21 幼馴染との友情
西園寺優馬視点 最後です。
ある程度走って逃げてから振り返ってみたら、三条は俺たちを追いかけては来なかった。
ただ、あんな状態の相手では何があるかわからないので、俺と田中で勝也を家まで送って、俺は勝也の部屋までついて行き、田中はお店の人に事情を説明する為に店まで戻って行ってくれた。
勝也のバイト先に連絡を入れて今現在の状況の説明をしたら、勝也はそのまま休んで良いと言ってくれたので、田中が詳しい事情を説明に行きますのでと伝えて電話を切った。
勝也は、もう泣き止んでいるけれど、落ち着かせようと部屋着に着替えさせて、ベッドに座らせて俺も隣に座って話しかけた。
「あの人、自分の事を転生者って言っていたけど、同じ転生者の勝也とは全然違うんだね」
「……」
「ゲームって何だろう、何か叫んでいたけれど意味がわからないね」
「ごめんなさい」
勝也があやまってくる。何か隠している事があるのだろうか。
「前世の記憶があるからって、あの人の人生がおかしくなったとか関係ないよね。俺たちが生きている現実とは違うし。勝也だって前世の記憶があっても関係なくちゃんと生活しているんだし」
「俺があの人と違うのは、優馬と出会った時には前世とか、もうどうでも良かったからなんだ」
勝也が話してくれた前世の記憶の内容はーーー結婚は付き合ってすぐの恋人に妊娠したと言われて相手の親に怒られて仕方なく結婚することになっただけ。そして、妊娠は彼女の勘違いで子供は居なかった事。結婚して自分はすぐに事故で死んでしまった事。家族との関係は、自分の上に5人も兄弟がいたので親は仕事で忙しく、兄弟も歳が離れていたのでほとんど放置で育った為、家族との思い出もそんなに無いことを話してくれた。
「俺は優馬のことが好きで、一緒に遊ぶきっかけが欲しくて前世の家族探しとか嘘を言ってたんだ。本当にごめん」
勝也が俺に対して嘘をついて居たという罪悪感で、一生懸命に謝ってくれている。でも、俺は前世の話に付き合って一緒に色々調べたりとかして遊んでいたけれど、正直前世とかそんなに信じていたわけでも無いし、それほど嘘をつかれてた事を怒ってたり、気にしてたりはしていないのだ。
でも、別にそんな事どうでも良いよとも言えないし、困ってしまって「はーー」とため息をつくと勝也はものすごく情けない顔をしてこっちを見てきた。
「もう謝らなくて良いよ」
「でも」
「前世の記憶があるのは嘘じゃ無いんだろう? まあ、前世がイルカとかだったらもっと良かったのにね」
「何それ」
「ふふっ」
勝也にはまだ隠している何かがあるのだろうか? 謝らなくて良いと言っているのに、まだかなり落ち込んだ様子なのでどうしようかと考える。
「前世探しとかじゃなくてさ、次の休みはどこでも勝也の行きたいところに付き合うよ」
「え? 良いの?」
「この間、二人で行った水族館は楽しかったよね」
「うん、また行きたい」
何か元気付けるような事をと、思いついた事を言って見ると、うれしそうな顔になっているので安心した。すっかり落ち着いたようなのでベッドに横にならせて俺は自分の家に帰ることにした。
「そういえば、勝也の前世の名前って聞いた事がなかったね」
「それは良いよ」
「どうして?」
「今の名前はここで生まれた時に親につけてもらった名前だし、優馬にもずっとこの名前で呼んでもらっているし」
「そっか」
部屋を出る時に振り返って見ると、勝也はこちらを見てまた不安そうな顔になっている。
「勝也、おやすみ。また明日ね」
と言って笑うと、勝也も嬉しそうに笑って「おやすみ、また明日ね」と返してくれた。
(完)




