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第二十九話 婚約

 ロベルトがダヴィッドに手紙を託したのが一週間前のこと。その手紙が目的の人物の手元に届くまでの日数と、多忙を極める国王の予定調整を行わなければならないことを考えて、返事は早くても二週間を過ぎてからしか来ないだろうとエレンとロベルトの二人は当たりを付けていた。しかしそんな二人の予想は見事に裏切られることとなる。なんと、手紙を出して四日後に返事が届いたのだ。

 二人に手紙を託されたダヴィッドは、本来ならば事務官たちが中身を検分・精査してから国王の元へと届けられるはずの手紙を、どういうわけかレオニードに直接渡したようだった。確かに、ディアーノ国王のみが使用を許されている刻印の封蝋のなされた手紙ではあるが、ディアーノ国から発行された公式の書状とは言い難いため、文官たちの元に先に届いていたら後回しにされていた可能性も否定できないだろう。

 そういった事情もあり、おそらくダヴィッドは一日でも早く二人に返事を伝えるため、何かしらの処罰を受ける覚悟でレオニードに直接届けたのだ。二人の元にレオニードからの返事を持参した王宮の使いの者が、「ゴルドレオ殿は少々無茶をしましてね。まあ、あと一週間もすればこちらに戻って来ますよ」などと苦笑混じりに言っていたので、それほど重い罰は受けていないとは思われる。

 とにかくそういうわけで、ダヴィッドの判断と尽力により、驚異的な速さで現ルクレスト国王であるレオニードとの謁見の日取りが整えられたのだ。


 そして現在、エレンとロベルトの二人はルクレスト王城の謁見の間にて頭を下げていた。


「……」


 場を包む沈黙が、二人にはひどく息苦しいものに感じていた。


 今回のこの謁見は急遽決まったもののため、エレンとロベルトの服装は平民服と冒険者服といったこの場に似つかわしくないものとなっている。それだけでも居心地が悪いというのに、レオニードときたら視線だけで射殺せるのではなかろうと言わんばかりに二人を睨みつけているものだから、余計に生きた心地がしないのだ。

 人がそれなりにいるはずだというのに謁見の間には音が無い。エレンとロベルトは緊張でばくばくとうるさく鳴る心臓の音を環境音に、ただただ玉座に座るレオニードの反応を待っていた。

 それからどれくらいの時間が経っただろうか。五分だろうか、十分だろうか、はたまた一分と経っていないのだろうか。

 とにかく長く感じられる時間の中で二人の緊張が最高潮に達したその時、レオニードが重い空気を漂わせながら周囲の人間に指示を出すように右手を上げた。


「……この者たちと三人だけで話がしたい。お前たち、下がれ」

「陛下、しかし……」

「下がれと言っている」


 王位に就いて一年と少しとは思えないほどの威圧感を放ちながら、謁見の間に控えている近衛兵と文官たちに命令をするレオニード。彼らはその命令に納得していない様子であったが、反発などできるはずもなく渋々と足取り重く謁見の間から退出した。

 レオニードはエレンとロベルト以外の全員が部屋から出て行ったのを確認すると、これでもかと言わんばかりの大きく長い溜息を吐く。そしてここ二日ほど悩まされている頭痛を少しでも抑えるかのように額に手を添えた。


「……面を上げよ」


 レオニードの硬質な声が謁見の間に響く。その声に従いエレンとロベルトが顔を上げると、レオニードが剣呑な光を帯びた目を二人に向けていた。頭痛の原因となっている二人が目の前にいるのだ、そんな目を向けてしまうレオニードを誰が責められようか。

 レオニードは自分から剣呑な目を向けられてたじろいでいるエレンを見て、再びはぁ、と大きな溜息を吐いて項垂れた。


「……エレンよ、お前は確かに昔から、たびたび突飛な行動を起こしたりして私の頭痛の種となってはいたが……まさか今回のような大ごとを持ち込んでくるとは思っていなかったぞ」


 やれやれと頭を振りつつレオニードは居住まいを正す。玉座に深く座り直した彼は、半眼のまま二人を睨みつけた。その目の鋭さは一国の王というよりも人殺しか一流の暗殺者のそれで、国王がそんな目をしていいのかとエレンが思ってしまったのも仕方のないことだろう。

 レオニードに鋭い視線を向けられたエレンとロベルトは面白いほどに竦みあがる。その様子を見てわずかばかり溜飲を下げたレオニードは、一瞬だけ口の端を釣り上げると本日何度目になるか分からない溜息を吐いた。

 ――本当にこの娘は私の予想外のことばかり引き起こす。

 そんなことを頭の片隅で考えながら、レオニードはおもむろに口を開いた。

 

「いくらディアーノが一度滅んだ王国とはいえ、訳ありの平民の娘を嫁がせるなどルクレストの恥。よって、この婚姻……」


 一度切られたその言葉に、エレンは青ざめロベルトは表情を失う。その二人の反応を見たレオニードはなんと分かりやすい、と内心で溜息を吐くと「早合点するな」と二人を叱責した。


「何も私は反対などと言っておらぬ。ウォーディアス殿、今しばらく……そうだな、一年ほど時間をもらえるだろうか」


 その言葉を聞いてエレンとロベルトの二人は喜色満面……とは言い難い微妙な表情を浮かべる。少なくともレオニードの言葉からは嘘は感じられないため、婚姻は許されたのだろう。しかし一年の時間をもらうとは、いったいどういうことなのだろうか。

 二人が戦々恐々とレオニードの次の言葉を待っていると、彼は突然意地の悪い笑みを浮かべた。しかしながら視線の鋭さはそのままのため、エレンの目には獲物を追い詰めた猛獣にしか見えなかった。

 いったいどんな無理難題を言い渡されるのかと覚悟を決めていたエレンだったが、レオニードの口から告げられたのは思いもよらぬことだった。


「エレン、お前に家名(ファミリーネーム)を返す」


 エレンはその言葉の意味を咄嗟に理解できなかった。

 ぽかんと口を開け目を丸くしている己の娘のその表情を見て、レオニードはくつくつと喉の奥で笑う。


「これでお前もルクレスト王家の一員だ。喜べ、ウォーディアス殿と釣り合いの取れる身分となったぞ」


 畳み掛けられるように放たれたその言葉は、エレンの脳内に留まらず右から左へと抜けていく。混乱のあまり理解が追い付かないのだ。

 三人の動きが止まってから一分ほど経っただろうか。言葉の意味を理解したエレンの表情が、ぽかんと間抜けなものから喜びを全力で表しているものへとじわじわと変化していき、ついには喜色満面の笑みとなった。そんな彼女の様子を見てしまえば、レオニードの鋭い視線も和らぐというものだ。

 しかしそれもたった一瞬のこと。

 喜びに打ち震えているエレンが見たのは、意地悪く弧を描いている己の父親の口元だった。


「さて、エレンよ。王族となったからには再教育が必要だな。それにディアーノ王の元へと嫁ぐのだから、王妃教育もやり直しだ。王妃とはなんたるか……バイオレットにしごかれるがよいわ」


 ある種の拷問にも等しい言葉を浴びせかけられたエレン。彼女の表情は喜び一色から一転、絶望感を漂わせる真っ青なものへと変わったのだった。


  ***


 家名(ファミリーネーム)を取り戻したことで思いがけず王族の一員となったエレンは、レオニードとの謁見が終わるやいなや王宮の侍女らに半ば拉致されるような形で連れ出された。そしてあれよあれよと言う間に湯殿に押し込まれたかと思うと、両手の指で数え切れないほどの侍女たちに全身を磨かれることになったのだ。その際に髪や爪も整えられたのだが、一分でも時間が惜しいと言わんばかりに、それらと同時進行 ――しかも数人がかりで――でエレンは全身の採寸をされたのだった。

 湯浴みを終えた頃にはぐったり疲れ切っていたエレンだったが、休む間も無く今度は髪を乾かしながらの衣装選びが始まった。よくよく見れば、一年と少し前にエレンが登城した際に彼女の着替えを担当した侍女の姿も見える。その侍女はにっこりと、しかしどこか底冷えするような笑みを浮かべながら一着のコルセットをおもむろに取り出した。


「大変お久しゅうございますわ、エレン様。以前あなた様のお着替えをさせていただきました者にございます」

「は、はい、覚えてます」

「うふふ、覚えてくださっていたのですね。大変光栄にございますわ」


 口調は丁寧だが目が笑っていない侍女。彼女はコルセットをエレンに突きつけながらじりじりとにじり寄っていく。


「あ、あの……?」

「わたくし、あの後王妃様付きの侍女となりましたの。そして今回、王妃様直々にエレン様のお支度を命じられましたわ」


 王妃ということは、それはつまり、エレンの母親であるバイオレットの命令ということだ。

 ――嫌な予感しかしない。

 エレンは笑顔を引きつらせながら侍女を見る。彼女はコルセットの紐を緩めながらエレンの背後に立つと、ひどく明るい口調でこう言った。


「王妃様はこう仰いました。エレン様が逃げ出すことのないようにキュッと締め上げろ、と」


 エレンは姿の見えない侍女がニタリ、と不気味な笑みを浮かべたような気がした。


「さあ皆さん、やっておしまいなさい! エレン様、わたくしが王妃様の代わりにキュッと! その美しいくびれのある腰を! ええそれはもうギュッと! 締め上げて差し上げますわ!」


 その言葉が耳に届いてからのエレンの記憶は無い。気が付いた時にはすでに着替えが終了していたのだ。

 エレンは鏡に映る自分を見て、ああ、平民ではなくなったのだなとようやく実感する。化粧の施された顔が微妙に青白く見えるのは、必要以上に締め上げられたコルセットのせいで内臓が口から飛び出しそうだからだろう。鏡越しに見える己の後ろに控える侍女たちに配慮して、エレンは懸命に「吐きそうだ」という言葉を飲み込んだ。


 それからエレンは一仕事を終えて満足気な笑みを浮かべる二人の侍女と、己付きになるらしい近衛兵にロベルトの待つ客間へと案内されることとなった。

 ほどなくして客間に到着し近衛兵に扉を開けてもらうと、そこには少しだけ疲れた様子のロベルトがソファで寛いでいた。彼は手に持っていた製本されていない分厚い紙の束をテーブルに置いてからエレンへと視線を移すと、ふっ、と表情を和らげる。


「お帰り……は、また言葉が違うか。待っていた、エレン」


 その言葉に誘われるようにエレンは客間へと足を踏み入れた。その際、流れるような動作で近衛兵は部屋の外、侍女二人は部屋の中に待機する。扉は閉められたものの侍女二人の目があるため、エレンはロベルトの隣にではなく向かいのソファに腰を下ろす。それをロベルトは寂しく思いながらも、これからのためには必要なことなのだと自身を納得させてから、彼は平民服からドレスに着替えたエレンを愛おしさを滲ませる目で見つめた。


「これから一年、会えなくなるのか」


 ロベルトの呟きにエレンも少しだけ寂しさを滲ませる笑顔を浮かべた。


「そう……ですね。ですが、これもロベルトさ……ウォーディアス様の隣に立つに相応しい存在になるための修行だと思えば、まったく苦になりませんわ」


 そう言ってにこりと微笑んだエレンは、先ほどまでの平民らしさのかけらもない。ここにいるのは、ロベルトと共に生きていくために不自由になる覚悟を決めた、一人の王女なのだ。

 そんなエレンの姿を見て、ロベルトはわずかに目を細めた。


「そうか……エレンは強いな」

「強くなどありません。苦にはなりませんが、寂しいものは寂しいですから。だから……手紙、たくさん書きますね。きちんと返事してくださいよ?」

「ああ、もちろんだ。そうだ、俺からも手紙を書こう。エレンも……返事、書いてくれよ」

「ふふ、もちろんですわ」


 エレンの品の良い笑い声が部屋に響く。ロベルトはその声がひどく新鮮なものに思えていた。今まで平民として生きていたエレンの声は、貴族らしくない明るい声だったからだ。

 それからしばらく、部屋には沈黙が満ちる。その沈黙は二人には不快なものではないものの、どうにも落ち着かない気分にさせた。

 互いに視線を彷徨わせ続けて三分ほど経っただろうか。意を決したように、エレンが赤く濡れた唇を開いた。


「……秘密、一年も考える時間ができてしまいましたね。ウォーディアス様、私、絶対に良いものを考えますから」

「ああ、楽しみにしている」


 エレンの言う秘密というのが婚姻の際に互いに贈りあう名前だと気付き、ロベルトは穏やかな笑顔を浮かべ頷く。


「……エレン。俺も、この一年でディアーノをもっと復興させよう。お前を迎え入れるのにふさわしい国にしてみせる」


 ロベルトはそう言うと、先ほどテーブルに置いた紙の束を手に取った。


「こうして、レオニード王から貴重な資料もいただけたことだしな」

「それは……?」

「ルクレストに保管されていたディアーノ関係の公文書や書簡、はては個人的な手紙……の写しだ。俺に渡しても問題のない範囲の資料とのことだったが、これでもまだ一部らしい。他の資料も準備が出来次第、順次送ってくれるとのことだ」


 ロベルトの声には喜びが滲んでいる。今まで散々探し続けてもなかなか見付からなかったディアーノの歴史が、こうして手元にあることが嬉しくて仕方がないのだ。そんな彼の様子が微笑ましく思えて、エレンは自然と表情を緩ませる。ロベルトは己に暖かい目を向けてくるエレンに気付き少しだけ恥ずかしそうに頬を掻くと、エレンの耳元に顔を寄せ彼女にだけ聞こえるように囁いた。


「実は俺もあの後、レオニード王に呆れたように説教されてしまったんだ。一国の王たるもの、そんな情けない姿を見せるものではないとな」


 ロベルトがレオニードに説教されている場面を想像して、エレンは思わず吹き出してしまう。


「ふふ、ふふっ、まったくお父様ったら……一切の容赦がなかったでしょう?」

「ああ。俺の父上とはまた違う威圧感の持ち主だな、レオニード王は」


 それからしばらく、別れの時間となるまで二人は控えめな声で笑い合うのだった。 


  ***


 本日の営業を終えた金獅子亭(きんじしてい)のフロアには、今だささやかな明かりが灯っている。その明かりの下には丸テーブルがあり、そこでは麦酒(エール)片手にくだを巻く緑髪の青年を一組の男女が諌めるという光景が広がっていた。


「相手が王様じゃあ、はじめから俺に勝ち目なんてなかったじゃないかあ!」


 叫んで一気に麦酒(エール)をあおったのは、この店で女性に一番人気の調理員、フリンだ。彼は酒の飲み過ぎなのか、顔は真っ赤で目もわずかに充血している。そんな彼に水を差し出すのはこの店の店主であるダヴィッドの妻・エマで、もういい加減にしなさいとフリンの持つジョッキを取り上げようと奮闘していた。しかし酔っ払いの限界突破した握力は思いのほか強く、それなりに力の強い方であるエマでも、フリンの手をジョッキの取手から離すのは至難の業だった。そんな二人の様子をワインをちびちびと飲みながら眺めているのは、半年前に王城へロベルトの手紙を届けたダヴィッドだ。彼はロベルトから預かった手紙を無理をしてレオニードに直接届けたため、彼から拳骨をくらった頭をさすり、フリンがこう(・・)なってしまった原因を思い出していた。


 それは本日正午の出来事だった。

 なんと、邪竜により一度滅んだディアーノの復興が世界に向けて宣言されたのだ。その宣言をしたのは、邪竜誕生の際に死亡したとされていたディアーノ王家最後の生き残りであるウォーディアス・ディアーノ。彼は復興を宣言したのと同時に、今日がディアーノの新たなる歴史の出発点であるとして国名を『ノーヴァ・ディアーノ』へと変更すると発表したのだ。

 この宣言だけでも世界中を驚かせるというのに、今度はルクレスト王家と共同で、ウォーディアスとルクレストの第一王女であるエレンの婚約も発表されたのだ。その情報は瞬く間に国中に広がり、とうとう金獅子亭(きんじしてい)の元にも届くことになった。


「エレンが婚約!? しかも相手はディアーノの王様だって!? え、ということは、ロベルトさんってまさか……!?」


 エレンとロベルトの関係性を知る金獅子亭(きんじしてい)の面々は、この時ロベルト……ウォーディアスの正体を知り、あまりのことに言葉を失う。それは、ダヴィッドからエレンは王族になったから金獅子亭(きんじしてい)を退職すると聞かされた時以上の衝撃だった。

 その話を聞かされたフリンは、日中は平静を装っていたものの営業時間が終了してからは、素面のはずなのにすでにアルコールが入っているのではないのかと思えるほどのやさぐれ具合だった。


「フリン、いい加減エレンの婚約を祝ってやりなさいよ」

「祝ってますよおぉ……うう、エレン……おめでとう……」


 エマの言葉に半泣きの状態で答えながら、フリンは水を一気飲みする。普段の彼はどこへやら、口の端から水をこぼすというだらしない姿を二人に晒しているが、気落ちしている彼はそのことに自分では気付いていなかった。

 醜態を晒す普段は有能な従業員の姿を見たダヴィッドは、仕方ない、と声を上げる。


「おい、フリン!」

「なんですかあ?」

「二号店だ! 金獅子亭(きんじしてい)二号店を出すぞ!」


 ダヴィッドの突然の宣言に目を丸くするフリンとエマ。このダヴィッドの言葉に先に反応したのは、彼に声を掛けられていたフリンだった。


「急にどうしたんですかあ?」

「お前が腑抜けてるから喝を入れてやるってんだ。金獅子亭(きんじしてい)二号店、店長はお前だ、フリン。出店場所はもちろん、ディアーノだ!」


 その言葉に、この場の時が一瞬だけ止まったように音が消える。


「……え」

「え?」


 フリンとエマは思わず顔を見合わせて、ダヴィッドの言葉を必死に頭の中で反芻する。そしてちょうど三十秒後、フリンは驚きのあまり腹の底から叫び声を上げた。彼の酔いは綺麗に醒めてしまっていた。


「えええええええええ!? え、それ本気で言ってるんですかデイヴさん!?」

「もちろんだ! それによ……ディアーノはお前さんの故郷だろう? これをきっかけにして里帰りしてもいいんじゃねえか?」

「デイヴさん……」

「それに、エレンもディアーノできちんと王妃ができるかも気になるからな。そうだ、せっかくだし定期的にエレン……というか、ディアーノの様子を教えてくれよ。俺たちも新しい楽しみができるからな」


 そう言ったダヴィッドの笑みは、見る人が見れば実に胡散臭いものだった。しかしフリンはそれに気付かず、何やら感動した様子で大きく頷くと、金獅子亭(きんじしてい)二号店の店長になることを了承した。

 こうしてダヴィッドは、ちゃっかりディアーノでの情報源を手に入れたのだった。

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