4.結局ユートもキレた
「…何者だ、貴様ら。」
完全回復魔法ですっかり元どおりになった二人の内、魔王アズモが問うた。
「あぁ、まだ自己紹介してなかったな。まず俺は、転生を司る神で、ユートって名前だ。宜しくな。
で、こっちは転生者の郁也。
転生ってのは要するに、死んだ奴を生まれ変わらせる神の業なんだけど
まあ、なんだ お前らもう死んでるんだわ。」
と、雑な説明をするユートにエルミナは食ってかかる。
「死んだ…だと!?では今居る私は何だ!あの戦いは!世界は一体どうなった!」
あぁ、戦国時代から来た様なやつはこんなんばっかなのかな、今後が心配だな。なんて事を思いつつ、ユートはその疑問に答えた。
「まずお前のその姿だが、生前に置いて万全な姿を模して一時的に受肉させてるだけの只の容れ物だ。本当はお前ら魂だけの存在になってんだよ。
あとあの戦いの結果がどうなったかなんざ隣の奴見りゃわかんだろ。そんなオツムもねえやつが勇者とは困ったもんだ。
あと最後!そんなもんは知らん!以上」
ユートの言葉にちょくちょく棘があるのは、この二人に未だ少なからず怒りを抱いているからである。
ユートがいなければ、彼らの争いと全く関係のない身内が巻き込まれて死んでいたかもしれない以上、仕方のないことと言える。
「知らん、とは聞き捨てならんな。神とはその様な事も解らんのか?」
そう言った魔王アズモに、もう一度消しとばしてやろうかとユートは思ってしまったが、堪えてユートは続けた。
「知らんのニュアンスが違うんだよこのタコ。
お前らが元いた世界なんざ知ったこっちゃねえんだよって事だ。
命の恩人様に向かってとんだ態度をとる様で、あの世界の魔王とやらは恩義もクソもないみたいですねー!」
茶化すように、挑発するようにユートは言った。
「元はと言えば仕掛けたのは貴様らだろう!」
その言葉で、ユートの最後の箍が外れた音がした。
「は?自分が飛ばした魔法の制御もできねえカスはそんな風に思ってたんですねえ、オツムも魔法のレベルも程度が知れますわ。」
挑発に乗れ。
「我を愚弄するか!神を名乗る下郎め!」
それでいい。馬鹿め
「じゃあ今度は俺とやろうか。
そうだな、俺と戦えば特別に教えてやるよ、あの世界がその後どうなるかを。」
ユートはこの会話の内に、「あ、こいつら直接殴り合いはしねえけど反省はしてねえな」と思ったのと、「多分俺直接戦ってねえしヒーラーかなんかと思ってナメられてるな。」と思い、この様な提案をした。
実はその程度ならよかったのだが、ここ数日の鬱憤に加え、あの魔法の件もある
ユート自身気づいているか定かではないが、勤めて普段の飄々としている態度の裏に、実は郁也以上の怒りを胸に秘めていたのであった。
「その言葉、後悔するなよ!」
そう言って、魔王アズモは立ち上がった。
その言葉を聞いたユートは、隣にいた郁也が戦慄するほどに、不気味な笑みを浮かべていた。
魔王勇者回はこいつらが反省しない限り話がすすみません。
というか俺自身がこの状況の落とし所を知りません。
最後のユートの笑みは、大体某装甲悪鬼の景◯くんのオリジナル笑顔を想像していただければ幸いです