愛恋の火 3
「おお!」
見ていた皆が驚きの声を出し、彼に対して拍手を送った。それに応えて彼が恥ずかしそうに軽く会釈する。イェオーシュアも混じってはとても嬉しそうに拍手をしていて、その光景にドンカスターが微笑んでいた。試験は一人の落第者を出すことなく終了して、アルフレッドが帰り支度をしているところにドンカスターが声をかけた。
「おめでとう」
「ありがとう、おじいちゃん」
「メアリーも天国で喜んでるじゃろうて」
「うん」
「それにしてもヒヤヒヤしたぞい。二回目を失敗した者は落第するのがほとんどじゃったからのう」
「僕もダメかと思ったよ」
「見事に合格したもんじゃ、さすがわしの孫じゃ! ほっほっほ……。ところで、このあとどうするんじゃ?」
「待ち合わせまで時間があるから、一旦家に帰ってシャワー浴びるよ」
「待ち合わせとな? 誰とじゃ?」
「イェオーシュアと屋台を見て回る約束をしたんだ」
聞いた途端、ドンカスターがアルフレッドの側に寄り、そっと顔を寄せて言った。
「やっと、その気になったようじゃの」
「な、なにが?」
「ふほほ、わかっておる。祭りの日には告白するのが相場じゃからの」
「あ、う……」
「そんで、どうなんじゃ?」
「ど、どうって……」
「手応えじゃよ。キッスしたんか? ん?」
「キキキス?」
「なんじゃ、まだしとらんのか。最近の若いもんはこれじゃから……。わしの若い頃はそりゃあキッス、キッス、またキッスの嵐で……」
「お、おじいちゃん!」
「ほほほ、じじい反省。ま、なんにしても誠実にまっすぐ気持ちを伝えれば相手に伝わるもんじゃ」
「そ、そうかな?」
「そうじゃとも。飾らず、自分の言葉で言えばの」
「うん、そうだよね、少し勇気が湧いてきた」
「そうかそうか、頑張ってくるんじゃぞ」
「うん! じゃあ僕は行くよ」
言って手を振り、アルフレッドが走り去っていく。
「若いっちゅうのは、それだけで素晴らしいもんじゃの……」
ぽつねんと、夕陽を見つめてドンカスターが目を細めつつそう言った。
――急がなければ。
そう思いながらアルフレッドは通りゆく人々にぶつからないようにと家路に向かう。まだ時間があるとはいえ、得も言われぬ高揚感がどうにも彼を落ち着かせない。それはそうだ。これから想い人と待ち合わせをしているのだから。家に着くと彼は自分の部屋に荷物を置き、"失礼"があってはならないとシャワーを浴びた。そうして清潔な肌着を身につけ、真っ白なワイシャツに暗緑色のズボンを履いて、黒のサスペンダーで留める。姿見を覗いては栗色の髪に櫛を入れ、少しでも見映えを良くしようとブラシで犬耳を撫でる。
ようやく身仕度を整えて時計を見ると、
――いけない、もうこんな時間だ。待ち合わせに遅れて彼女が機嫌を悪くしたらいけない!
そう思い、アルフレッドは玄関を飛び出した。




