10.力の試練 その二
とりあえず力の試練終わりです。
二人の軌跡が交わり会い、大きな音を立て始めてから大凡10分ほど経過したところで、試験官のウェザリゴが口を開いた。
「ユートくん、いつまで私を値踏みするような戦い方をするつもりだ?
君が本気を出していないことなどとうに分かっている。
そんな調子では、君が全力を出す前に君自身が斃れてしまうぞ?」
そう言ってきたウェザリゴに、ユートは困惑した様子で返す。
「えっと…これでも結構全力で戦ってるんですよ…正直結構いっぱいいっぱいというか…」
ウェザリゴはその返答に驚き、否定した。
「嘘をつかないでくれユートくん、私のプライドすら傷ついてしまうではないか。
君は私が少しずつ力を強めているのに気づき、態と“それより少し及ばない力で”今まで戦っている。
一応戦神などと呼ばれている私がそんなことに気づかない訳がないだろう。」
その答えを聞いても、やはりユートは釈然としていない。
ユート自身、本気を出して戦っているはずなのだと自分で思っているのだ。
その上、相手の力が少しずつ強まっているなどという話も今言われて初めて分かった様子だった。
「…どういうことですか?貴方が力を強めているというのも正直なところよく分かっていませんし…」
そこから暫く平行線の押し問答を続けながら、なおも速度と力強さの上がったぶつかり合いは続いた。
そして、その間でのユートの言を聞いて、ウェザリゴはある一つの結論に思い至った。
「最後に確認するが、君は人間やその他の種族と互角に戦おうとしたことがあるかね?」
「…ありますけど…」
ウェザリゴは、ユートの返答で確信を得た
ウェザリゴの仮定は以下の通りである。
ユートは本気を出さないのではなく、“出せなくなってしまった”のだ。
神の力というのは想像よりも遥かに絶大であり、絶対的なものとなっている。
例えば、転生者の中でも現在最強の能力値・異能を誇るエルミナ・アズモ夫妻など、力をセーブしていない状態であれば鼻息だけで消え去ってしまうほどに。
故に、ユートは転生者基準に力を極小に抑えて、それを固定して戦っている。
その過程で、「相手に合わせて闘う」ことが“上手くなりすぎてしまった”のだ。
それこそ、反射的に戦神と呼ばれる男の力の一歩下に調整し、それに自分が気づかない程に。
そして、その仮定が正しいかどうかを証明するため、ウェザリゴはあることをユートに提案した。
「少し手を止めてもらってもかまわないか?ユートくん」
その言葉を聴いたユートは、争いの手を一旦止めることにした。
それを確認したウェザリゴは、一呼吸おいて、ユートに続ける。
「これから私は君にある映像を流し込む もしその映像が原因で君が負けても、私は君の評定を満点とする。
そして、その映像の内容も予め教えておこう。
これから流れるのは、本気になった私の姿だ。
映像が終わり次第、私はこの力で君に戦いを挑む。
どうだ、飲んでくれるか?」
少し迷ったあと、ユートはウェザリゴに肯定の意を示す。
「…わかりました。」
その言葉を聴き、頷いたウェザリゴは、ユートの脳内に直接イメージを流し込んだ。
実のところ、ウェザリゴの本気などというのは嘘であった。
ウェザリゴが流し込んだのは、ウェザリゴの本気から二周りほど上となったウェザリゴの姿であった。
神同士の戦いであれば、ハッタリの類も有用となる。そのために編み出されたいわゆる幻覚魔術のようなものを用い、ウェザリゴはそれをユートに使用した。
自分が不利になるような使い方をしたのはこれが始めてであったが。
映像を見終えたユートは、一息ついてこう言った。
「…見終えました。正直なところ、何が変わったのかはわかりませんが…」
「…そうか。」
すこし悲しそうに、ウェザリゴはそう返答した
(変わらない、と言ってのけてしまうか。この男は)
そう思いながら、ウェザリゴは自分がとれる最大の力を発揮できる構えをとり、ユートに立ち向かった。
「さあ、来るがいい!」
「はい!」
そこからの勝負は一瞬であった。
ユートは、やけにスローモーションであると感じたウェザリゴの斬撃をいなすこともせず、光を超えた剣閃を以って、ウェザリゴを両断した。
「…私も、修行のし直しだな。」
ユートの耳には、そんな呟きが聞こえた。
後ろには斃れた試験官。
「…え?」
ユートの間の抜けた声が、広い試験会場に響いた。
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試験官のウェザリゴが蘇生した後、ユートはウェザリゴに問いかけた。
「最後、なぜあんなことを?それに最後の一撃はやけに遅いように見えましたが。
八百長のようなことをしたのでは、それこそフェムト様が黙っていないのではないですか?」
自覚がない故の非常に失礼なウェザリゴへの物言い。
それを受け止めながら、ウェザリゴはユートに先ほど行った行動の意味を説明した。
「かくかくしかじかという訳だ。ここまでコケにされるとは正直思っても見なかったが、戦神などと呼ばれていた自分が宛がわれたのも無理はないということだ。
ユートくん、君は強い。私に勝ったということは、おそらく二級神の誰よりも強い。」
「…そんな訳が」
「あるのだよそれが、その証拠に、最後の私はそれこそ君を本気で殺しつくし、暫し再生できないほどの一撃を叩き込むつもりでいた。
それを"やけに遅い"と言ってのけた君は、間違いなく私の数段上にいる存在だ。
おめでとう、君には満点では足りないほどの才覚と実力がある。」
「ありがとうございます…」
正直なところ、戦闘の訓練を積んだとはいえ、これほどまでに強くなることなどユートは予想だにもしていなかった。
その上自覚もなかったため、この戦神からの賛辞には何か釈然としないものがあった。
そうして少々の沈黙が流れたあと、ウェザリゴが口を開いた。
「それで、もしユートくんがよければなのだが・・・」
「はい?」
突然のウェザリゴの言葉に、間抜けた返事を返す。
「私に稽古をつけてくれないか?仕事の合間、邪魔にならないタイミングでいい!頼む!」
「はぁ…」
試験を受けにきただけなのに、何かひとつ苦労事が増えてしまったと思ったユートなのであった。
意外な弱点的な描き方をしようとしてみましたが、なんか最終的にユート上げになってしまいました。
なんかユート強くしすぎちゃった感ありますが、まあいいでしょう
一応一級神の皆さんには手も足も出ないぐらいの強さではあるようなイメージです。
次回で一応試験編最終回になると思います。




