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第16話 四人で県へ

マイルリレー予選の日。


通路に四人が並ぶ。


一走、真壁。


二走、瀬川。


三走、朝倉蓮。


四走、神崎。


走順は変えない。


神崎が全員を見回す。


「県で決勝まで残る。そこをまず外すな」


真壁がスパイクの紐を締め直す。


「了解っす」


瀬川が言う。


「一走と二走で無駄に上げすぎないことですね」


「そうだ」


神崎は短く返した。


相沢が壁際から口を出す。


「朝倉、受けてからの三歩、雑にするな」


「はい」


「個人四百みたいに、最初から一人の顔で入るな。前の二人が持ってきた勢いの上に乗れ」


蓮は深くうなずく。


通路の向こうから、招集の声が聞こえる。


鼓動が速くなる。


真壁がそれを見て笑う。


「緊張してんじゃん」


「してます」


「いいよ、そのままで」


真壁はいつもの荒さのまま、でも少しだけやわらかく言った。


「してない顔してる方が、たぶんやばい」


コール。


真壁が立ち上がる。


瀬川も続く。


蓮も腰を上げる。


スタート。


真壁は予選でも前へ出る走りだった。


突っ込みすぎない。


だが、引きもしない。


一走として、県の空気を正面から受ける。


瀬川が受ける。


真壁の勢いを殺さず、自分の区間のリズムへ入る。


大きな動きはない。


だが、切れない。


それが瀬川の強さだった。


蓮は三走待機位置で、その足音を聞いていた。


一定だ。


ぶれない。


呼吸が一本の線になって近づいてくる。


右手を出す。


触れる。


一歩目へ入る。


速い。


だが、自分だけの速さではない。


前の二人が持ってきた流れが、まだ背中に残っている。


それを切らないように、最初の三歩を急がない。


第一コーナー。


第二コーナー。


バックストレート。


まだ完全ではない。


それでも、以前よりずっとましだった。


第四コーナーから神崎へ。


パシ。


乾いた音。


大きなロスはない。


神崎が受けて、アンカー勝負へ入る。


最後に一校かわし、組二着。


タイムでも十分、決勝進出。


戻ってきた蓮に、瀬川が言う。


「三走、良かったです」


蓮は少しだけ首を振る。


「最後、まだあります」


瀬川はうなずいた。


「はい。だから、今ので終わりじゃないです」


相沢も近づいてくる。


「最初の三歩、今日は待ててたな」


「……はい」


「そこだよ」


相沢は蓮を見て言う。


「お前が一人で速くなるのは分かってる。問題は、誰かの速さの続きとして走れるかだ」


蓮はその言葉を、前より深く受け取った。


県でマイルの決勝へ残る。


それだけで、潮見はもう“出てきただけの学校”ではなかった。

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