20 不審者に遭遇
西園寺優馬視点
食べ終わって会計を済ませて外に出た時に田中に「不審な人を見かけたかもしれない」と言うと、ちゃんと確認した方が良いなと言って、店の周りを少し確認しておこうと二人で一緒に回った。
いつも勝也にあんなに冷たい態度を取られているのにこんな風に付き合ってくれる田中は本当に良いやつだ。
「今日は、ありがとう」
「え? ああ、気にしないで」
「勝也はあんな感じだけど、田中とはもっと仲良くして欲しいんだけどね」
「それなら全然大丈夫だよ」
「何であんなに嫌がるのかわからなくて」
「そうだねえ、もうちょっと素直になって欲しいよね」
色々話ながら店の周りを確認して見たけれど不審な人物は見当たらなかった。
特に様子のおかしい人は居ないようだったので裏口の方で勝也を待っていようと向かっていくと、勝也が誰かに腕を掴まれて何か言われていた。相手の様子がおかしいので目を凝らしてその人物を見るとサラリーマンっぽい男だった。
(あいつは前に一度見たことがあるーーーあれは、三条だ)
慌てて勝也の方に駆け寄っていくと三条がこちらを見て
「あ、西園寺くんだ。君に聞きたいことがあるんだ」とこちらに寄ってくる。
勝也が「待って」と三条を引き止めようとしたけれど突き飛ばされて転んでしまった。田中が勝也の元へ走って行って助け起こしている。
「君は僕と同じ転生者だよね? この世界は元のゲームの世界と違っておかしな事が多いと思うんだけど、君はどう思う?」
意味のわからない事を言っているので困ってしまって黙ったままでいると急に叫び出した。
「ここはゲームの世界なんだから自分の好きなようにシナリオを変えても良いと思ったのに! ゲームなのに全然チートじゃないし、高校教師として上手く生活していけなくて解雇になってしまったし、ゲームに逆らったせいで上手く進まないと思っていたのに、シナリオ通りに進んでい無いキャラが居て、そいつらは普通に生活しているし! なんで上手くいかないの? 西園寺くんのせいでしょ? 早く元の世界に戻してよ!」
三条がいきなり怒鳴りだしたせいか、勝也が震えてしまって田中にしがみついて「ごめんなさい。俺がゲームの内容変えちゃったせいでごめんなさい」とあやまりだした。
俺はビックリして「ちょっと、勝也、何をあやまっているの?」と言っても、勝也は泣き出してしまっている。田中が慌てて勝也の顔を覗き込んで何か言っている。
三条は良くわからない事を叫んでいるだけで、こちらに何か危害を加えようとは思っていないみたいだ。ただ、何かしてこないとは限らないので、どうしようかと困ってしまって三条の方を見ていた。
田中が勝也を後ろに隠しながら、相手の様子を見て少しずつ移動して相手の気がそれた時に勝也の腕を掴んで、俺にもこっちへ、と目で促して走り出した。




