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商人グレンの覚悟!!



*** リスタ視点 ***


コンコン…。


目の前に聳え立つ鋼の門は、固く閉ざされている。この世界でも個人宅にこれほどまでの大きな門扉は珍しい。


コンコン、コ、ココン、コ。


相手がこの合図を覚えていれば、この開かずの扉が開くはず。。。


やはりダメか。


すぐさま気持ちを切り替えた俺は、とにかくアザレント公国への安全な入国の方法を探らねばならない。

時間がないのだ。


さあ…どうするか。


「なぁ、なぁって!!」


ふむ。とにかくあの腕輪だけは防がねばならない。入国者を管理するあの国特有の…。



「わざとか?!絶対、嫌がらせだろう。」


ナラ殿がご一緒なのだ。あの腕輪は…「おい!!このやろ…っ!!!」


「ザフト!!居留守の次は飛び蹴りはないだろうが。」

俺は飛び蹴りをして来た相手をすかさず避けつつ文句を口にした。久しぶりだがザフトは変わらないようだ。


「はっ?お前、これだけ呼びかけたのに無視するからだ!!それに飛び蹴りは、先日の礼だ!!」


口を尖らすな…いい年をした男が可愛くも何ともないのだから。


まあ、飛び蹴りはあの時の復讐なのだとしたら、それこそ可愛いものだ。久しぶりに彼をジッと見ればどうやら父君を説き伏せてくれたようだな。


「で、父君はお会い下さるのか?」


確認も兼ねてザフトに尋ねれば。


「こっちだ。オヤジも今は難しい情勢だから、色よい返事を期待するなよ。」

やはり持つべきものは悪友だな。


開かれた大きな門扉をザフトに付いてくぐりながら、久しぶりの見るこの要塞の凄さに感嘆する。


「単なる別邸だよ。相変わらず大袈裟だな。」


そう思っているのはお前さんくらいだ。

これは家では無い。誰もが間違いなく要塞だと答えるだろう。

一歩道から逸れれば、確実に罠にはまる。

それはある程度の魔力を持つ俺でも防げまい。

しかしそれも当然だ。何故なら彼は、この国どころかこの世界でも唯一と言っていい私兵を持つまでの大商人なのだから。


「頭目。お連れしました。」


「入れ。」


木目の扉はシンプルにして最強。

見た目では計れない防御装置付き、更に部屋の奥は。。。うーん、この先は俺でも抵抗も脱出も不可能だな。



「リスタ。久しぶりだな。」


目の前のソファへと俺を手招きしながら、和かにこちらを眺めるグレン・バートナ。

グレーの髪を持つ年齢不詳の美丈夫だ。しかも、この方を於いて他にないと言われる美しい紫の目も変わらない力強さだ。

あれから幾歳月経ったのに、覇気も滲み出す魔力も衰えを知らない。


しかし、よくぞ会ってくれたと思う。あの不義理を思えば俺もかなりの厚顔だな。


「ご無沙汰しております。この度はご多忙のな…」「あー、いい。そう言うのは省くぞ。」


…やはり、歓迎されてないか。しかし、ナラ殿の安全の確保にはこの方を頼るしかないのだ。

ならば、本題に入るのみだ。


「実はこれよりアザレント公国へ入国せねばなりません。しかも腕輪無しで入国したいのです。俺の仲間3人とある女性の全部で4人、入国の手助けを頂けませんか?」


「ほう、女性付きとは…。誰にも靡かぬリスタが遂に恋に落ちたのか?」


面白がっている雰囲気に即座に否定を入れる。

まあ、信じて貰えずともナラ殿の尊厳の為にも言わねば。。



「いえ。これは色恋なのでは無いのです。命の恩人の妹さんなのです。」


「ふふふ。面白い冗談を言うな。ナーガウル国騎士団団長様のお言葉とも思えぬではないか?」


「昔の話です。今はエルザム国の田舎者ですよ。どうか、お力添えをお願い出来ないでしょうか?」

俺は頭を下げてもう一度頼んでみる事にした。

とにかく、時間はないのだ。


「ハハハハ。リスタ殿が頭を下げて何かを請う様になるとはな。リスタ殿も大人になったな。

しかし、だ。結論から言えば『否』だ。いや、正確にはそれは今は不可能なのだ。」


ジッとグレンバ殿を目を見て、俺は立ち上がって礼を述べた。


「此度は、お忙しいところお時間を頂戴してありがとうございます。不義理をした私にお会い下さる恩義には、また別の機会に報いたいと思いますが今は御前を失礼します。」


立ち上がって踵を返す。時間が、無いのだ。

失礼を承知で一礼してそのままにドアノブに手を掛け部屋の外へ出ようとしたところで相手からの制止が入る。


「リスタもやっぱり若者だな。事を急く。正面突破は不可能でも、何事にも抜け道はある。」



「では!!」


振り返った俺の顔はきっと期待に満ちてきたのだろう。今度こそ、目の奥まで和ませたグレン殿が柔らかに笑った。


「君をここまで変えた人物にお会いしてみたい。とにかく、力を貸すからにはそちらの情報も開示してくれなくてはな。」


俺は躊躇いなく頷いた。

彼に二言はない。信頼に値する人物だからこそ…。

早速、今までの経緯を話す。(無論、ガルクルト殿に許可頂いた情報のみ…だが。)


商人にとって情報は武器だ。そして見返りのない力添えはないのだから当然だ。


ナラ殿。

道がひらけました!!


彼女にだけは絶対に『あの腕輪』をつけさせる訳にはいかないのだ。




*** グレン視点 ***


問題は山積していた。

だから当初は会う気はなかった。


しかし、息子が珍しく土下座までして頼むので

会うだけはすると約束した。



ナーガウル国騎士団団長 リスタ。


彼の国で、その名を知らぬ者はいないと言わしめた実力。最小年でのその地位まで登り詰め、また他国民でありながてっぺんまで辿り着いた実力は本物だ。魅せられた者は多い。

そしてその中の一人に私がいた事は間違いない。


ふふふ、昔の話だ。


コンコン。


「失礼します。」


入室してきた彼を見てコレは一大事だと直感した。


それほど彼は変わっていた。

騎士団団長として、実力がありながらも他を寄せ付けない排他的な雰囲気が無いのだ。

商売柄、沢山の人間を見てきた目から言えば…

彼はアリだ。


しかし…アザレント公国への入国保助とは際困難課題だな

難色を示した途端、踵を返した彼を見て私も覚悟を決めた。


恐らく、これは人生でも大きな岐路に差し掛かっていると直感が告げる。直感を馬鹿にしてはいけない。何度も危機的状況を直感で救われてきたのだから。


そして…それは完全に当たった。


アザレント公国との国境近くの都市ガウルの宿屋にいたのは、驚きの二人だったからだ。


特に、ナラ殿が背中に庇っている赤い目を持つ女性が私の予想通りとしたら…。


だとすれば、私のするべき事はひとつだ。


「お久しぶりです。ナラ殿。

そして、お初にお目にかかります。ルーナ様。」


驚き固まるリスタを他所に、怯える赤い目と目が合う。私は彼女に笑みを送り、深く腰を落とし胸に手を当て挨拶を贈る。

見上げれば。。。


ルーナ様の赤い瞳が驚愕に揺れている。



アザレント公国王族への挨拶を他国民が知らないと思ったのか、それとも自分の身バレに驚いたのか。


ふふふ…恐らくその両方だろう。

さあ、これからだ。

腹を括った私の本気をお二人に是非とも見てもらわねば。。




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