀髪をちらちらと照らしている。
新婦とベルベッドは新郎の元に来ると、名残惜しげに向かい合った。
「おばあちゃん、いままでありがとう」
「幸せにおなり」
にこやかにそう言い、ベルベッドは静かに席についた。
やがて妙なる調べを奏でていたオルガンがやむと、神父のアプリコットが厳かに口を開いた。
「新郎、アルフレッド」
「はい」
「汝は健やかなる時も病める時も、妻であるイェオーシュアをその生涯を通して永遠に愛することを誓いますか?」
「誓います」
そうアルフレッドが神に誓うと、ふいに後ろから嗚咽をしながら鼻をすする音がした。振り向くとドンカスターが感極まって、こらえきれずにむせび泣いているではないか。怪訝な顔してアプリコットが尋ねた。
「ドンカスター、どうしたのです?」
「わ、わし、嬉しくて、つい、ううっ……」
ロンシャンが白いハンカチを取り出すとドンカスターがぱっと受け取るや鼻をかんで、そして綺麗に畳んでロンシャンに返した。その様子に新郎と新婦も含めて皆が朗らかに笑った。




