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次のステージ?!



えっ?


袖を誰かが掴んだ…と思った瞬間見知らぬ部屋にいた。


転移だよね?

しかも、掴んだ人ってまさかの目が飛んでるあの王太子殿下とかじゃないよね?


振り返るのが怖すぎて、錆びた人形の様な動きで袖を掴む人物を見れば。


!!!!


やっぱり王太子殿下だった。


項垂れてるから、飛んでるはずの目が見えないけど俺は忘れてないから!!

ガゼランさんの方を砕いた血だらけの現場を。

誰かが傷つく瞬間を目撃するなんて、前世今世合わせても無いからショックが凄い。

だから今、身体がガタガタ震えていてもオカシクナイよね?

もう、チキンの名付けは我慢するから、誰か逃げ道教えて欲しい!!


そんな願いも虚しく俺の袖を掴む力は、やっぱり凄くて逃げる隙はない。


。。。


動かないなぁ。


話しかけるのも怖いから俺も動けない。


。。。


やっぱり、微動だにしない。

ふぅ。俺は全く動かない王太子殿下にようやく落ちつきを取り戻して周りを確認出来るまでになった。

目だけキョロキョロと動かせば…。


立派な家具に囲まれた広い部屋は王族らしい雰囲気がある。

でも…この暗い雰囲気は厚いカーテンで光が差し込まないせいだけじゃ無い。



何!?


この床の落書きは!!


幾何学模様っぽいサイコパス満載の床!!!


まさか…魔界とかに送られたりしないよな?!

チート無しの俺にはハードモードすぎる展開が多いんだよ!!

単なる料理担当の付き添いのはず。

そもそもガルクルトさんが勧誘するから。いや、そもそも…はっ!!


いつの間にか、見られてた。

俯いていたはずの王太子殿下がこっちを見てる!!!凝視してるし!!!


俺ってば、サイコパスが近くにいたのにまた呑気に脳内モード全開になってたよ。


「あ、あの。何で俺を連れて…」


見つめてまたもや固まった王太子殿下に、必死に声をかけたけど、情け無いくらい声が震えている。


「分からん。何故かも、俺が何でココにいるかもさっぱり分からん。」


ん?んん??

も、も、もしかしてーー!!!正気?!

取り敢えず、地下牢行きの切符は困るので説明を…


「あの、王太子殿下様。俺は人間ですけどココにいるのは理由がありま」「とにかく、今はいつだ?」


あーはいはい。偉い人特有の聞く気ゼロなヤツね。


「えーっと。今はガルム暦1225日です。」


「ガルム暦と言うと、人間暦の数え方だな。換算すれば…何とあれから3年経っているのか。何故、今正気なんだ?」


おぉ。一瞬で換算した。

しかも、自分が正気じゃなかったの知ってたのか。


「そうだ。何故かは分からんが今は正直だ。

三年前、突然身体が乗っ取られる感覚があった。必死に抵抗したが結局抗えず。それでも俺に出来る唯一の打開策が刀打ちだったのだ。それをしている時だけ不思議と乗っ取られる感覚から逃れられたのでひたすら刀打ちをしていたはずだが。それすらも、今は既に記憶にない。

もしや、お主が?!」


そんな訳ない!!と、俺は必死に首をぶんぶんと横に振る。しかし刀打ちが逃れる方法とは、さすがドワーフ。俺が感心していたら、殿下が俺のお腹を指差して「懐が光っているが、それでは?」とオカシナ事を言ってきた。


「そんな、人のお腹が光るとかある訳…

ええーーー!!!!何で?!俺ってば、まさか電灯人間になったのか?!」


「落ち着け。それと俺の状況には何らかの理由があるは…『それはザルツの中にアレが溶け込んだからだ。』


KYな【ヤモリ】のヤツ、王太子殿下のお話に被せたぞ!!

しかし、居留守だったな…透明【ヤモリ】め。

守護って、安全になってから出てくるヤツだったか!!おかんむりな俺を全く意に返さず【ヤモリ】は話を続ける。


『ザルツよ。お主が言う初めての失敗作だ。

アレがお主の腹の中に入ってゆくのを見たのだ。』


「見たって…。見てるなら止めてくれよーー!!思い出の一本と言っても、腹の中にあるのは健康上不味いだろう!!」


『ふぅ。お主のズレ具合は相変わらずだな。まあ良い。アレがお主の中に入ったのは、そこな王太子が原因だ。王太子をマトモにせねば、其方は生涯そのままだな。』


ぬぬぬ。

透明の上、背中にいるから睨めないけど【ヤモリ】ムカつく。


「すまない。まだ幼い其方にこの様な迷惑をかけて詫びのしょうもない。」


潔く頭を下げる、好感度爆上がり中の殿下は真摯に謝っている。うーん。こう言う態度を守護者には学んで貰いたい!!


「殿下。俺は成人してるしヤークル姫さんにはお世話になったしお腹は光ってるのは困るので

ここは頑張る事にします!!

。。。

でも、何を頑張れば良いのですかねぇ。」


正直、床の幾何学模様は全く分からない。数学の赤点の数ならば学年1の俺を舐めるなよー!!


無理だから。

料理しか出来ないんだから。


!!!

そうだ…料理人は取り敢えず飯作りからだ!!


「殿下。とにかく食べよう。腹が減っては戦はできぬだからな。それに…」

痩せてるとは、ちょっと言いにくいなぁ。

ガリガリのほっぺに笑顔を浮かべた殿下は、ちょっと骸骨っぽくて怖いんだよ。

だから、少しは食べて元気になって貰わなきゃ頑張れないから。


「ザルツ殿。力添えありがたい。確かに今の俺の体力では何も叶わぬかもしれん。だが、この部屋のドアは封印されているし食材などないが…」


プチ。


「はい!!まぁ、緊急パックだから味噌汁とお握りのみだけど味は保証するよ。あっ、毒味とか必要かな。だったら、お」「必要ない。ありがたく頂くよ。どこから出たとか追求するのはザルツ殿には無益だと学んだからな。」


ガツガツ食べる殿下を見るのは楽しい。

しかし、さっき何を言ったのだろ。最後の方はよく聞こえなかったのだが。


しかし、凄い食べっぷりだ。

10人前をあっという間にペロリ。頬にも赤みがさして元気そうになった。

やっぱり、味噌汁に精霊の実の搾り汁を入れたのが良かったのかなぁ。


二人で満足いくまで食べて改めて握手を交わす。



「人族のザルツです。非力ですが料理人ですのでそちらならお任せ下さい!!」


「改めてドワーフ族のエガランと申す。殿下はやめてエガランと呼んで欲しい。こちらこそ宜しくお願いしたい。」



視線を合わせても、怖い雰囲気が無くなったエガランに笑い返した俺の目にオカシナものが目に入った。


「なぁ、あんな所にドアとかあったか?」


重厚な家具の間に、ドアがある。

絶対、最初は無かった。


「そうだな。ザルツ殿の言われる通りだ。このドアは恐らく今出現した。」


ドアを開ける気持ちは全く湧かない。

こう言うのは罠と相場は決まってるから。


「エガランさん。このドアを開けるのはやめましょう。危ない気が…あっ!!!」


俺の提案の最中にも、エガランさんは既にドアノブに手を掛けている。


ま、間に合わなかった。



そう分かったのは、真っ暗闇になったからだ。

ポォっと光ってるのは、俺の腹のみとか。


マジか…。


こうして、俺たちは次のステージに進んだ。


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